甘やかしているといつまでも噛み癖は治らないまま!
今まで、迎え入れた猫の噛み癖に苦労して、「もう手放したい」とまで発言してしまった人を数名見たことがある。たかが噛み癖とはいっても、我慢できない人にはなかなか我慢も難しいところがあるのだろう。
こういう人には知り得る限りのアドバイスはしてきたつもりだが、残念ながらそれでも飼い猫を手放してしまった人もいる。
噛み癖。猫は、特にまだ小さくてやんちゃな時期には歯が生え変わる前になるとむず痒いのか、しょっちゅう色んなものに噛みつこうとする。遠慮がない本気噛みをすることはそう多くないけど、噛まれる頻度が高いと、人によっては苦労するのかもしれない。
しかし猫の噛み癖は矯正が可能だ。今回は、この件について絶賛苦悩中の飼い主さん向けに、いくつかその矯正の手段を紹介していきたい。
噛み癖対策には、噛んで楽しめるグッズを用意してあげよう!
噛み癖のある猫は、とにかくひっきりなしに色んなものに噛みついてしまう。飼い主にじゃれながら噛みつくこともあるし、家具に齧りつく猫なんてのも珍しくない。
そういう猫のガブガブ衝動を全部受け止めるのは大変なので、市販の蹴りぐるみや噛んで遊べるおもちゃなどのグッズをあたえておきたい。猫によっては飼い主よりもそうしたグッズに噛みつくようになるので、噛み癖が完全に治らないまでも、ある程度飼い主が噛まれるリスクは下がっていく。
幸いこういうグッズは1,000円も出せばそこそこ丈夫で長持ちするタイプが購入できるので、一家に2つか3つ置いておくのもいい。
体罰はダメ!噛まれたら「痛い!」と大きな声を出してみよう!
それからこれは有名な対処法だが、とにかく噛まれた瞬間に「痛い!」と大声を出して痛がるのも噛み癖対策には有効。大声で単純に猫がびっくりするので、「噛んだら大きな音がする」とおぼえてもらうことで、治らない噛み癖もどんどん頻度が下がっていく。これは若い個体だけでなく、老齢になって野良から飼い猫にしたような個体にも通じる万能の対処法になる。
が、生まれつき耳がよく聞こえない猫にはあまり効果がないのがちょっとネックかもしれない。参考までに書くと、白猫の場合は耳がよく聞こえない個体が多い。特に青目の白猫ほどその傾向が高いというのは、猫好きにはよく知られている。こういう猫の噛み癖をどうにかしたい場合は、できるだけ大声を出すのが大事になる。ほとんど叫び声みたいな大声でも構わないので、ご近所への配慮もしつつ、声を張り上げよう。
ちなみに、噛まれて痛かったからといって体罰は厳禁。猫はしつけがしにくい動物だし、体罰は虐待でしかないので絶対にしてはならない。そんなことしても噛み癖は治らない。
噛み癖には水スプレーも効果的!
猫は霧吹きスプレーから噴射される水をいやがる傾向がある。悪さをしたときに水スプレーを噴射すると、あたふたしてイタズラをやめる猫というのはいる。これは飼い主が、何か悪さをされたときにスプレーをしていたから、それを学習してそういう反応を見せるわけだが、そのうちにスプレーを飼い主が持つだけで「やべえ!」とばかりにイタズラをやめるようになる。
噛み癖のある猫も同様で、噛まれたたびにスプレーで猫の体に水を噴射するということを繰り返すと、だんだん噛みつかないようになる。時間はかかるが水は蛇口を捻れば出てくるし、噴霧しても無害。噛み癖の酷い猫と接する際には、常に手の届く範囲に水の入った霧吹きスプレーを置いておくのもいい。
そもそも噛ませないように接してみよう!
あと、たまに飼い猫の噛み癖が酷いという話をしている人の言い分をよく聞いてみると、「それあなたが悪くない?」と思える事例なんかもある。猫がのんびり過ごしているのに、無理に構おうとするなんてのはその典型だ。
猫はマイペースで神経質な動物。嫌なことをしてくる人には当然噛みついてしまうもの。
これについては主婦の友社が発行する「猫のしつけと遊び」という書籍にも参考になる記述があるため、引用させていただきたい。
“猫がかまってほしくないときに手を出したりしていませんか?猫はもともと単独行動を好みますから、自分が遊びたくないときに手を出されると、嫌がってかむこともあります”
当たり前のことを書いているんだけど、意外にこの性質を理解していないまま手を出して噛まれてしまい、勝手に傷つく人がいる。特に猫を飼い始めたばかりの方に多い。
寝てるとき、食事中、窓の外を眺めているときなど、猫には猫の時間が流れているので、それを邪魔したら当然反撃をされますよという話だ。いくら猫がかわいくても、むやみに構う必要はない。そういうことを続けていると、猫がどんどん人嫌いになって、本当に噛み癖が治らないということとなってしまう。
多頭飼育が結局一番ラクに噛み癖を治せる!
それから、恐らくこれがもっとも確実な猫の噛み癖矯正法になるが、多頭飼育をしてみるのも一つの手。猫同士が取っ組み合ってじゃれ合ったり喧嘩したりする中で、お互いに噛む力の加減をおぼえたり、噛み癖のある猫が他の猫を噛んだら思い切り反撃されるなどの経験を積むことができる。そうするとえらいもので、噛む頻度の高かった猫もだんだん自制ができるようになる。
猫のことは猫の社会の中で学んでもらうのがもっともラクと考えてもいい。事実、我が家の猫も単独飼育の頃は噛み癖がやや酷かったが、2頭目、3頭目を迎えていくうちにほぼ噛まなくなった(もっとも、噛まれても別に気にならなかったけどね)。飼育スペースに余裕があり、単独飼育にあまりこだわりがないのであれば、噛み癖対策にもう1頭お迎えしてもいいのかもしれない。
噛み癖は放置していてはいつまでも治らない。根気強く矯正を目指そう
という具合に、噛み癖を治したい場合の対策はいくつもあるわけなんだけど、どうしても噛み癖が治らない猫というのもいる。たとえばまだ小さい頃に親とはぐれて無頼猫として育ち、そのまま何年も野良で暮らしてきた個体の場合などは、下手すると生涯触れない、抱っこもできない猫のままということもある。
環境が猫の性格を作るわけで、そういう個体の噛み癖を強制するのは本当に難しい。実際に、こういう境遇の猫が保護されて、天寿を全うするまでとうとう飼い主がほとんど触れなかったし、その飼い主の手のひらも傷だらけだったという事例も知っている。
なのでここで紹介した対処法は100%完璧なものではないんだけども、それでも一般的によく見られる性格の猫たちには有効ではある。今現在「うちの子は本当に噛むのが好きだなぁ」と困っている方は、是非挙げたポイントを意識して猫に接していただきたい。
文/松本ミゾレ
【参考】
主婦の友社「猫のしつけと遊び」