人気のトイプードル、高温多湿な日本の夏から守るための室内環境管理について
日本国内で人気の高い小型の犬種はさまざまあるが、チワワやミニチュアダックスフントと並んでメジャーなのがトイプードルである。
元々プードルはスタンダードな品種がかなり体格も良いことが知られているが、トイプードルは特有の毛並みを引き継ぎつつ小型犬として品種改良されたもの。
そのため、何かと手狭な日本の住環境でも迎え入れやすいことから、多くの愛犬家に大事に飼育されているところだ。
そんなトイプードルをはじめとして、小型犬の飼育についての基本的なノウハウは既に多くの飼い主さんが共有している。
日本の愛犬家には飼育リテラシーが高い方が多いので、能動的に愛犬に対して「理想的な環境を用意してあげよう」と考える傾向がある。これは素晴らしいことだ。
一方で、日本には四季があり、季節に応じて愛犬を取り巻く最適な環境は変化する。
冬は暖かくしてあげないといけないし、夏は涼しく過ごしてもらわなくてはならない。
この日本の“当たり前の環境変化”を踏まえたうえで、今回はトイプードルの室温管理について、夏場のマストな手法を考えていきたい。
トイプードル、室内で発生しやすい夏場の“暑さ問題”
日本の夏は、暑い。
地域によるが、東北ですら夏場にエアコンを使わずに乗り切ることは難しいこともある。
当然人間にとってそこまで過酷な環境であるなら、被毛に覆われ、基礎体温も人間より高い犬たちにとってはもっと過酷なはずだ。
人間は全身から汗をかいて体温を下げる機能を持つが、犬の場合は肉球からしか汗をかかない。
あとは舌を出して息をし、唾液中の水分を蒸発させる方法で体温を下げるしか自力での体温調節ができない。
犬の平均的な体温は37度台後半から39度程度であるが、大型犬より小型犬の方が体温は高くなる傾向にある。
つまりトイプードルらにとっては、日本の夏はかなり深刻な問題と考えておきたい。実際、毎年のように夏場の熱中症で亡くなる事例が報告されているし……。
特に高温多湿な地域ともなると、まさにちょっとの油断が熱中症などのリスクを招くこととなる。
室内においてもそれは同じことで、対策を講じなくては命にかかわる問題でもあるのだ。
夏は室温に要注意!トイプードルにとって快適な環境設定は?
トイプードルと一緒に暮らしていく場合、夏場に気を付けなくてはならないのは環境そのものの温度調節である。
前述のように犬は体温調節が人間よりは不器用で、体温自体も高い。
室内で暮らす彼らにとっては、真夏にちょっと窓を開けたり、網戸にしているだけでは対処は不十分となる。
エアコンを使って快適な室温を提供することが一番効果的だ。これはトイプードルどころかすべての犬種、すべてのペットにも言えることだけど。
そのうえで湿気対策のために、ドライに設定しておくことをオススメする。
この理由については、一つに湿気による蒸れからくる疾患の予防という観点がある。
主婦の友社が刊行している『人気室内犬の選び方飼い方』という書籍によると、トイプードルについて以下のような指摘がされている。
「耳の中にも毛が生え、この毛で外耳道がむれて、かぶれやすくなり、外耳炎になることがあります」
つまり蒸れの原因を環境で少しでも除去してあげることで、トイプードルの夏場の室内生活のクオリティを高めることができるということになる。
エアコンの性能や室内の間取りによって最適な設定温度は変わるが、暑すぎても寒すぎても問題なので、ドライの26~28度あたりに設定してみてはいかがだろうか。
これに加えて、扇風機を“首振り”にして室内に風を送ることで、きっとトイプードルも快適に過ごせることだろう。
それでもなお、舌を出してハアハア暑そうにしている場合は、少しずつ室温を下げて最適な温度を見ていくのが良い。
真夏にトイプードルをお留守番させるときの安心要素!
と、ここまであくまでも飼い主が夏場に同じ室内で愛犬と過ごしていることを前提とした話をしてきたが、ここでお留守番をさせる場合の安心できる要素も挙げておきたい。
これもトイプードルに限らない話だけど、エアコンの稼働は必須だと考えておくことが一番だ。
さらに飼い主さんが出かける前には、しっかりと飲み水を補充して、少しでも夏場の熱中症リスク、脱水の可能性を下げておきたい。
時間帯によって日差しが強くなる部屋の場合は、最初からカーテンを閉じておくのも有効だ。
それでも室温が思うように下がらないなら、遮熱カーテンを購入して設置することをオススメする。少し高いが、これがあるとエアコンの効きも良くなるので電気代にも貢献してくれるはず。
それからお留守番に関して言えば、少しの間(たとえば近所に買い物に行くなど)留守にするというとき、「一瞬だけなら」とエアコンを切って外出してしまう飼い主さんの話を、以前聞いたことがある。
本当に一瞬で帰って来れるならいいが、もしも。万が一にも帰りが遅くなったら室温はすぐに上がってしまうのが日本の夏。
「このぐらい大丈夫だろう」のせいで悲劇って起きるものだから、夏場は基本的にエアコンは愛犬のために常に動かしておく、ぐらいの考えで臨んだほうが良いように思う。
同じような理由で、トイプードルなどの小型犬と一緒にドライブに出かける飼い主さんは多いが、買い物の間にエンジンを切ってしまうのもご法度。
夏場の車内でクーラーもつかないままお留守番させれば、瞬く間に温度は高くなってしまう。
こういう形でのお留守番をさせるぐらいなら、そもそも家に残ってもらうべきだろう。愛犬の安全のために。
トイプードルのための夏場の室温管理、怠らないようにしたい…
トイプードルは抜け毛が少ない犬種であるので、夏毛自体も春先には生え変わって用意されているはず。
だから夏場の暑さ対策については、トイプードル自信ができる範囲で行っている(常に室温が一定に保たれている室内飼育の場合は例外で、換毛が遅れている場合がある)。
しかし、その努力だけではなかなか日本の夏に耐え切れるものでもない。
結局は飼い主さん側が最適な室温管理を、夏のあいだ中徹底しなければいけないということをおぼえておきたいところだ。
文/松本ミゾレ
(参考)
主婦の友社『人気室内犬の選び方飼い方』(監修:佐草一優のづた動物病院院長)