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国内最後の一例は猫!意外と知らない猫の狂犬病について

2018.01.20

意外と知らない猫の狂犬病について

唐突だが、猫も狂犬病にかかるのか? 答えは、「イエス」。

狂犬病と聞くと病名に「犬」の字が入っているだけに、どうしても犬のイメージが強く、中には犬だけが問題になる病気でしょ?と思っている人もいるかもしれないが、猫も狂犬病にかかるのだ。

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狂犬病は哺乳類であれば感染する可能性があり、犬はもちろん、オオカミやコヨーテ、ジャッカル、猫、アライグマ、キツネ、スカンク、マングース、家畜などの他、人も感染する人獣共通感染症なのである。致死率はほぼ100%とされ、感染症法においては4類感染症に分類されている(リスクが高い順に1類~5類に分けられている)。(*1、*2)

余談ながら、スティーヴン・キング原作のホラー小説『クージョ』では、狂犬病にかかった犬に襲われる家族の恐怖を描いているが、問題となる犬はコウモリから狂犬病をうつされた設定になっている。

犬は人にとってもっとも身近な動物であり、狂犬病にかかった時の人へのリスクが高いと考えられるためか病名に「犬」の字が使われているが、狂犬病は症状の1つに水を飲もうとすると痙攣を起こし、まるで水を怖がるように見える(人が感染した場合)ことがあり、そのために恐水症(恐水病)と呼ばれることもある。犬の身からすると、なんとも迷惑なネーミングだと言うことだろう。

それはともかく、約100年前の文献には、以下のような一文があった。

「…狂犬に咬まれた狂犬病を発し居る猫に咬まれたときは狂犬病と同様の手当をせねばならぬ」
(『自家診療応急手当』高橋政秀著、武侠世界社、大正8年、国立国会図書館デジタルコレクションより引用/旧漢字体で読みにくいため、一部新漢字体に置換)

日本国内においては1957年(昭和32年)を最後に、それ以降、狂犬病の発生はないが、その最後の1例は猫であったという。(*3)

また、海外において主な感染源となる動物としては、以下のようなものが挙げられている。(*3)
◆ アジア、アフリカ → 犬、猫
◆アメリカ、ヨーロッパ → 犬、猫、キツネ、アライグマ、スカンク、コウモリ
◆ 中南米 → 犬、猫、マングース、コウモリ

国立感染症研究所のホームページ内にあるフィリピンでの狂犬病状況の記述の中には、「フィリピンにおける主要な宿主は犬であり、国内に800万頭いると推定されている。それ以外には猫の狂犬病陽性例がもっとも多いが、1例のブタの狂犬病陽性例が報告されている。…」とある。(*4)

その他、人が狂犬病に感染した症例研究では、2011年アメリカのカリフォルニアにおいて、狂犬病と診断されたものの回復をした女の子(8歳)の症例説明の中に、「狂犬病ワクチンの接種を受けていない複数の野良猫と学校で接触しており、感染源であった可能性が明らかになった」という記述が見られる。(*5)

そして、新しいところでは、昨年末のこと、アメリカのカリフォルニア州フェア・オークスにて、死んだ猫を検査したところ、狂犬病の陽性反応があったということで、11月26日~12月2日にかけて、その猫(黒と灰色のタビー)と接触した人は群公衆衛生事務所に連絡して欲しいということとともに、住民に注意が呼びかけられ、ペットオーナーに対しては(狂犬病予防)ワクチンを接種することの重要性を再認識して欲しいという公衆衛生関係者のコメント付きのニュースが流れた。(*6)

このように、猫にとっても狂犬病は決して無視のできない感染症なわけである。

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ところで、猫が狂犬病にかかるとどうなるのか? 狂犬病臨床研究会によると、潜伏期間は2~3週間で、最長51日(犬の場合は2週間~2ヶ月、最長6ヶ月という報告もある)。犬と同じく、発症3日~4日前からウィルスを排泄し始めるという。

経過は3段階に分けられ、前駆期(1日)では、物陰に隠れる、人に異常にまとわりつくなどの様子が見られた後、狂躁期(2日~4日)になるとひじょうに攻撃的となって人や他の動物を襲うようになり、絶え間ない体動、鳴き続ける、不眠、発熱による鼻・口・舌・肉球などの紅潮、流涎、瞳孔の拡大、その他軽度の後躯麻痺などが見られるそうだ。犬との違いは、涎が見られるという点。その後、麻痺期(3日~4日)に入ると、嚥下障害の進行に伴い流涎が増加。意識が低下し、呼吸不全によって死に至るということだ。(*7をもとに要点を抜粋)

こんな恐ろしい病気には感染したくもなければ、感染させたくもないと誰もが思うことだろう。その狂犬病に関して、ここ近年ではいくつかの動きがあった。

2006年(平成18年)、フィリピンから帰国した人(京都市および横浜市在住の計2名)が現地で犬に咬まれ、帰国後に狂犬病を発症し、亡くなっている。(*8)

2012年、台湾において狂犬病が発生。当初はイタチアナグマ3頭だったものが、調査が進むにつれ、2013年11月にはイタチアナグマ215頭、ジャコウネズミ1匹、犬1頭に増えた。このうち犬は狂犬病予防注射未接種の子犬(生後45日)で、同年8月14日に狂犬病に感染しているイタチアナグマに咬まれ、翌日以降関係当局の監視下に置かれていたが、23日後の9月6日に狂犬病を発症し、安楽死措置がとられて短い一生を終えた。(*9)

日本では狂犬病の発生のない清浄国・地域というのを指定しているが、この一件により、2013年7月25日付けでそれまで清浄国・地域に含まれていた台湾を削除。その結果、現在、清浄国・地域として指定されているのは、日本を除き、オーストラリア、ニュージーランド、フィジー諸島、グァム、ハワイ、アイスランドの6地域となった。なお、以前はノルウェー、アイルランド、スウェーデン、イギリスも清浄国・地域に含まれていたが、2012年1月に削除されている。(*10)

その一方で、日本国内への狂犬病侵入防止対策としては、外国からやってきた船に犬が乗っていることもあるため、港湾周辺にて不法上陸犬防止キャンペーンというのが行われることがある。北海道の稚内では、2005年(平成17年)当時、外国籍の停泊中の船から不法に上陸した犬が39頭確認され、そのうち4件の咬傷事件があったそうだが(*11)、2014年(平成26年)のキャンペーンではかなり数が減ったものの、相変わらず不法上陸する犬の姿が見られるという(*12)。このような港湾では、コンテナの中に猫が入ってしまうこともあるようだ。

世界に目を向けると、2015年、WHO(World Health Organization)はOIE(World Organization for Animal Health/国際獣疫事務局)および他の関連機関とともに、2030年までには狂犬病による死亡者ゼロを目指した国際的な枠組みづくりに着手した。WHO東南アジア地域の多くの国が2020年までには地域から狂犬病をなくそうと撲滅キャンペーンを始めている。(*13)

近い将来、狂犬病は撲滅できるのだろうか。

出典および参考資料:
(*1)感染症情報 狂犬病/厚生労働省
(*2)動物由来感染症/厚生労働省
(*3)狂犬病に関するQ&Aについて/厚生労働省
(*4)フィリピンにおける狂犬病の流行状況およびその対策/東北大学大学院医学系研究科微生物学分野 神垣太郎他/IASR, Vol.28 p 69-70:2007年3月号/国立感染症研究所感染症情報センター
(*5)ヒト狂犬病症例集2008-2012年/厚生労働科学研究費補助金 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究事業「ワンヘルス理念に基づく動物由来感染症制御に関する研究」山田章雄他
(*6)Warning for Fair Oaks pets owners as dead cat tests positive foe Rabies / The Sacramento Bee
(*7)狂犬病について 症状と治療/狂犬病臨床研究会
(*8)36年ぶりの狂犬病症例への感染研の対応/国立感染症研究所国際協力室 中嶋建介/IASR, Vol.28 p 81-83:2007年3月号/国立感染症研究所感染症情報センター
(*9)台湾における狂犬病の発生について(2013.9.20)/農林水産省 消費・安全局動物衛生課
(*10)指定地域(農林水産大臣が指定する狂犬病の清浄国・地域)/農林水産省 動物検疫所
(*11)犬などの輸入検疫の現状/動物検疫所企画連絡室企画調整課 池田亜季/IASR, (Vol.28 p 79-80:2007年3月号/国立感染症研究所感染症情報センター
(*12)稚内港における外国犬不法上陸防止対策連絡会議及び不法上陸犬防止キャンペーンについて(羽田空港支所)/動検時報、Vol.47-6, 2014.12 p6 /農林水産省 動物検疫所企画管理部
(*13)Rabies, Fact Sheet, March 2016, Media Centre / World Health Organization (WHO)

文/犬塚 凛

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