政府は新型コロナウイルス感染拡大に伴うまん延防止等重点措置について、東京や大阪など18都道府県の期限を3月21日まで延長。引き続き、飲食店への時短営業要請やイベントの集客制限などが行なわれることになった。
一方、ワクチンの3回目接種については、全体で22.9%と低い水準で推移している(3月4日公表・首相官邸サイトより)。
そんなワクチンに関して、三井住友DSアセットマネジメントからマーケットレポート「既存ワクチンの限界露呈、待たれる『次世代ワクチン』開発」が公開されたので、概要をお伝えしていこう。
既存ワクチンはオミクロン型には効きづらい
新型コロナウイルスのオミクロン型が、世界で猛威を振るっている。これまで比較的感染が抑えられていた日本でも、主なウイルスがオミクロン型に置き換わった後に感染が急拡大し、この冬のピーク時に1日の新規感染者が全国で10万人を超えた。
こうしたオミクロン型の爆発的な感染拡大の理由として、ウイルス自体の感染力だけでなく、既存ワクチンがオミクロン型には効きづらいことが指摘されている。
【ポイント1】露呈する既存ワクチンの限界
現在主に使用されている新型コロナの既存ワクチンは、「スパイクたんぱく質」と呼ばれるウイルスの表面にあるとげ状の突起に対して免疫反応が起こるよう作られている。
しかし、オミクロン型はこの「スパイクたんぱく質」の32か所で変異が起こっているため、既存ワクチンが効果を発揮し難いことが指摘されている。
英国健康安全保障庁(UKHSA)が行った調査では、既存ワクチンを2回接種してもオミクロン型感染者の発症や入院を減らす効果はデルタ型に比べて顕著に低いこと、また、3回目のブースター接種を行ってもデルタ型ほどには効果が出ないことが報告されている。
【ポイント2】『次世代ワクチン』開発が積極化
世界保健機関(WHO)はオミクロン型について、既存ワクチンでも入院や死亡を減らす一定の効果があるとの見方を示している。しかし、新型コロナ感染の主な変異種がオミクロン型に置き換わった国や地域では、ワクチン接種を終えている人が感染・発症してしまう、いわゆる「ブレークスルー感染」が多発。
こうした状況を改善するため、世界の大手製薬会社はオミクロン型に効果を発揮する『次世代ワクチン』の開発を積極化させている。
既存ワクチンの主な供給メーカーである米ファイザーや米モデルナは、オミクロン型に効果を発揮する『次世代ワクチン』の治験を既に開始。
また、英グラクソスミスクラインは独キュアバックと共同で、複数の変異種に効果がある汎用型の『次世代ワクチン』の開発に取り組んでいる。
【今後の展開】オミクロン型対応の『次世代ワクチン』は登場間近、ただし万能型の開発はハードルが高い
ファイザーのオミクロン型に対応した『次世代ワクチン』は、当局による使用認可はまだ受けていないが、既に生産が開始されている模様。
一方、モデルナはオミクロン型対応の『次世代ワクチン』と既存ワクチンを組み合わせた、いわゆる「2価ワクチン」を開発中で、今年秋には供給が始まるものと期待されている。
ミクロン型に対応した『次世代ワクチン』の開発は順調に進んでおり、登場は間近と言ってよさそうだ。
一方、未知の変異種にも効果を発揮する「万能型・汎用型」のワクチン開発についてはハードルが高く、いまだ実用化が見通せない状況にある。
今後も新型コロナウイルスは変異を繰り返しながら、感染力や免疫反応を回避する能力を高めていく可能性が否定できないため、人類とウイルスのイタチごっこは当面続くものと思われる。
※個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。
引用
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
https://www.smd-am.co.jp/
構成/清水眞希