実録。地域猫問題!どれだけ注意されても置き餌をやめなかった老夫婦
屋外で暮らす野良猫に避妊・去勢手術を施したのち、近隣住民が共同で管理する地域猫活動。
この動きは現在、徐々に浸透してきています。
最近では大抵の自治体が、新年度に野良猫の避妊・去勢手術費用を負担するという試みを実践しており、一定数の野良猫を地域猫にして、再度屋外にリリースしているところです。
この仕組みも、自治体のサポートも十分とは言えない段階ではあるものの、これによって屋外の猫の繁殖は抑えられ、一代限りの命を全うしてもらうことになります。
当然この活動を続ければ、新たに屋外に人間が猫を遺棄しない限り、ものの10年ほどで野良猫は見かけなくなるというわけですね。
ただ、地域猫活動ってまだまだ理解が広まっていないんですよね。
活動の骨子は野良猫による他の動植物への被害を少なくすること。そしてなにより動物愛護の観点から、地域猫の命を尊重することでもあります。その活動を妨げている状況の一例を、今回は紹介したいと思います。
給餌の際に投薬必須の地域猫に餌をあげちゃう第三者…
筆者の住まいの近くにも、地域猫の暮らす公園があります。
持ち回りで近隣の方がお世話をしているのですが、最近になってちょっと困ったことが起きました。
病気治療のために投薬が欠かせない猫が、置き餌をする第三者のせいでお腹いっぱいになってしまい、薬を混ぜたカリカリを食べなくなってしまうということが頻発したのです。
しかも、その置き餌は皿に入れるでもなく、地べたに直置き。これは衛生的でもありません。
毎日のように置き餌は続き、投薬が必要な猫への給仕もままならない状況となり、次第に衰弱させてしまうことになりました。このままでは猫も長くは持たないと判断した地域猫の世話役の方たちは、不本意ながら置き餌の犯人探しをすることになったそうです。
その顛末は、筆者があるとき通りがかったこの公園の入り口に立てられた看板で知ることになりました。看板には「病気治療のために、給仕とともに投薬をしています。置き餌はご遠慮いただければ幸いです」との丁寧な注意書き。
が、そのとき筆者は見てしまったのです。
看板の前で、猫たちにカリカリを“ばら撒く”老夫婦を。
皿も使わず、アスファルトにカリカリを振り撒くなんて尋常ではありませんので、流石に「ちょっといいですか?」と声を掛けたのは当然のことでしょう。
このご夫婦は最近になって散歩コースに猫のいる公園を利用するようになったと話し、その上で「猫に餌をあげて何が悪いんだ?」とけんか腰。
こちらとしてはトラブルを招くつもりもないので穏便に話を続けたのですが、結局逆ギレされ、何ならちょっと殴られたりもしました(笑)。
しかも話を聞けば、これまでにも何度か近隣から苦情を受けていたが、意固地になって置き餌を続けてきたとも取れる発言まで飛び出す始末……。
押し問答の末に理解はしてもらえたものの、こういうことは珍しくない…
結局このご夫婦に対しては「病気の猫が満腹になってしまうと、薬も口にしてくれない。そうなったら猫は衰弱死してしまうのでやめてほしい」と、冗談抜きで10回ぐらい説明しました。
そのうちに相手方も冷静になったのか、徐々に話に耳を傾けてくれるようになったのは幸いでした。
ただ、こういう方々に対しては、看板を設置してもあまり意味がないことは肌で実感したところです。
実際に同じような例は、筆者が知っている複数の地域猫のコミュニティの全てで発生しています。本当に、全ての地域猫のいるエリアで置き餌問題と、そのために生じる投薬が出来ない状況が発生しているんですよね。
これはちょっと異常事態ではないでしょうか。
猫がかわいいのは当然です。
が、過度に干渉すると、彼らの健康を害する恐れがあるということなんですけど、現状ではまだまだそこまでの理解が及んでいないのが全国的に見られる地域猫問題の一端でしょう。
おわりに
今回提示したこの問題って、地域猫を見守るNPO法人団体や、近隣の方々が本当に、毎日のように頭を抱える話です。看板も設置した。置き餌をしている方にはその場でそれとなく注意している。
それでも一向に置き餌はなくならない。
このジレンマって、相当なストレスなはずです。
置き餌が横行すれば不衛生極まりない環境になりますし、猫だけでなく、カラスの餌場にもなってしまいますし、何より付近からの苦情を、地域猫を管理している人々が受けることになります。
もう少し、地域猫の管理をしていない僕らのような非・当事者は、干渉するのではなく、遠巻きに見守るぐらいのメンタリティを身につけるべきなのかもしれませんね……。
極端な話、こっそりと置き餌するぐらいなら地域猫を引き取って自宅で大切に飼育するべきです。
地域猫に干渉するって、本来そういうことなんだと思います。
文/松本ミゾレ