なぜ、猫はイスラム教徒に敬愛されているのか…?
世界には、実に様々な宗教が息づいていますよね。
そしてそういった宗教の中には、特定の動物をとりわけ大事にするという文化が根深く存在している場合があります。たとえばヒンドゥー教では牛が崇拝の対象となっていることは、よく知られているところです。
それからイスラム教徒は、ペットとしても非常に私たちと馴染みの深い猫を、とりわけ丁重に扱っているようです。今回は、何故イスラム教徒たちが猫を大事な動物と考えているか。これについて紹介していきたいと思います。
猫はイスラム教の開祖ムハンマドと縁の深い動物だったという説
猫がイスラム圏で大切に扱われている……この理由についてですが、イスラム教の開祖ムハンマドとの関わりが大きく影響しているようです。
こんな話が伝わっています。
ムハンマドは生前、大変に猫好きだったという逸話が残っています。そのため、ムエザという、額に「M」の模様が入った猫を飼い、これを溺愛していたという話は有名です。
あるときムハンマドが出かけようとした折、衣服の片方の袖の上にムエザが横たわって熟睡していました。ムハンマドはムエザを起こさないように、彼が眠っている袖を切り離し、片方の袖のない状態の衣服のまま出かけたといいます。
その後、ムハンマドが用事を済ませて自宅に戻ると、ムエザはムハンマドに感謝の会釈をしたと伝えられています。
また、ムハンマドの親友にして、これまた大層な猫好きとして知られるアブー・フライラという人物の飼っていた猫もまた、ムハンマドと縁の深い関係であったそうです。
あるときこの猫は、ムハンマドを蛇から救い、その行いに感動したムハンマドは、この猫の背中を撫でました。するとその猫は、現在の猫のような機敏な反射神経を授かったという話があるのです。
イスラム圏においては、猫が現在のような優れた反射能力を持つに至ったのも、ムハンマドの力だと考えられているわけですね。
イスラム教徒に認められ、愛されることを推奨された動物…猫!
また、猫は絶えずグルーミングを熱心に行う手前、野良であっても他の野生動物のような獣臭さを発しません。これもまた「清潔な獣である」として、イスラム教徒たちに歓迎された要素でした。
元々ムハンマドに愛されたムエザと同じ種類の生き物であり、なおかつ疫病の媒介源であるネズミを捕食し、しかも匂いもないという点において、猫たちはかの地で大いに重宝されていったのでしょう。
このため、猫たちはまさに動物の中でも異例の特別扱いを受けてきました。なにせモスクに立ち入ることすら許されているのですから。
一方で、その割を食っているようにも感じられるのが、日本でも猫と並んでペットとして愛されている犬たちです。
イスラム教徒にとっては、犬は多くの場合、敬遠の対象とされています。なんでも、犬は不浄であるとみなされているのだとか……これは愛犬家にとっては何とも悲しいことではありますが、まあ宗教によっては動物の立場も大きく異なるものだということですね。
おわりに
ということで、今回はイスラム教徒たちが猫を愛する理由について書いてみたのですが、ムエザのように額に「M」の模様がある猫って、日本でも頻繁に見かけますよね。
私たち日本人にしてみると、ありふれた可愛い猫でしかないのですが、これもイスラム教徒の人々にしてみれば、一際敬愛の対象になるそうです。
なんと言ってもムエザの額の模様と同じですからね。
ちなみに、我が家にも額に「M」の入った猫がいます。彼もまた、筆者にとってはかけがえのない大事な相棒ですが、先日枕元にうんちをされました(笑)。
文/松本ミゾレ