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尻尾が数本ある猫がたびたび目撃されるワケ

2020.02.01

異形の猫

ずっと前に「羽のある猫」を目撃したことがある。

海外では“こうもり猫”なんて呼ばれることもあるようだが、当然実際に翼があるわけではない。

屋外で野良として生きていき、だんだんと年齢を重ねて毛づくろいが疎かになっていくことで、抜け毛が体から落ちることなく、背中などの毛づくろいしにくい部分に凝り固まってしまうことで、翼のように見えるのだ。

だから一度入浴なりさせて、丁寧にほぐしていくと元通りすっきりした見た目に戻るんだけど、飼い主のいない猫となるとそれも難しい。

僕が見たその個体も、結果的に背中に一対の翼を持ったように見えるほど抜け毛が蓄積してしまっていたわけだ。

しかしビジュアル面ではたしかにインパクト抜群で、ここ最近になっても同様の理由で翼があるように見える猫の画像がネットには出回っている。

さて。

ビジュアル面でのインパクトが強い猫というのは他にもいる。それが、複数の尻尾を持つ猫たちだ。

猫又伝説しかり、昔から猫の尻尾が複数ある事例は知られている…

尻尾を複数持つ動物と言えば、伝承にある「九尾の狐」が一番有名だろう。その昔、中国からやってきた9本尻尾の狐が都で悪さをし、退治をされると殺生石に変化した、という伝説がある。

尻尾が9本もあるなんて、とてつもなく恐ろしいし、どこか神秘的だ。そして尻尾が複数ある動物は、何もこれだけではない。

日本では昔から、年老いて知恵を付けた猫は猫又になるという言い伝えがある。その猫又の尻尾は2本。九尾の狐ほどのインパクトはないにせよ、やはり尻尾が2つもあるのは異形と言うほかない。

僕は子供の頃から妖怪が好きだったので、この猫又についても色々と考察してみたんだけども、何のモデルもないままに、いきなり尻尾が2つある猫の妖怪なんて創造できるのかがずっと疑問だった。

そして素人考えながら「もしかして昔、本当に尻尾が2つある猫がいたのかも」と思うようになったのだ。

と言うのも、日本妖怪って割かし、複数人に目撃された不思議な姿をした生き物が妖怪認定されるという例があったからである。

徳川家康が駿府城で目にした肉人はぬっぺぷほふという妖怪として認知されるようになった。その昔、ある村落で武士に給仕していた老婆が後年そのルックスもあってか、おしろい婆という妖怪と呼ばれるようにもなった。

とすると、尻尾が2つあった猫が、かつて日本にいたとしても不思議ではないように思えるのだ。

実際、尻尾が複数ぶら下がっているように見える猫はいる!

ところで尻尾が複数ある猫、僕は直接見たことこそないものの、これも世界各地で多くの目撃例がある。ただし本当に尻尾が複数あるというわけでもなく、あくまでもそう見えるというだけの話のようだ。

主に長毛種がそうなりやすいようだが、冒頭で書いた翼に見えるほどの毛の凝り具合よろしく、お尻付近に残る抜け毛が積み重なって尻尾のようになる場合はある。

ためしにインターネットで「猫 尻尾 2本」などのキーワードで動画検索をしてみると、実際にそういう猫の画像を見ることができるはずだ。

つまりこれらの多くは、抜け毛が凝り固まって尻尾のように見えるだけの野良猫ということになる。

それにしても見事に尻尾のように抜け毛の束がぶら下がっているケースもあるので、見る人が見れば尻尾が複数あるようにも感じられることだろう。

おわりに

と、今回は尻尾が数本ある猫について色々と書いてみた。

尻尾付近に毛が溜まっているだけということが大半で、実際にちゃんとした尻尾が2つも3つもある猫というのはそうそうお目にかかれない。

だけど一つ確かなことがある。

それは、尻尾がいくつあろうと、猫はみんな可愛いということだ!

文/松本ミゾレ

イラスト/今井美保

東京生まれ。少女マンガ誌でデビュー後いくつかの連載を経て、妖怪マガジン「怪」(角川書店)の「第一回怪大賞・京極夏彦賞」を受賞、妖怪漫画の道へ。イラストや漫画をほそぼそと描きながら暮らしている。

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