猫の「食べない病」、治療が必要な危険ラインは3日!
「急にフードを食べなくなる」は、猫あるある⁉
夏場は猫の食欲が落ちて、あまり食べてくれなくなることは多いですよね。「でもじつは、健康上の問題がない猫が急にフードを食べなくなることは、珍しくありません。私が勤務していた動物病院では『猫食べない病』と呼んでいたほどです」と語るのは、ロイヤルカナン ジャポン サイエンティフィック コミュニケーション所属の獣医師・齊藤千絵先生。
「食べない病」の猫の食べない日数の危険ラインや、食べてくれない時の対処法などについて、2019年7月21日(大阪)と7月28日(東京)、ペットシェルター運営者のために開催された「ロイヤルカナン プロフェッショナル セミナー~シェルター キャット」での齊藤先生の特別講演をもとに、ご紹介します。
猫の食べない危険ラインは「48時間」!
猫は自然界では優秀なハンターで、ちょこちょこ獲物を食べているのが自然な状態ですので、体が飢餓に耐えられる作りになっていません。「うちの子は太目だから、少しくらい食べない日が続いても大丈夫」と思っていませんか?実は逆! 脂肪が多めの猫ほど、絶食に弱く危険な状態になりやすいのです。
というのも絶食状態になると、猫の体内ではエネルギーを作ろうとして脂肪が分解され、急激に肝臓に蓄積されます。そのため人の脂肪肝にも似た肝不全の状態となり、治療しないと死に至ることもあります。この状態は「肝リピドーシス」と呼ばれ、絶食が3日以上続くと危険といわれています。典型的な症状は黄疸。絶食が続き、白目が黄色くなったり、尿が黄色くなっていたりしたら赤信号! すぐに病院に連れて行きましょう。
対策1…高カロリーフードを与える
フードを変えるなどしても食べる量が増えない場合、少しの量でもエネルギー補給しやすい高カロリー食や、少量でも栄養の吸収率をアップさせるため、消化に配慮したフード、腸内細菌バランスなどを改善する食物繊維などを含んだフードを活用しましょう。
メンタル面の健康維持に配慮した成分配合のフードを与える
保護施設に来た猫は、3週間で約31%に体重の減少がみられるというデータがあります。なんらかの理由で不安やストレスを感じていることが原因の場合、そのストレスを排除すると同時に、そうした状況での健康維持に配慮した成分(加水分解ミルクプロティン、L-トリプトファンなど)を配合したフードを与えるのもいいでしょう。
緊張を和らげるようなお薬やサプリメントなどの使用に抵抗を感じる方もいますが、食べないダメージのほうがはるかに体への悪影響が大きいのです。
食べさせ方を工夫する
ウェットフードの場合、人肌程度に温めると食事の選択率がアップするというデータがあります(ただし夏場は腐敗に注意を)。
また食器も食欲に関係し、陶器>ガラス>プラスチック>ステンレスの順番でよく食べるという報告があります。理由ははっきりわかっていませんが、ステンレスは光が反射するのを嫌う、プラスチックは臭いが残りやすい、などの理由が考えられます。
猫に「労働」をさせて、食欲アップ!
人間も動物も、何もせずに得たものより、労働の対価として得た食事に喜びを感じる傾向があるそうです。この性質に着目し、動物園でも最近はわざとご飯を隠し、探して食べさせる方法をとっているところもあるとか。
同じように猫もフードをおもちゃに入れたり探させたりして与えるようにすると、狩猟本能が刺激され、食いつきがよくなる場合があります。製氷皿にドライフードを入れたり、トイレットペーパーの芯の中に隠したり、ガチャガチャのボウルに入れたりして工夫をしてみましょう。ただし紐など誤飲の危険のあるものは使わないよう、注意してください。
取材・文/桑原恵美子
取材協力/ロイヤルカナン ジャポン