柴犬の武蔵くんと、おおらかなママの
ほのぼの老犬介護物語【老犬と暮らす】
「長生きして、老衰で穏やかな最期を迎えてほしい」というのは、犬を飼っている人の願いではないでしょうか。喜ばしいことに、犬も生活環境や食物が良くなって、人間と同じく長寿になっています。ただ、長寿は嬉しいのですが、いつまでもスタスタ歩いて、元気というわけにはいかないこともあるのです。
■だんだん歩けなくなった
柴犬の男の子、武蔵くんは2001年10月10日生まれ、現在、16歳と半年です。まさにご長寿さん。年をとるにつれだんだん後ろ脚が弱くなっていき、散歩の距離も短くなっていきました。徐々に自分で立って歩くことが難しくなり、他にはどこも悪いところはないのですが、15歳半の頃からとうとうほぼ寝たきりに。お散歩は、バギーに乗って1時間くらい外の風に当たります。武蔵くんは、お散歩中に気持ちよくなって、すやすや寝てしまうそうです。
ただ、武蔵くんは、寝たきりとはいうものの、前脚の残っている力を使って腹ばいになって動くことはできます。子犬の頃からとても甘えん坊で、家に誰もいなくなると、ギャンギャン吠え、寝る時はずっとママの横。介護が始まってからは、お世話しやすいようにリビングで添い寝しています。
■アイデアと工夫で快適介護生活
介護生活が始まって一番困ったのは、オシッコなのだそうです。それまではお散歩の時に庭や外で排泄していたのですが、いつ行きたいのか分からない。うっかりするとおもらししてしまうこともありました。しばらく排尿のタイミングがつかみにくくて苦労したママですが、最近は、オシッコがしたくなると、もぞもぞ動き出す、武蔵くんのサインがだんだん分かってきたそうです。
オムツも使っているのですが、紙おむつだけでなく、パンツとパットを組み合わせて履かせることもあります。でも、オムツを外して介添して立たせ、庭でオシッコするのが一番すっきり!とても気持ちよさそうな顔をする武蔵くんです。
また、武蔵くんは、同じ体位で眠りたがり、あごを床に擦って移動するため、片側の唇のあたりが床ずれのようになってしまいました。動物病院では、ワセリンを塗って皮膚を保護する湿潤療法を教えてもらったのですが、ママのアイデアでも一工夫。武蔵くんの顔の下にユニクロのブラを敷いたのです。ユニクロのノンワイヤーブラは、柔らかく通気性がよく、カップが武蔵くんの顔のサイズにピッタリ!すやすや心地よさそうに寝ています。
■SNSで人とつながって、楽しく介護生活を続けよう
ママがフルタイムで働いているため、武蔵くんは、日中ぐっすり寝ています。体は元気だけど、お散歩ができないので疲れません。そのため、夜になると活動する“夜活”が続いています。2~3時間おきに起きて、ご飯だ、水だ、オシッコだと要求されるので、ママはぐっすり眠れない日々がずっと続いていて大変。具合が悪い時は、1時間おきに起きてしまうこともあります。
それでも、ママは「そんなことは慣れていきます。天寿を全うさせてあげたいし、可愛いんです」と言うのです。ただ、気持ちとはうらはらに、ママが疲れているのも事実。武蔵くんのママの病院のカルテには、「睡眠不足、犬徘徊」と書かれています。
そんな武蔵くんママですが、介護生活を続ける上で頼りにしているものがひとつあります。それは、ツイッターの「#秘密結社老犬倶楽部」。そこでは、介護が必要な子のママたちが、いろんな投稿をしています。今日の具合や、嬉しいこと、つらいこと、介護のお役立ち情報など、さまざまな投稿を見られます。それを読むと参考になるし、みんな一緒なんだと思うと気が楽になるそうです。
今回は、武蔵くんママから、介護初心者の方や介護中の人にアドバイスをいただきました。それは、とにかく一人で悩まないということです。煮詰まってしまうとつらくなるので、SNSなどを通じて人に悩みを聞いてもらったり、介護の方法を学んだりすることが大切。毎日の介護生活の苦労が半減するということでした。
寝たきり生活が続いて、脚だけでなく、だんだん嚥下機能も落ちてきている武蔵くん。愛情たっぷりのママの介護に助けられ、穏やかな日々を送っています。もし武蔵くんが人間の言葉を話せたら、きっと「幸せだよ」と言うでしょうね。
文/わたなべあや