猫は、 “汚れた水”ほど飲みたがる?
お宅の猫ちゃんの食器、どうやって洗っていますか?
じつはわが家では、「猫ちゃんの食器・専用洗剤」派である夫と、「メラニンスポンジorアクリルたわし」派の私が対立しています。
猫と暮らし始めたころはそれほど知識もなく、普通の食器と同じように(スポンジだけ分けて)、食器用洗剤で洗っていました。しかしある時、水入れに清潔な水を用意しているのに、わざわざ金魚の水槽の水や、鉢植えのお皿にたまった水などを飲みたがるのを見て疑問に思い、その理由を調べてみたのです。
▲4カ所の水飲み場があるのに、水槽の水を飲みたがるわが家の愛猫
すると多くの猫は、飼い主が用意した清潔な水よりも、庭の水たまりの水や、魚の水槽の水を好んで飲む傾向があることがわかりました。その理由は大きく分けて2つ。
・通常、新鮮な水道水は消毒のために塩素が使われているため、猫の鋭敏な鼻にはこの匂いが耐えがたい
・食器を洗った中性洗剤の匂いがついている
十分にすすいだつもりでも、微量の成分は残っていて、猫はそれを嫌うのだとか。しかも「レモンの香り」「グレープフルーツの香り」など、猫が嫌う柑橘系の香りの香料が入っているものも多いですよね。
「新鮮で清潔な水を」という飼い主の熱意が裏目に出る
どの本にも、「猫には常に新鮮で清潔な水をたっぷり用意すること」と書かれています。でも、水道からくみたての新鮮な水ほど、塩素の匂いは強く残っています(1日ほどくみおきすれば、匂いは消えます)。また清潔を心がけて頻繁に洗うほど、その匂いも強くついてしまいます。ちなみに、フード用の皿はフードの匂いがつくので、水ほどは気にならないそうです。
一方、水槽の水や、庭の水たまりの水はどうでしょう。塩素の匂いや中性洗剤の匂いがしないばかりか、不潔な水ほどうようよいる微生物がだしのようなうまみとなって、猫にとって好ましい匂いをつけます。
つまり猫にとっては、「不潔な水ほどおいしい」のです。
これを読んでから、わが家では浄水器に汲みおいて塩素の匂いを取り除いた水だけをあげるようにし、中性洗剤ではなく、猫用の専用洗剤を使うようになりました。
猫用洗剤は、普通の洗剤とどう違う?
普通の食器用の中性洗剤がこれ。
かなり多くの化学物質が使用されていることがわかります。これらの成分の多くは油を落とすためのものなので、猫用の食器には必要のない成分といえます。またウェットフードだと、皿を直接なめるので、人間よりもこうした化学成分が口に入りやすいとか…。そう考えると、猫にとっては人間用の洗剤よりシンプルな成分で作られた猫用の洗剤のほうが安心な気もして、
わが家では、夫は猫専用の食器用洗剤「キッチンバブル」で洗っています。
使用成分はパーム油、パーム核油、クエン酸、リンゴ酸、トコフェロール(天然ビタミンE)、精製水とシンプル。全て天然成分で、 99.9 %生分解しますので、この洗剤で洗ったフード用のお皿を猫が舐めても安全だそうです。
微量の洗剤も、残したくない
ただ私はどんなにすすいでも微量の成分は残るような気がして、猫用の洗剤であっても、できれば使いたくないと思っています。それに、猫の唾液にはぬめりの元となる成分が入っています(油を落とすのが主眼の人間の食器用の洗剤ではそのぬめりは落とせないとも聞きます)。
ぬめりが残っていると、夏などはそこから黴菌が発生するような気も…(取り越し苦労かもしれませんが)。ならば物理的に落としたほうが安全で確実な気がして、メラミンフォームのスポンジ(「激落ちくん」などの商品名で売られています)や、手製のアクリルたわしでゴシゴシ洗っているのです。
一方、理科系思考の夫は、そうはいってもやはり化学的に汚れを分解して落とさないと不安らしく、洗剤を使いたがります。
そんなわけでこの問題はいまだに決着がつかず、あいかわらず夫は専用洗剤で、私は(こっそり)アクリルたわしやスポンジで洗っているのです。どちらが正解かはっきり判明するまでは、このスタイルが続きそうです…。
文・桑原恵美子
参考資料/「キャット・ウォッチング~ネコ好きのための動物行動学~」(デズモンド・モリス著・羽田節子訳/平凡社)