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焼肉店やバーガーショップへの業態転換で再起をかける居酒屋チェーンに勝算はあるか?

2022.03.06

飲食店の中で居酒屋の売上高が絶望的とも言えるほど回復しません。下の表は日本フードサービス協会が公開している外食産業市場動向調査をもとに、業態別月次売上高を2019年比に計算し直して並べたものです。居酒屋(グラフ黄色)は「Go To Eat」があった2020年10月を除き、すべて60%を下回っています。

■飲食店月次売上高推移(2019年比)

日本フードサービス協会のデータをもとに筆者作成

2021年12月は緊急事態宣言解除後のリベンジ消費に期待が集まりましたが、それも虚しく2019年比56.4%と厳しい結果になりました。

飲食店に支払う金額は2019年の水準を回復

実は飲食店への消費傾向そのものは回復基調が鮮明です。下のグラフは内閣府地方創生推進室が提供するV-RESASを使い、クレジットカード決済情報をもとに東京都の外食における消費変化を2019年同月比で表したものです。

■決済データから見る消費動向

V-RESASにて作成

2021年12月後半は0%となり、2019年と同じ水準まで回復しています。すなわち、消費者は2019年とほぼ同じ金額を飲食店に落とすようになったのです。飲食店を巡る消費は意欲が減退したのではなく、多様化したと考えられます。

高級業態での少人数宴会、UberEatsを使った自宅でのパーティーなど消費者の年末の過ごし方は大きく変化しました。

また、営業成績の上がらない後輩を元気づけるために悩みを聞きつつビールを一杯、仕事終わりに仲間とふらりと居酒屋に立ち寄って近況報告、そんな消費行動もリモートワークで様変わりしました。仕事をする上で必要なコミュニケーションは業務時間内で完結し、仕事が終わった後は家族で近所の焼肉店か回転寿司を楽しむ。それが日常になりつつあります。

その急速な変化に居酒屋は取り残されました。この傾向は歓送迎会シーズンと大型連休を迎える3~5月ごろも同様の傾向があらわれるものと予想できます。

コロナ前の3割にも満たない居酒屋「はなの舞」

居酒屋企業はどれだけ影響を受けているのでしょうか?下の表は新型コロナウイルス感染拡大前の事業年度の売上高と、コロナ禍の直近通期の売上高の比較です。

一口に居酒屋企業といっても、各社売上高の増減には大きな差が生じています。そしてそれはビジネスモデルに大きく依存しています。

■居酒屋企業売上高の増減(単位:百万円)

※決算短信より筆者作成
ワタミ(3月決算)
鳥貴族(7月決算)
串カツ田中(11月決算)
チムニー(3月決算)

4社の中で最も売上の減少幅が少なかったのがワタミ。2021年3月期の売上高は2019年3月期と比較して60%以上の水準に留まりました。これはワタミが外食事業の他に宅食事業も行っているため。外食の穴を宅食が埋めました。

減少幅の差が近いのが鳥貴族と串カツ田中。実はこの2社はビジネスモデルが似通っています。事業が飲食の単一セグメントであり、運営する店舗の4~5割がフランチャイズ加盟店、残りが直営店で構成されているのです。後述する通り、2つの会社は共同歩調をとる道を選びました。

最も苦しい状況にあるのが居酒屋「はなの舞」を運営するチムニーです。2021年3月期の売上高は2019年3月期の3割にも届いていません。チムニーは直営主体の居酒屋を展開しており、コロナ前はインバウンド需要の獲得に注力していたため、大損害を被ったのです。

焼肉店への業態転換から閉鎖へと舵

ワタミの国内外食事業だけの業績を取り出すと、チムニーとほとんど変わりません。2021年3月期の国内外食事業の売上高は170億9,400万円。2019年3月期比で4割の水準に届いていません。外食と宅食事業の業績を並べると、宅食事業に救われているのがわかります。

※決算短信より筆者作成
ワタミ

2021年3月期の宅食事業売上高は前期比6.4%増の366億5,600となり、利益率を6.5%から8.2%へと1.7ポイント上げています。この事業は極めて堅調です。

■事業別業績(単位:百万円)

※決算短信より筆者作成
ワタミ

日本政策投資銀行は「DBJ飲食・宿泊支援ファンド」を組成して飲食店や旅行、宿泊事業者に対して支援する体制を整えました。居酒屋業界で真っ先に支援を要請したのがワタミでした。2021年5月にこのファンドから120億円の支援を受け、居酒屋を焼肉店に転換する計画を発表したのです。

ワタミが早期に大規模な資金調達ができた背景にも、宅食という安定したビジネスがあったためと考えられます。

ワタミは繁華街の居酒屋を中心に焼肉店への転換を進めていました。しかし、2022年に入って事態は急展開を迎えます。居酒屋270店舗のうち、15%に当たる40店舗の閉鎖を決定したのです。ワタミはコロナ禍で居酒屋100店舗の閉店や業態転換を進めてきましたが、大規模閉鎖には踏み切りませんでした。これは焼肉店への転換でコロナ禍に強い業態を育てつつ、居酒屋の需要が回復するのを待っていたためと考えられます。

40店舗の閉鎖を決めたのは需要回復が見込めないことを示すものであり、徹底的に居酒屋を縮小して損失を最小限に留める、あるいは利益を出そうとするものです。

ワタミは焼肉店以外にも寿司店の開発へと乗り出しました。新常態における“当たり”業態を探しています。

ハンバーガーショップの勝算は?

鳥貴族は2021年8月にハンバーガーショップ「TORIKI BURGER」をオープンしました。年商2億円を目標としており、ハンバーガー業態を次の成長戦略の柱に位置付けています。

冒頭の日本フードサービス協会の外食売上データにおいて、ファーストフードは2021年9月から12月まで2019年の水準を上回っています。マクドナルド、KFCなどこの分野の会社の業績は好調で、コロナ禍での強さを見せつけました。

ワタミは既存の居酒屋を転換することを主眼に業態開発をしていましたが、鳥貴族はそれにとらわれずに計画を進めた印象です。

これは鳥貴族がFC加盟店を多く抱えていることが背景にあると考えられます。鳥貴族の全店舗数615(2021年7月末)のうち、FC加盟店は232で全体の4割を占めています。直営のハンバーガー店を成功させ、FC加盟企業による全国展開というのが青写真です。

現在、FC加盟店は居酒屋の集客に苦しむ一方、協力金を得ることで経営が安定しているのが実情だと考えられます。協力金がなくなったとき、加盟店の離脱や鳥貴族本部への不満が高まる可能性は少なくありません。鳥貴族はFC加盟企業といかにうまく関係を構築するかがポイントです。

路面店の立地特性を活かして需要回復を待つか?

2021年11月に鳥貴族と串カツ田中がタッグを組み、商品開発チームを入れ替えて相互にコラボメニューを提供するという企画が始まりました。串カツ田中も全店舗の5割をFC加盟店が占めています。この企画は、2社がFC加盟企業に本部としての取り組みをアピールする狙いが色濃く出ています。

串カツ田中は2020年2月に鳥と卵専門店「鳥玉」を買収していますが、この店舗は3つに留まっており、積極的に展開する様子は見せていません。串カツ田中の特徴は路面店が多いことです。ワタミはビルの空中階と呼ばれる2階や地下に出店し、団体客を中心に集客していました。客足が戻りづらいのはそのためです。

串カツ田中は道路に面した路面店なので、“飲み需要”を的確に捕えることができます。需要が縮小したとは言え、幸いにも影響を受けづらい形を構築していました。需要回復を待っているように見えます。

立地とターゲットの不一致に苦しむチムニー

チムニーは2019年12月に「牛星」ブランドで焼肉店を展開するシーズライフを連結子会社化していました。現在、既存店を中心に転換を進めています。しかし、チムニーもワタミと同じ悩みを抱えています。居酒屋「はなの舞」は繁華街の空中階を中心に出店していました。「牛星」は客単価3,000円程度のファミリー向けの焼肉店ですが、立地とターゲットがマッチしないのです。

「牛星」のようなファミリー向けの焼肉店は、住宅街や幹線道路沿いのロードサイド型の方が集客しやすいと考えられます。しかし、業績が急悪化した今のチムニーに、郊外型の店舗を大々的に新規開発する体力はありません。どうしても既存の業態を転換する方向へと進んでしまいます。

チムニーは焼肉店と同時に食堂「安べゑ」への転換も図っていますが、客単価の安い大衆食堂で既存の大箱居酒屋の採算をとれるかどうかは不透明です。

チムニーは酒販大手やまやが親会社であり、経営危機に襲われる可能性は低いと考えられます。しかし、難しい舵取りを迫られている会社であることは間違いありません。

取材・文/不破 聡

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