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仲間を亡くした犬や猫が抱える、ペットロスならぬ「仲間ロス」について

2017.12.28

ペットロスならぬ「仲間ロス」について

何を隠そう、筆者は深いペットロスを抱えたままに生きている。時に「ペットロスを乗り越える」などという言葉を目にすると、なにをわかったふうなことを言ってくれるんだと心のさざ波が荒波に変わってしまう自分を抑え難い。ペットロスはとても繊細な心理で、自分の心さえ扱いきれないのに、同じペットロスを抱える相手だとしても、人さまの心の内を察するのはなかなかに難しいものだ。

そこでふと思った。人のペットロスというのは度々取り上げられることがあるが、ペットが複数いたとして、同居する仲間を亡くした犬や猫たちにはどのような変化があるのだろう? ペットロスならぬ、“仲間ロス”のようなものはあるのだろうか? と。

仲間ロスの調査を実施

実は、ニュージーランド・コンパニオン・アニマル評議会およびオーストラリアのクィーンズランド大学からなる研究チームが、まさに同居する仲間を亡くしたペットの行動変化をテーマにしたアンケート調査を行い、その結果が昨年の11月にオンラインAnimalsにて発表されている(*1)。このようなテーマはたいへん身近でありながら、意外に取り上げられることが少なく、ユニークな調査と言えるのではないだろうか。

その調査のため、ニュージーランドではオークランドのSPCA(動物虐待防止協会)および100軒の動物病院、一方オーストラリアにおいてはニュー・サウス・ウェールズ州やクィーンズランド州、ヴィクトリア州のRSPCA(王立動物虐待防止協会)の協力によりアンケートが配布され、ニュージーランドからは164、オーストラリアからは142の回答が寄せられた中から不適合のものを除いた279の回答によって分析された。結果的に対象は犬と猫になっている(死亡ペット356頭+生存ペット414頭=計770頭)。

アンケートの質問には「亡くなった同居ペットの遺体を残ったペットは見たかどうか。見たとしたなら、どう反応したか」というものの他、「食欲」「睡眠」「鳴き声・吠え声」「排泄」「攻撃性」「情動」「テリトリー」というカテゴリーが設けられ、「変化があった場合にはその持続期間」といった質問も含まれる。

分析の結果、同居ペットが亡くなった場合、残された犬猫の75%(犬159頭、猫152匹)に少なくとも1つは行動の変化が見られたそうだ。

犬の場合では、30%にあたる犬が亡くなった同居ペットが大好きだった場所を探し回る一方、そうした場所を避けるケースも10%あり、どこかに隠れるというケースも14%ある。

寂しくなるのか、以前より愛情を求めるような様子を見せるケースは61%と半数以上にのぼり、そのうち、より飼い主や仲間に依存傾向を表すケースは26%。逆に愛情をあまり求めなくなる、接触することを拒否するというケースは13%あり、人間同様、性格や年齢、環境、相手や飼い主との関係性などによって心理は微妙ということなのだろう。どちらにしても情動的な変化は実に74%の犬に見られる。

食事の量(35%が低下傾向)や食べるスピード(31%が低下傾向)は、両方を平均すると約60%程度の犬は変化を見せていない。

また、34%の犬では寝ている時間が増えているが、8%は逆に減少しており、少なくとも42%の犬は睡眠に影響が出ているということになる。その他、これまで寝ていた場所を避けるというケースが15%あるというのは、亡くなったペットがいた場所を避ける、他との接触を拒否するというケースとの関連性を感じさせる。

鳴き声・吠え声を出す割合(27%)や大きさ(19%)が増加するケースがある一方で、少ないながら10%程度は減少するケースも。

各項目中、もっとも変化が見られたのは、トイレの回数が増えた(40%)だった。逆にもっとも変化が見られなかったのは人や他の動物に対する攻撃性で、90%以上の犬が普段と変わらない。

仲間ロスはフードを食べる速度が遅くなる?

猫の場合、犬と比較して食事の量や食べるスピードが低下するのはそれぞれ21%、12%程度で、寝ている時間は76%が変化していない。しかし、これまで寝ていた場所を避けるというケースは犬同様に15%ある。

鳴き声を出す割合(43%)や大きさ(32%)に関しては猫のほうがより増加傾向にあり、他の動物への攻撃性に関しても犬の倍の12%が増加したと答えている。

また、排泄行動や、「より愛情を求めるようになったか」「接触を拒否するか」といった情動に関しては犬とほぼ似たような結果になっているが、「亡くなったペットがいた場所を避ける」というのは犬の半分の5%で、「普段より高い位置(空中で)何かを探す素振りをする」というのは犬より高く13%になっている。

なお、同居しているのが同じ種同士とは限らないわけで、犬と猫のペアもある。組み合わせによる比較では他の項目において大きな差は見られなかったが、ただ一点、同居犬を亡くした犬では、同居猫を亡くした犬と比較して、よりフードを食べるスピードが低下する傾向にあったそうだ(*1)。

気になることの1つは、そうした行動の変化がどのくらい続いたのか?ということ。犬の場合、情動と睡眠に関しては2ヶ月~6ヶ月(中央値)、食欲とテリトリーに関しては2ヶ月以内で、猫では情動行動が2ヶ月~6ヶ月、鳴き声とテリトリーが2ヶ月以内となっている(*1)。

この記事タイトルでは便宜上「仲間ロス」という言葉を使用したが、半年近く行動変化が続くこともあるということは、人のペットロスに似たような感覚もあり得るということなのだろうか? それともその行動がしばらくの間定着してしまったということなのだろうか? う~む…。

ただ、アンケートは擬人化とは言わないまでも、どうしても飼い主の主観が入ってしまっている部分がないとは言えないということと、これらの変化がすべて「悲しみ」によるものとは言い切れないということは注意のしどころだろう。たとえば、寝ている時間が増えたのは、一緒に遊ぶ相手がいなくて体を動かすきっかけが減ったことによるという可能性も考えられる。

複数の犬がいた筆者の知人宅には、同犬種のペアがおり、メス犬はいつもオス犬のあとをついて回り、とても仲がよかったが、オス犬が亡くなってからというもの、メス犬はみるみる元気をなくし、持病の発作を繰り返すようになったという話だった。この場合も悲しみからくるものなのか、たまたま持病が末期に近づくタイミングだったのかは実のところわからない。

しかし、情動的な行動変化が多くの犬や猫に見られること1つをとっても、彼らが仲間の死に影響を受けることは確かだろう。より愛情を求め、かつ吠え声・鳴き声が増加したケースでは分離不安も見られたという。少なくとも、愛犬愛猫を亡くした飼い主、そして仲間を亡くした犬や猫、その死の悲しみを分かち、互いに支え合える仲間であり続けることは間違いがないと思う。

参考資料:
(*1)Owners’ Perceptions of Their Animal’s Behavioural Response to the Loss of an Animal Companion / Jessica K. Walker, Natalie K. Waran, Clive J. C. Phillips / Animals 2016, 6(11), 68, DOI: 10.3390/ani6110068

文/犬塚 凛

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