天国の愛犬からの手紙
ペットロス…最近は一般的にも聞かれるようになった言葉だ。いわゆる「愛犬や愛猫など家族として暮らしていた伴侶動物を亡くした辛さ」に対して使われる言葉だ。
ペットロスとは英語でも一般的に使われる言葉である。しかし本来,重く尊厳のある言葉であるはずが,カタカナ語を非常に好む日本では「(ドラマヒロイン)ロス」「〇〇ロス」などのちょっとしたことにも「~ロス」が多く使われ,その重みをその言葉で感じることはできにくくなっている。そのため,私を含め軽くその言葉を使うことに疑問を感じることも多いのだ。家族や親しい人が亡くなった場合に「家族ロス」「友人ロス」などとは日本では言わないのだから,家族であるペットにも使わなくていいのではないだろうか。普通に「愛する伴侶動物を失った悲しさ,苦しみ」で良いのではないだろうか。と思うのである。
数日前,愛犬の三回忌を迎えた。まる二年である。誕生日の2日前に亡くなり,誕生日に荼毘に付した。愛犬が元気だった2年半前までは,愛犬の長生きを願い,「この子がいなくなるなんて考えられない。」と思っていた。しかしあっという間にその時は来てしまった。病名は悪性リンパ腫。「なんでもっと早く気づいてあげられなかったのか。」「他にもっとできたことはあるのではないか。」「元気な時に,もっともっと犬らしく楽しませてあげることができたのではないか。」そんな事ばかりが頭の中を駆け巡った。
あれから2年。今の生活には確かに慣れてきた。でも忘れることはない。ふとした時にその気持ちが蘇り,後悔の念に苛まれるのだ。元気な時から何度も一緒に旅行へ行った。食べるものにも気をつけ,できるだけ犬らしく生きられるように努力したつもりである。しかし,それでも悔やまれるのだ。
愛犬の死から2年経った今,もしもよく言う「虹の橋」というものがあるのであれば,彼女はいま何をして,何を思っているのだろうか。
~天国の愛犬からの手紙~
わたしの愛する家族へ
今日は,今までずっと伝えたかったことを伝えさせてね。
でもその前に,これを伝えておかなきゃ。「こちらで元気にしています。」
この手紙は虹の橋から書いてるんだよ。ここで神様たちと一緒に住んでいるんだ。
ここは悲しみの涙もなくて,ただ永遠の愛がある場所なんだよ。
みんなを置いてこの世を去らなければならなかったあの日,心の準備なんてできていなかったでしょう。でもね,あの日,あの時がわたしが旅立つ時だったの。
あなたは最後まで愛情を注いでくれた。最期の頃のお世話は本当に大変だったでしょう。ありがとう。あなたは,わたしの前では涙を見せないように強くふるまってくれてたよね。気づかれていないとおもったでしょ? でもちゃーんと知ってたんだよ。
だんだん意識が遠くなっていった時,神様が迎えに来てくれたんだ。そしてこう言ってくれたの。
「おかえり。君が現世に行っている間,ここにいるみんなは寂しがっていたよ。君が現世に残してきた最愛の家族とは,いずれまたここで必ず会えるからね。」って。
そう言いながら神様はある紙を渡してきたんだ。それには「君にして欲しいことリスト」って書いてあったんだけど,そのリストの一番上には何が書いてあったと思う?
「最愛の飼い主を見守ること」。
そう書いてあったんだ。
だからわたしはいつもあなたと一緒にいるからね。
現世での肉体を持ったわたしはもういない。だけど,だからこそ今までよりももっと側にいることができるようになったんだよ。
これから先,あなたの人生にはいろいろなことがあると思う。楽しいことも苦しいこともあると思う。でもいつもわたしが一緒にいるからね。わたしはね,虹の橋の世界とこっちの世界を行ったり来たりできるようになったんだよ。姿は見えないかもしれないけれど,ちゃーんと側にいるからね。
ねぇ,知ってる?人に何かいいことをしてあげると,必ずそれは自分に返って来るんだって。神様が言っていたよ。「もし落ち込んでいる人に出会ったら,手を貸してあげよう。元気づけてあげよう。そう,君がいつもしているようにね。」って。だから,お願い。あなたと同じように悲しんでいる人がいたら助けてあげてね。わたしは必ずあなたの側にいるから。
最後に,肉体を持っている時には言えなかったこと言わせてね。
いつも仕事から帰ってきたら,すごい笑顔で「ただいま!」と言ってくれてありがとう。
いつも「大好き!」と言ってくれてありがとう。
時々,わたしが家でいたずらをしても,あまり怒らないでくれてありがとう。
おもちゃもたくさん持っているのに,いつもお出掛けすると新しいのを買ってくれてありがとう。でもすぐに破っちゃったり,汚しちゃったりしてごめんね。
いつも美味しいご飯をありがとう。
思い出すときりがないけれど,わたしの家族になってくれてありがとう。
いつも愛してくれてありがとう。
わたしはとっても幸せでした。
いつかは,あなたがあなたの肉体から離れる「その時」が来る。でもそれは,わたしともう一度会える,ということ。
だから,その時までわたしは見えなくてもあなたの側にいるからね。
またね。
あなたを愛する愛犬より
文/織田 浩次
参考資料/
Pet Loss Poems: Letter From Heaven
A Letter From Your Pet In Heaven
Craft Love Craft Life/Letter from Heaven (Dog)