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ロシアのウクライナ侵攻により日経平均はこのまま下がり続けるのか?

2022.03.06

ロシアがウクライナに軍事侵攻した2月24日、日経平均株価の終値は、2022年初来安値となる2万5970.82円を記録した。

3月4日には、ロシア軍がウクライナのザポロジエ原子力発電所を攻撃したという報道により、一時2万5774.28円まで急落したが、終値は2万5985.47円と、年初来安値を更新せずに、なんとか踏みとどまった。

このまま日本株相場は、下落の一途をたどってしまうのだろうかと思いきや、投資ファンドのアナリストたちがまとめたマーケットレポートを見てみると、そこまで悲観的ではないことがわかってきた。

その理由はなぜか。関連するマーケットレポートを見ながら解説する。

軍事、政治、社会問題が発生しても、景気後退は意外と起きない

地政学リスクとは、ある特定の国や地域が、政治問題や社会問題、軍事問題によって、緊張感が高まり、その国はおろか世界全体での株価や経済の見通しが不透明になるリスクを指す。

ロシアのウクライナ軍事侵攻も、例外なく地政学リスクを高める事象になっている。

2月28日から停戦交渉がはじまるなど、解決に向けた動きも見られるものの、まだまだ終わりが見えない状況になっている。しかし「地政学リスクが発現した後、景気後退に至った例は24イベント中3回しかない。」とフィデリティ投信がまとめたレポート中で述べている。

【参考】2分で考える「ウクライナ問題と投資戦略」/フィデリティ投信

同レポート中では、「株価はイベント発生後『30営業日』で元の水準を回復」とも述べており、今後、景気後退や株価の暴落する可能性は少なさそうだ。と読み取れる。

このレポートは米国経済を対象にしてまとめたものだが、日本経済や株価の動向も、悲観的に考えずに済むのだろうか。

日本国内の景気敏感セクターである鉄鋼業は「上振れ」傾向に

三井住友DSアセットマネジメントが2022年3月1日に発表したレポートでは、3月決算企業の10-12月期決算の当期純利益と、リビジョン・インデックスという指数に注目している。

リビジョン・インデックスとは、アナリストたちの業績予想の「修正」を数値化して表したもの、つまり、前回の予想と今回の予想を比べて、業績が上方修正されているほど、高い数値となる。

レポートでは景気敏感セクターである鉄鋼業の、リビジョン・インデックス上振れ(下図)を示し、「業績に対する期待が継続している点は安心材料です」と述べている。

■主要セクターのリビジョン・インデックス

引用元:ウクライナ情勢下、切り返す日本株式市場割安圏での値固めが進もう/三井住友DSアセットマネジメント

また、「TOPIX(東証株価指数)は国内景気に対する期待から値固めが進んでいるとも考えられます。」とも述べており、日本国内の相場が、総悲観的というわけではなさそうだ。

投資家の先行き不安を示す「VIX指数」が高まり、株価の上下値幅は大きくなる

ニッセイアセットマネジメントが2022年2月25日に発表した臨時レポートでは、「事態打開の糸口が見つかるまで上下に値幅の大きい相場展開が続くか」とし、

投資家の先行き不安を指数で示す「VIX指数」の高まりが、上下に値幅が大きくなる展開だろうと予想している。

VIX指数とは別名「恐怖指数」とも言われており、この数値が高い、概ね20以上の数値になると、株価の値動きが激しくなることが知られている。「恐怖」と表現されているから、株価の大暴落が起きる、下落一辺倒になると思いがちだが、投資家の恐怖によって、市場が混乱すると株価が上下に大きく振れることを理解しておきたい。

ちなみに、上下に動く幅のことを金融用語で「ボラティリティ」といい、VIX指数のVIXは「ボラティリティ・インデックス」の略称である。

■過去6ヶ月のVIX指数の推移

引用元:Googleファイナンス

ロシアのウクライナ侵攻を契機に、大きく値を伸ばしたわけではないものの、2022年3月1日には、33.32という過去6ヶ月間の最高値を記録。投資家の不安が大きくなっている。

地政学リスクよりも「米国の政策金利上昇リスク」が要因との見方も

日興アセットマネジメントが2022年2月25日に発表したレポート(フォローアップ・メモ)では、「地政学リスクよりもコモディティ価格の上昇を背景に、米金融政策が失敗するのでは?」という見方を示している。

産油大国であるロシアが、原油の供給を制限するのでは?という不安から、原油価格が過去最高値を更新している事実があるものの、レポート中では、

「主要国でロシア依存度が高い(20〜40%程度)のは欧州ぐらいで、(中略)欧州は調達先を変更することが可能。」

「世界の株式市場の下落は、原油価格などの上昇圧力の強まりで、FRB(米連邦準備制度理事会)が大幅に利上げしてしまう政策ミスのリスクを織り込みにいったため」

と述べている。

米国の金融政策の決定会合(FOMC)は現地時間3/15~3/16にかけて行われる。この会合で示される政策金利が、今後の世界経済や株価の値動きを左右するのは自明だ。

このほど、3月2日に先んじてFRBのパウエル議長は、0.25%の利上げを行う考えを表明した。市場関係者は、0.5%の大幅な利上げになるのでは?と警戒する考えもあったようだが、パウエル議長は、ウクライナ情勢を考慮した結果、0.25%の利上げに留めた旨の考えを示した。

■米国政策金利の推移

引用元:米国政策金利の推移/外為どっとコム

コロナ・ショックが起きた2020年3月以降行っていたゼロ金利政策に終止符を打つことに。過去値は、2008年12月から2015年11月まで0.25%で推移し、2019年3月の2.5%が最高値。2022年3月の利上げでいきなり最高値付近に戻すわけではない。

ウクライナ情勢と米国の政策金利の2つのキーワードに目を光らせておこう

今後の相場動向のカギを握るのはウクライナ情勢と米国の政策金利の2つであると、本記事で解説した。ウクライナ情勢は、過去の地政学リスクの経験則から相場下落は限定的。

米国の政策金利の利上げは、コロナ・ショックからの回復のために政府が行った経済政策で市場でのお金の流通量を拡大し(下図)、それが「インフレ」に転じているために行うもの。

一般的には金利上昇が株価下落につながるのがセオリーだが、過度な利上げでなければ、影響は限定的である場合が多い。

そのため投資家が過度に恐怖を感じるようなウクライナ情勢の変化や、過剰な利上げにFRBが踏み切る姿勢を表明しないか。これらを発端に相場の急落が起きたとしても損切り、狼狽売りをするほどの事態にはならなさそうだ。

とはいえ、刻一刻と変化する状況を見定めることで、投資の成功材料にしてもらいたい。

取材・文/久我吉史

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