母猫の産後。いつもより注意深く気を配ろう!
妊娠していた愛猫が元気に子猫を出産してくれると、飼い主さんは安堵するもの。しかし、出産後はデリケートな時期だからこそ、生じうる体調不良があります。
出産後に気を付けるべき症状とは?
①産褥熱(さんじょくねつ)
産褥熱は子宮や膣など、産道内壁の粘膜に傷がつき、細菌が侵入することで起こります。時期としては、出産後1週間以内。発熱と共に、悪臭のするおりものが見られます。
産褥熱は子宮内膜炎や腹膜炎、敗血症といった病気に進行する可能性があるので、早めに動物病院へ。産後に母猫の外陰部を清潔に保つことが予防策となるので、意識していきましょう。
②子癇(しかん)
子癇とは、分娩後に起きる痙攣のような症状のこと。これは妊娠や授乳により、母猫の体内でカルシウム濃度が低下することが原因だと考えられています。
症状は短時間で治まることが多いものですが、何回も再発する可能性も。大量のよだれを流し、横転して全身を震わせるだけでなく、体温や心拍数が上昇するため、初めて目にした時、飼い主さんはパニックになってしまうはず。神経質になり光を避けるようにもなるので、いつもと違った行動を取る愛猫に戸惑ってしまうこともあるかもしれません。
子癇はカルシウム注射などをしてもらうことが対処法とされており、放置すると命を落としてしまう可能性があるので、苦しんでいる姿を目にしたら、かかりつけ医に即、相談してみてください。
③乳腺炎(乳腺症)
乳腺炎は、授乳期の母猫が気を付けたい病気のひとつ。原因や治療法は「うっ滞性」か「化膿性」かによって異なります。
「うっ滞性」の場合は、乳腺内に母乳が過度に残ってしまったことが原因。何らかの理由で子猫がお乳を吸わなくなると、乳腺が張った状態が続き、乳汁が変性。乳房の中で炎症が起き、うっ滞性の乳腺炎に。乳頭が硬くなって熱を持つだけでなく、食欲不振や嘔吐といった症状がみられることもあります。
対して、「化膿性」は子猫が爪で乳房を傷つけるなどして、乳腺に細菌が入ってしまったことで起きるものです。
乳腺炎と聞くと、自力で乳汁を絞りだし、早く愛猫を楽にしてあげたいと思う飼い主さんもいるかもしれませんが、自己判断する前に動物病院へ行くことが大切。なぜなら、化膿性の場合は子猫への細菌感染を防ぐため、母乳をやめ、人工哺乳に切り替えなければいけないことがあるからです。
乳腺炎を予防するには飼育環境を清潔に保つ、授乳中の子猫を突然、母猫から引き離さないなどが重要となるので、住環境や産後の過ごさせ方にも気を配っていきましょう。
なお、まれに出産直後から育児放棄をしてしまう母猫も中にはいますが、その理由が「飼い主さんの過干渉」であるケースも。へその緒切りや胎盤摂食などを人の手で妨害してしまうと、突然、育児を行わなくなってしまう可能性があります。
出産後は体調面に気を配りつつ、できる限り人の手を介入させないことが大切。母猫が静かな場所でゆっくりと子猫の面倒を見られるよう、配慮していきましょう。
文/古川諭香