猫に加湿器は必要なの?冬を安全&快適に過ごす乾燥対策のススメ!
猫のいる部屋で加湿器をつけて良いものかどうか、悩んだことはありませんか?
寒い冬にお部屋を快適にしてくれるグッズといえば暖房器具と加湿器ですが、暖房はともかく、猫にとって加湿器は必要なのでしょうか?
というわけで今回は、猫と飼い主さんの健康を考えた、加湿器のススメです!
記事の監修者:獣医師 古江加奈子
パーク動物医療センター副院長。福岡県獣医師会、福岡市獣医師会、日本獣医がん学会に所属。言葉の話せない動物を治療するうえで、動物たちに聞く代わりに飼い主から沢山のことを聞き、飼い主とのコミュニケーションを最重視するドクター。 |
猫にも加湿器はあった方が良いです
結論からいうと人だけじゃなく猫のためにも加湿器はあった方が良いです。ただし、ある程度の湿度を保つためなので、「秋~冬の乾燥した季節には加湿器を使った方が無難」ぐらいに思っていただければいいでしょう。
夏の暑さ対策をしていた時期に「猫は温度が高いよりも湿度が高い方がニガテ」と聞いたことはありませんか?これはその通りで、猫の祖先は砂漠で暮らしていたため、暑さには比較的強くても湿度の高い環境はニガテな子が多いんです。
そう聞いてしまうと、「やっぱり加湿器は不要なのでは…?」と思ってしまうかもしれません。でも、秋~冬の時期にエアコンや暖房器具をつけた部屋は湿度が極端に低くなってしまうため、人にとっても猫にとっても健康にもあまりよくない環境になってしまうんです!
猫にとって快適な湿度と温度の目安
猫にとって快適な室温設定は22~28℃前後、湿度は50~60%前後といわれます。猫種や体形などによる個体差はありますが、大体人間と同じぐらいの感覚ですね。
湿度とは空気中の水蒸気量の割合のことを指すため、基本的には室温が上がると反比例して湿度が下がります。そのため、エアコンやヒーターなどの暖房器具を使うと部屋は温まりますが、その分湿度が低くなり乾燥してしまうのです。冬場、暖房器具と併用して加湿器を使う必要があるのはこのためなんですね。
ちなみに、仔猫や老猫の場合は体温調節が上手にできず体が冷えやすくなるため、少し高めに温度設定をしておく方が安心でしょう。
フケや喘息の原因になる?湿度が低すぎると起こる猫への影響
では、湿度が低くなりすぎると猫の体にどんな影響が起こるのでしょう。乾燥が原因で起こる可能性のある症状をまとめました。
①皮膚が乾燥してフケが出やすくなる
秋~冬にかけて、暖房の効いた室内に長時間いると手や顔がカサカサしてしまうことがありますよね。この、乾燥による「皮膚のカサカサ」は猫にも当てはまる症状です。
乾燥肌の状態が続くと痒みを感じて掻きむしってしまったり、フケが出やすくなってしまうことがあります。また、ひどくなると皮膚炎の原因になってしまうことも。
猫は人間と違ってハンドクリームを塗るわけにもいかないですし、加湿器で湿度をコントロールしてあげることが大切なんです。
②のどや呼吸器に影響が出る
湿度が低くなりすぎると、皮膚と同じように、のどなどの粘膜も乾燥してしまいます。人間でもエアコンをつけっぱなしにしていると乾燥してのどが痛くなってしまうことがありますよね。
猫も同じで、乾燥によって鼻や口の粘膜がダメージを受けたり、乾燥した空気を吸い込むことで猫喘息の悪化に繋がることがあります。
③脱水による腎臓への負担が増える
乾燥した部屋で長時間過ごしていると、猫の尿が濃くなることがあります。実はこれ、脱水気味になっているときのサインなんです。体の水分量が減ってくると、腎臓が尿の水分を減らすため濃い色になるといいます。
この状態は、特に腎臓を患っている猫にとって良いことではありません。脱水状態になると腎臓に強い負担がかかってしまうため、腎臓病の猫は日頃からなるべく細めに水分を取り、水分の摂取量を増やす必要があるからです。
猫にとって腎臓病は決して他人事ではない病気。年を取るごとに腎臓機能が低下することは、猫には避けられない宿命ともいわれています。
もともとあまり水を飲まない猫であれば余計に、室内の乾燥による水分不足にはよく注意してあげてくださいね。
④ウイルスへの免疫力が低下する
空気中のウイルスは湿度が40%以下になると活性化し、50%以上になると減少するといわれています。また、湿度が低くなるとのどや鼻が乾燥すると前述しましたが、乾燥した状態の粘膜はウイルスに対する免疫力が低下してしまいます。
冬場にインフルエンザなどの感染症が流行るのは、ウイルスが好む環境+免疫機能の低下という条件が揃ってしまうためなんですね。
もちろんこれは猫にもいえることで、乾燥しすぎた室内では感染症にかかってしまうリスクが高くなります。
加湿器をつけると粘膜の乾燥を防ぐだけじゃなく、湿度の上昇によってウイルスが舞い散りにくくなるため、感染症にかかるリスクも減らすことができるのです。
猫の安全を考えた加湿器の選び方
愛猫の健康のためにも取り入れたい加湿器ですが、加湿器のミストが気になって猫が落ち着かない、加湿器を倒す、など、トラブルが起きてしまうことも珍しくありません。
加湿器はデザインだけじゃなく加湿方式によっても特徴が異なるので、今から購入するのであればお住まいの環境やネコチャンの性格にあったものを選ぶのがおすすめですよ!
※電気代や加湿力、作動音などは商品によって異なります。一概には言えないため、参考までにご覧ください。
加湿器の種類 ①気化式
水を吸ったフィルターに風を送って蒸発させる、最も単純な作りの加湿器です。要は濡れタオルを振り回して乾かしているような状態なので、熱や蒸気が出ず猫への安全性も高いです。
最近は和紙に水を吸い込ませて自然気化させるようなものや、素焼きの陶器に水を入れて置いておくだけのタイプもあり、見た目にも可愛いので人気があります。電気代が安くてコスパも良いのでベッドサイドなどに置く2台目としてもおすすめ。
気化式加湿器のデメリットは、パワー(加湿力)に乏しい所。広い部屋などの場合、加湿が追いつかず乾燥気味になってしまうこともあります。
ミスト | 出ない |
加湿力 | 低い |
電気代 | 安い |
こんな方(猫)におすすめ
● 電気代を安く済ませたい ● 他の加湿器と併用して使いたい ● 家電のモーター音が気になる(※) ● 猫が反応してしまうのでミストが出ないものがいい |
※自然気化タイプは無音ですが、ファンが動く大型タイプの場合は反対に音がうるさいことがあります。
加湿器の種類 ②スチーム式(加熱式)
水を加熱し、やかんでお湯を沸かすように沸騰させて蒸気を出す加湿器です。昔からあるタイプで、加湿力はナンバーワン、電気代も恐らくナンバーワン(高い!)
加熱しているため雑菌などが繁殖しにくく、衛生面は安心できるのがスチーム式加湿器です。ただ、白い蒸気がモクモクでることでネコチャンの気を引きやすいため、避ける猫飼いさんは多いでしょう。気にしない、イタズラしないネコチャンであればおすすめできます。
デメリットは電気代の高さと、熱を持つので火傷に気をつけなければいけないところです。
ミスト | 出る |
加湿力 | 高い |
電気代 | 高い |
こんな方(猫)におすすめ
● とにかく加湿力重視 ● 猫はミストや作動音も気にしないタイプ ● 雑菌や衛生面はとても気になる |
加湿器の種類 ③超音波式
デザインが豊富でおしゃれなものが多く、安価で手に入ることから人気が出た加湿器です。その名の通り超音波を利用して水を粒子状にして噴出する仕組みです。
音が静かで電気代も安いことで話題になりましたが、個人的には猫を飼っているお家にはあまりおすすめできません!
超音波加湿器はいわば水をそのまま霧吹きでまいているような状態なので、加湿器内で繁殖した雑菌やカビ、水中の塩素などもダイレクトに室内へ噴出されてしまうからです。加湿器の周囲が湿気った状態になるため、近くに置いておいたクッションがビチョビチョに…なんてことも多いです。水中のミネラルが白い塊になって家具や家電に付着するなどもデメリットとして挙げられます。
このタイプの加湿器の場合、猫が雑菌混じりの水滴がついた床を舐めてしまう危険や、直接舐めなくても濡れた床を通った足を舐めてしまう可能性があります。
こまめに清掃して清潔を保つことで雑菌の繁殖は防ぐことができるかと思いますが、「頻繁に加湿器をていねい~に掃除する」というのは、どうにも面倒くさくないですか…?(笑)
というわけで、個人的に猫と超音波加湿器の相性はあまりよくないと思っているのです。
ちなみに、いわゆる「加湿器病」も、このタイプの加湿器が原因であることが多いといわれています。
ミスト | 出る |
加湿力 | 普通 |
電気代 | 安い |
こんな方(猫)におすすめ
● とにかくデザインと安さ重視 ● 衛生面や安全性はそこまで気にならない |
加湿器の種類 ④ハイブリッド式(加熱気化式)
気化式にヒーターを内蔵し、部屋の湿度によって加湿方法を自動で切り替えてくれるタイプの加湿器です。湿度が低いときはフィルターに温風を当てて気化させることで急速加湿させ、湿度が安定してきたら通常の気化式に切り替わります。そのため、スチーム式ほど電気代が高くなりにくいのがメリットです。
ハイブリッド式加湿器は気化式のパワーの低さを補った効率の良い加湿器で、近年人気があります。高性能な分、本体価格は高い傾向なのと、商品によっては音が大きいのがデメリットです。
ちなみに加熱気化式の他にも、超音波式にヒーター機能を加えた「加熱超音波式」もあり、同じくハイブリッド加湿器として販売されています。
ミスト | 出る |
加湿力 | 高い |
電気代 | 安い~普通 |
こんな方(猫)におすすめ
● 初期費用が掛かっても性能良い加湿器がいい ● 安全面も気になる ● 猫は大きな作動音でも気にしないタイプ |
猫には危険?アロマ加湿器に注意点
アロマディフューザーとして使うことができる加湿器は人気がありますよね。アロマが使える加湿器には、専用のアロマウォーターなどの他に、アロマオイルやエッセンシャルオイル(精油)を使用するのが一般的です。
ただし、エッセンシャルオイルのなかには猫に対して有害なものもあるので注意しましょう!虫除けなどにも使われる「ティートゥリー」というエッセンシャルオイルには、猫にとって中毒となる成分が含まれていることが報告されています。
猫が食べると危険な花って?猫にとって毒になる花・安全な花まとめ」の記事でもお伝えしたのですが、肉食動物である猫は人間とは体の機能が異なります。猫とアロマの関係については明らかになっていない部分も多いのですが、そもそもエッセンシャルオイルとは100%天然の植物から抽出され、そのエキスをギュギュっと凝縮したオイルのこと。植物に対する解毒能力の低い猫と相性が悪いというのは納得できるでしょう。
猫とアロマの関係についてはまた次の機会に詳しくお伝えできればと思います!
冬は室内の「温度差」にも注意!温湿度計を上手に使おう
最後に、湿度以外に冬の寒い時期に気をつけたいのが「温度差」です。部屋同士の温度差もそうなのですが、実は同じ部屋の中でも温度差は起きています。
一般の室内では、天井部分と床面では、10~15℃の温度差ができます。冬の暖房時には温度差が20℃に達することもあります。
出典:Vol.3 室内の温度差「天井部分と床面ではどれくらい温度差ができるの?」| 空気と環境の科学 | エアロサービス株式会社
このように、人間が床に座っているときに感じる温度と、猫がキャットタワーの上の方で感じる温度では意外と差があるんですね。
個人的な対策としておすすめなのが、猫がよくくつろいでいる場所の壁に温湿度計を取り付けるというもの。筆者の場合、冷え性で常に寒がっているため夏も冬も自分の体感温度はあてにならないと思ったのです。
床でくつろいでいることが多いネコチャンなら床に近い位置に、キャットタワーのてっぺんが好きなネコチャンなら天井に近い位置に温湿度計をつけてみてください。感覚ではなく数字で見ることで、ヒーターや加湿器をつけるべきかどうかの目安にすることができますよ。
暖房+加湿器で猫も人も快適な冬を過ごそう
猫にも加湿器が必要な理由や、乾燥で起こり得る症状、加湿器の選び方をまとめてご紹介しました。
筆者の家では冬になるとほぼ一日中加湿器をつけていて、プラス暖房もつけているため、実はエアコンをつけっぱなしの夏よりもはるかに電気代がかさんでしまいます。でも、自分が体調を崩したり猫が体調を崩したりする方がやっかいなので必要経費として観念しています!
ただ、加湿をする方法は何も加湿器に限ったものではなくても良いのかなと思っていて。濡れタオルを干しておいたり、マグカップに水をくんでおくだけでも多少は違ってくるでしょう。
猫というのは「渇きに強い」けど、その分人間ならペットボトルの水を一気飲みするぐらい喉が渇いている(脱水状態の)はずなのに平気で水を飲まなかったりするのだそう。加湿器も大切ですが、部屋の中に水飲み場を増やすというのも一つの手。猫が水を飲む量が増えることもあるし、多少の加湿効果もあるのでおすすめですよ。
ネコチャンの安全と健康、そして飼い主さんの出費や掃除の手間を考えて、ライフスタイルに合った方法で快適な冬を過ごしてくださいね。
文/黒岩ヨシコ