犬とオオカミの違いを説明できますか?
ワンコ本人はご機嫌でお散歩しているだけなのですが、苦手な方に怖がられてしまうことってありますよね。特に中型犬や大型犬のママさんパパさんにとっては、悩みのひとつだったりするのではないでしょうか。我が家の愛犬、ボーダーコリーの小雪さんは、「怖い! オオカミだぁ!」なんて、まだ小さな男の子に指さされたことが…(涙)。
確かに、赤ずきんちゃんを食べてしまう悪者=オオカミのイメージから、なんとなく姿が似ている犬にも、その恐怖心が生まれているのかもしれません。そこで今回は、「犬とオオカミはこんなに違うんだよ」ということをまとめて、誤解を解いていきたいと思います(笑)!
犬の祖先は、本当にオオカミなの?
犬たちが人間と一緒に集落で暮らすようになったのは、1万数千年も前からだと言われています。猫たちが人間と暮らし始めたのがおよそ5000年前だとされているので、その倍以上も古い歴史があるのですね。
では、その犬の祖先が果たしてオオカミだったかというと、そこには諸説あります。いわゆる「家畜化」をされ、人間と暮らすようになった犬が、その前に野生だったときは何だったのか。今では絶滅した「野生の犬」がいたという説もあるようですが、化石なども見つかっておらず、証拠に乏しい説のようです。また、ハイエナのように猛獣の食べ残しを漁って生きるジャッカルが、人の食べ残しを食べているうちに家畜化して犬になったのではないかという説もあるそう。
しかし、そうした中でも一番有力なのが「犬の祖先はオオカミ」説。実際に「狼犬」「ウルフドッグ」などと呼ばれるミックスがいるように、オオカミと犬は交配も可能。群れで行動するところも同じですし、頭の骨や骨格、体臭やついている寄生虫などの特徴も似ているのだとか。犬が遠吠えをすることがあるのも、オオカミに通じる習性です。
遠吠えするオオカミ。過酷な野生で生きているだけに迫力が違います。
犬とオオカミは、ここが大きく違います!
とはいえ、もちろん犬とオオカミはまったく違う動物です。何と言っても1万数千年も前から、時間をかけて人間と一緒に暮らすために「家畜化」されたわけですから。その後、何百年もかけてブリードされ、それぞれの犬種が生まれるまでには、大きな隔たりがあって当然でしょう。
まず、オオカミの前足の前面には黒褐色の斑紋があり、しっぽは太め。また首元の肩あたりの毛がたてがみ状に長いというのも特徴のようですが、それで言うとうちの小雪さんも首元の毛は長いような…?
でもオオカミには、パンダ柄のボーダーコリーのような特徴のある模様自体が存在しないのです。白いオオカミや黒いオオカミ、灰色や赤毛などがいるくらいで、犬のように個性豊かな毛色の種類はいません。ワンコたちはどの犬種も、人間が「一緒に暮らしたい」と思ってブリードした結果の姿かたちをしているのです。見比べてみれば、やっぱりオオカミのほうがちょっと怖い感じがするのもそのためかもしれません。
足もオオカミは犬より大きい傾向がありますが、さらに細長いのも特徴。足跡を比べれば、犬のほうが丸みがあって愛らしい形をしています。頭の骨格で言うと、ワンコたちは犬種によってそれぞれ違いますが、シャープなオオカミと比べるとやはり丸みを帯びている傾向があります。オオカミは鼻先から頭部にかけてまっすぐですが、犬は目のあたりにくぼみがあるのも家畜化された特徴なのだとか。
頭も大きく、迫力があるオオカミ。しかし体との比率で考えると、犬の方が体の大きさに対して頭が大きめなのだとか。そんなところも、ワンコが愛らしく見える理由なのかもしれませんね。
そして最も違うのは、やはり歯のたくましさです。オオカミの歯は犬よりも大きく、獲物の肉を引き裂くための牙が発達しています。それに比べるとワンコたちは、特に下あごの骨や歯が小さく可愛らしいのがわかるでしょう。
ドッグスパ温泉につかる小雪さん。歯もオオカミより怖くないでしょう…?
オオカミの遺伝子に最も近いのは、なんとあの犬種!
ワンコたちは、しっぽをぶんぶん振って全身で喜びを表してくれますが、オオカミとはこのしっぽの動きにも少し違いがあるようです。平常時、オオカミのしっぽは上がっても下がってもいない中間の位置に置かれるのだとか。しっぽを高くあげるのは、喜びというよりも何か興味をそそるものがあるか、威嚇の意味のほうが強いようです。
平常時のオオカミのしっぽは、こんな感じ。堂々たる姿です。
ちなみに、犬の交尾期は年に2回ありますが、オオカミたちは年に1回だけで、一度につがいになるのは一匹だけという一夫一妻制。その相手と子供が作れる限り、一途なところがあるのだそうです。
いろいろな違いを紹介してきましたが、実は調べていて一番びっくりしたのは、その遺伝子。オオカミとさまざまな犬の遺伝子を見比べてみたところ、なんと一番オオカミに近い遺伝子を持っているのは、今や世界的に人気爆発中の「柴犬」なのだそうです…!あんなに愛らしいワンコがオオカミと近い遺伝子を持っているだなんて、驚きですよね。
この笑顔。柴犬の遺伝子がオオカミに近いだなんて、とても思えません…!
文/中西 未紀