犬は銀杏を食べてはダメ!拾い食いに気をつけたい秋の木の実まとめ
秋が深まる頃、イチョウの木に生る銀杏(ぎんなん)の実。人間でも好き嫌いが別れがちですが、犬は銀杏を食べることはできません!
今回は、銀杏中毒の危険性をはじめ、愛犬とのお散歩で拾い食いに注意したい秋の木の実をまとめてご紹介します。
記事の監修者:獣医師 古江加奈子
パーク動物医療センター副院長。福岡県獣医師会、福岡市獣医師会、日本獣医がん学会に所属。言葉の話せない動物を治療するうえで、動物たちに聞く代わりに飼い主から沢山のことを聞き、飼い主とのコミュニケーションを最重視するドクター。 |
拾い食い注意!銀杏の実が落ちるイチョウ並木
秋の紅葉といえばイチョウやモミジ。よく晴れた空の下、金色のイチョウ並木を愛犬とお散歩なんて、とても気持ちが良いものですよね。
イチョウは公園や街路樹に使われることも多く、都心に住んでいる方にとっても身近な樹です。しかし愛犬と一緒にイチョウ並木を歩くときには、銀杏が足元に落ちていないかよく注意してください!
銀杏とはイチョウの雄株と雌株が受粉してできる種子のことで、果実ではありません。独特の強い臭いがするので、落ちている銀杏の異臭を感じて避ける犬がいる一方で、反対に興味を示してしまう子もいます。きちんとしつけられていればおきないことですが、万が一落ちている銀杏を犬が拾い食いしてしまうと、銀杏中毒を起こす可能性があります。
また、詳しくは後述していますが、銀杏の皮には皮膚炎の原因となる成分も含まれているため、食べるだけでなく犬が銀杏を踏んでしまわないように注意が必要なんです。
犬が銀杏を食べたら起こる主な中毒症状
普通、人間でも銀杏を数十粒一気に食べるという機会はそんなにないかと思います。そのため知らない方も多いのですが、実は銀杏は人間でも大量に摂取すると中毒を起こすことがある食べ物です。
出典:ギンナンのにおい、なぜ強い 食べさせようとしたのは…:朝日新聞デジタル
一般的に銀杏を食用にする場合には、一番外側の外種皮を取り除いた後、殻と呼ばれる固い中種皮ごと炒って、中の胚乳と呼ばれるヒスイ色の部分を食べます。有毒成分は、その食用部分に含まれています。
銀杏の胚乳に含まれるメチルピリドキシン(ギンコトキシン)という成分はビタミンB6の働きを阻害する作用があり、ビタミンB6欠乏症を引き起こすことが分かっています。銀杏中毒は大人より解毒機能が発達していない子供が発症することが多く、人よりもさらに解毒機能が低い犬が食べた場合は少量でも重症化してしまう恐れがあるといいます。
犬が銀杏中毒になったときの主な症状
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症状は犬が銀杏を食べてから1時間~12時間ほどで現れ、最悪の場合には死亡するケースもあるんです。
ただし、イチョウの木の下に落ちている銀杏の場合、中毒成分を含む胚乳は外種皮と固い殻に覆われているため、食べてしまった場合も咀嚼をしなければ有毒成分は消化されない可能性が高いです。そのため、拾い食いの場合は銀杏が詰まって腸閉塞になる可能性や、消化管を傷つけてしまう可能性、後述している接触性の皮膚炎などに特に気をつけるべきと言えるでしょう。
中毒を起こすリスクが高いのは、かみ砕いてから飲みこんでしまった場合や、踏み荒らされて殻が割れている状態の銀杏を拾い食いしたとき、自宅で銀杏を調理しているときなどです。ちなみに、中毒の原因であるメチルピリドキシンは加熱しても無くなることはないため、調理した銀杏を犬に与えることも止めましょう。
実は優秀?銀杏の栄養素
銀杏は、中毒成分以外にもビタミンCやβカロテン、カリウムなど体に良い栄養素を多く含んでいます。滋養強壮や喘息の改善、頻尿の改善などに効果があるとされ、漢方の材料にも使われているほど。大人にとっては、食べ過ぎにさえ気をつければ健康を助けてくれる食材といえるでしょう。
その一方で、犬や小さな子供にとっては少量でも毒になるということを肝に銘じておいてくださいね!
仔犬は1粒でも危険?銀杏中毒を起こす摂取量
では、どの程度の量の銀杏を食べると中毒症状が起こるのでしょうか?
成人の中毒量の目安は約40粒といわれます。そのため、多くても1日に食べるのは15~20粒程度に抑えた方が良いというのが一般的な見解です。子供の場合はもっと少なく、5~6個でも中毒を起こす危険があるといわれます。
犬の中毒量は明確にはされていませんが、子供よりもさらに体が小さいことを考えると数粒でも危険があることは想像できるでしょう。
ただし、銀杏を食べて中毒症状が現れるかどうかは犬の個体差によるところも大きいです。特に体が小さい小型犬や、内蔵機能が発達していない仔犬の場合は1粒でも安全とはいえません!
お散歩中はもちろん、食卓に銀杏を出すときや食べ終わったゴミなどにも十分注意して、愛犬が銀杏を口にしないようにしてくださいね。
散歩中は銀杏の皮(外種皮)にも要注意!
犬が銀杏を食べる以外にも注意していただきたいのが、銀杏の臭いの原因である外種皮部分に触れないようにすることです。
落ちている銀杏の一番外側の果肉のような部分は外種皮と呼ばれ、アレルギーや皮膚炎の原因になるギンコール酸が含まれています。人間でも素手で銀杏拾いをするとかぶれてしまうことがあるので注意しましょう。
口に入れる以外にもうっかり愛犬が踏んづけてしまうと皮膚炎を起こしてしまうこともあるので、銀杏が落ちている場所には連れて行かないほうが賢明です。
ちなみに、銀杏の臭いや、実が踏みつけられると道路の景観が悪くなることを避けるため、最近では街路樹にイチョウの雄株だけを植えることも多いようです。雄株であれば実はつけないため、銀杏が落ちていることもないので安心してお散歩することができます。
犬が銀杏を食べたときの対処法
もし、愛犬が銀杏を食べてしまったことが分かったら、まずは対処法についてかかりつけの獣医師に相談し指示を仰ぎましょう。
その場で水をたくさん飲ませて吐き出させる応急処置などもありますが、愛犬の負担にもなりかねないので素人が無理にやることはあまりおすすめできません。たとえ今症状が出ていなかったとしても、愛犬の現在の様子や、食べた量、時間などを伝え、必要であれば病院へ連れて行くことをおすすめします。
また、もし飲みこむ前(犬の口の中にまだ銀杏が残っている状態のとき)に飼い主さんが気づいたのであればすぐに口から出させましょう!できるだけ銀杏が体の中に入らないことが大切なので、自分で出さないようであれば口に手を入れて取り除いてあげてください。
安全?危険?愛犬の拾い食いに気をつけたい秋の木の実
さて、ここまで銀杏の中毒についてご紹介しましたが、秋には銀杏以外にも犬が拾い食いしてしまいそうな木の実が落ちていることが多いです。
身近な秋の実のなかには犬にとって危険なものもあるので、ぜひ参考にしてくださいね。(もちろん、お散歩中の拾い食いはさせないことが第一ですが!)
※安全といわれる木の実の場合にも、食物アレルギーを起こす可能性には注意してください
①どんぐり
クヌギや樫の木の下に落ちているどんぐりは、少量であれば犬が食べてしまっても中毒になるような危険はないといわれています。ただし、どんぐりにはタンニンという抗酸化成分が含まれていて、大量に食べると下痢や嘔吐を引き起こす場合があります。
また、犬はどんぐりの固い皮を消化することはできません。そのため、食堂や胃腸を傷つけてしまったり、腸に詰まってしまう可能性もあります。積極的にどんぐりを食べさせることは止めましょう。
②栗
秋の味覚を代表する栗も、山道や雑木林であれば落ちていることがある木の実ですよね。栗は犬が食べても大丈夫な食べ物ですが、それには加熱して皮を剥き、柔らかい実の部分だけをあげる必要があります。
拾い食いであれば固い皮ごと食べてしまうため、消化不良を起こしてしまう危険があるので注意しましょう。
愛犬に栗を与えるときの注意点について、詳しくはこちらの記事で解説しています!
③柿
こちらも秋の味覚の代表格である、柿。民家でもよく育てられているため、熟した果実が愛犬の散歩ルートに落ちていることなんかもあり得るでしょう。
柿は犬が食べても大丈夫な果物の一つです。ビタミンCやビタミンAを含んでいるため、食べさせ過ぎに注意すれば皮膚の健康などに良い効果も期待できるでしょう。
ただし、皮やヘタはやはり消化しにくい部位なので、取り除いて与える必要があります。
④南天(ナンテン)
秋には葉が赤く紅葉し、11月頃~冬にかけて赤い実をつける南天(ナンテン)の樹。南天は「難を転ずる」縁起がいい樹として、昔から日本に親しまれている庭木です。
「南天のど飴」に代表されるように、南天の実には咳止めにも使われる成分が含まれているのですが、生の実は有毒です!犬が南天の実や葉を食べると、摂取量によっては発作や痙攣、呼吸不全などの症状を起こす危険性があるため、決して口にさせないようにしましょう。
⑤ヨウシュヤマゴボウ
秋にかけてブルーベリーやヤマブドウのような実をつけるヨウシュヤマゴボウ。名前はあまり聞きなれない植物ですが、公園などで実がなっている姿を見かけたことのある方も多いのではないでしょうか?
見た目は美味しそうですが、決して食べてはいけません!人にとっても犬にとっても危険性が高く、実だけじゃなく植物全体が有毒なことで知られています。食べてしまうと嘔吐や下痢、神経麻痺、呼吸困難などを起こし、死に至る可能性もある危険な植物です。
⑥チューリップやスイセンの球根
木の実ではありませんが、ガーデニングが趣味という飼い主さんは秋植えをする花の球根にも注意しましょう。チューリップ、スイセン、ヒヤシンス、ユリなどは庭に植えられることも多いかと思いますが、実は誤って愛犬がかじってしまうと危険性が高い球根植物です。
下痢や嘔吐、痙攣などの他、チューリップは心臓まひや呼吸困難、スイセンは不整脈や腎障害など重篤な症状を起こしてしまった例もあります。庭先だけじゃなく公園で植え替え作業などをしているときもあるので、愛犬がイタズラしに行かないように目を光らせておきましょう。
秋のお散歩は銀杏の拾い食いに気をつけよう!
犬の銀杏中毒の危険性や食べてしまったときの対処法、拾い食いに気をつけたい秋の木の実などをまとめてご紹介しました。
空も紅葉もきれいで、お散歩するのにも気持ちが良い今の季節。でも、実りの秋というだけあってワンコにとっては誘惑の多い散歩道になっていたりもします。
好奇心旺盛なワンコだと興味本位でなんでも口に入れてしまうこともあるので、秋のお散歩にはいつも以上に気をつけてあげるようにしてくださいね。
文・黒岩ヨシコ