Facebookから社名を変更したMetaだけでなく、MicrosoftやGoogleといった大手IT企業のほか、世界的に有名なゲーム会社も、メタバース時代の本格的な到来を見据え、様々な準備を進めている模様だ。メタバースの発展を大きく左右する、これら企業の事情について、ITジャーナリストの西田宗千佳氏に伺った。ジャーナリスト 西田宗千佳さん
ネットワーク、IT、先端技術分野を中心に活躍するフリージャーナリスト。著書に『漂流するソニーのDNA プレイステーションで世界と戦った男たち』(講談社)など多数。
MetaとMicrosoftが今後の大きなカギを握る
メタバースという言葉は、2021年秋まで〝ちょっとした業界用語〟であって、テクニカルタームにすぎなかった。にもかかわらず、急に注目を集めるようになったのは、2021年10月末、Facebookが「社名をMetaに変更する」と発表したからだ。巨大テクノロジー企業の一角が社名変更するくらい将来性を高く買っている……ということで、注目度が高くなったのは間違いない。
だが実際のところ、同社は「メタバース的なもの」に、かなり以前から注目していた。2014年にはVR用ヘッドセットを開発していたOculus社を買収し、関連するビジネスを本格的に開始している。
そもそも、メタバースを構成する技術のひとつであるVRが、Oculusのデバイスによってブームになったところがある。同社は魚眼レンズで視野いっぱいに映像を拡大して見せるアイデアを持ち込むことで、従来のものよりもずっと没入感のある映像を実現した。それに刺激を受けて新世代のVR機器が続々と登場。現実に映像を重ねて表示するARの可能性も議論が進むようになった。2016年にMicrosoftが発表したAR機器『HoloLens』も、その流れで登場したものにほかならない。
新しい機器の可能性とともに、それを使うビジネスの発想も広がってきた。まずはゲームが中心だが、会議やコンサートなど「ネット上の空間に人が集まることで価値が生まれるサービス」の初期的なかたちが生まれている。特に、MetaとMicrosoftはVRやARを使ったサービスに必要な技術の基礎研究を進めており、幾多のベンチャー企業とともに、このジャンルをリードする存在といえる。Facebookが「Meta」になったのは、これまでのビジネスを「本気で加速させることを示す」意味合いを持っているわけだ。
Facebookの社名変更は、もちろん別の理由もある。欧米では個人情報保護や政治的書き込みの扱いをめぐり、Facebookのイメージが悪化。そのリセットを狙った社名変更……という、うがった見方も存在する。
一方、別の流れとしては、ゲームの中で起きたトレンドもある。この5年間で、ネットゲームでは「不特定多数が集まって空間を共有する」タイプのものが増えた。昔はネットRPGくらいだったが、今では『マインクラフト』や『フォートナイト』などが大ヒット。「人が集まるところにはビジネスが生まれる」ことから、こうしたゲーム空間の中でコンサートやイベントが開催されることも多い。ゲームの世界=新しい生活圏という意味では、メタバースの先駆け的な存在といえよう。
さらにVRやARは〝リアルタイムCG〟が必須で、ゲームの開発技術をもとにメタバースの世界が構築されている。そのため、ゲーム開発のコストを下げる〝ゲームエンジン〟を作る企業(例えばUnityやEpic Games)が、ゲームだけでなく「メタバースを構築するための基礎技術を作る会社」として注目されるようになってきた。「ゴールドラッシュで成功したのは、金を掘った人々ではなく、ツルハシやジーンズを売った会社」といわれているが、ゲームエンジンを開発する大手は、そのような存在になりつつある。Metaなどと同じくらい重要なキープレーヤーなのだ。高いCG性能を生み出すGPUを作るNVIDIAやAMDなども、ある意味で「メタバース関連銘柄」として扱われている。
ただし、メタバースを構成する技術は未熟で、2022〜2023年に大きなビジネスになるのはゲームくらいと見られる。Metaも「5〜10年先を見据えている」とコメントしており、ブームに乗って1〜2年で大儲け……とは、なりそうにない。
メタバースに関わるXR分野への投資額約1兆1400億円!
Meta(旧Facebook)
注目度 ★★★★★
2021年10月にオンラインで行なった基調講演ではメタバースが実現する未来を提示。マーク・ザッカーバーグCEOが自身のアバターで登場したことも話題に。2021年には、メタバース関連部門Facebook Reality Labsに約100億ドル(約1兆1400億円)を投資。今後増額すると見られる。
■ 今後はリアルとバーチャルが融合!?
同社「Horizon Workrooms」の将来的な活用法も示唆。手元の作業とバーチャル表示の閲覧を同時に行なえるようになる!?
■ ユーザーとアバターが高度にシンクロ!
Metaでは表情をトラッキングする技術の開発にも意欲的だ。バーチャルでも自分の意思を伝えやすくなる日は近い。
■ 少しの腕の動きでアバターの操作!
アバターの操作性についても研究が進んでいる。体にハンデのある人でも、メタバースを利用しやすくなりそうだ。
メタバースを見据えたゲーム大手の買収額約7兆8000億円!
Microsoft
注目度 ★★★★★
Microsoftではコロナ禍で利用機会が増えた同社のリモートワーク・コラボレーションツール「Teams」のメタバース対応を発表。Metaが提供中の「Horizon Workrooms」と同様に、アバター同士でリアルに近いビジネスコミュニケーションを図れることになりそう。
■ 同社の過去最高額で買収!
『オーバーウォッチ』などのゲームで有名なActivision Blizzard社の買収を発表。メタバース事業を見据えた動きと見られる。
■ チップメーカーとの提携も進める!
主にスマホ向けSoCを手がけるQualcomm社との提携を家電ショー「CES 2022」にて発表。ARグラス開発が進む模様だ。
メタバース時代に向けたスマートグラス企業の買収額約195億円!
注目度 ★★★
Googleからはメタバースに関する具体的な言及はないものの、関連トピックスとして挙げられるのが、スマートグラス企業Northの買収だ。一部の関連製品は業務用として市場に投入済み。今後の動きに注目だ。
メタバース版『ポケモン GO』の実現&成功などに向けた調達額約340億円!
Niantic
注目度 ★★★★
『Ingress』『ポケモン GO』などのゲームで知られる「Niantic」。2021年11月、投資企業から約3億ドルの資金調達を発表。これを元手に、AR開発者向けプラットフォーム「Lightship」を拡張していく考え。AR技術の発展に伴って、メタバース空間と現実世界との融合が加速しそうだ。
■ ARのキャラを現実世界に召喚!?
デモ映像では、スマホのアプリ内にいるキャラクターが、現実の世界に存在するかのように動き回る様子が印象的。今後、様々な活用が提案されそうだ。
2021年11月の「Lightship」の発表時には日本の集英社をはじめとするパートナー企業と構築したARのデモ映像を披露。
メタバース構築に向けて調達した資金総額約1000億円!
Epic Games
注目度 ★★★★
世界的なゲーム企業Epic Gamesもメタバース事業への参入を公言。約10億ドルの資金を調達したといわれている。同社の代表作『フォートナイト』のメタバース化が加速すれば、メタバースの普及に弾みがつきそう。
DIME最新号の特集は「メタバース超入門」「新メルカリの神ワザ」!
DIME4月号の特別付録は、仕事や趣味で使えるデジタルスケール! サイズはコンパクトなのに、0.3g〜3000gまで0.1g単位で量れる本格派。付属するトレーで、個数カウント機能や風袋引き機能も使えます。ミニ四駆や模型を作ったり、レジン液の計量、郵便物やフリマアプリの出品物の計量、各種部品やパーツ、宝石の計量など様々な用途に対応。金属製のボディーは高級感があり、コンパクトなので、工具箱に入れたり、デスクの引き出しにも収まる。
【参考】https://dime.jp/genre/1322178/
【オンラインで購入する】
◆セブンネット https://7net.omni7.jp/detail/1
※取材は2022年1月末時点のものです。
取材・文/編集部