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何度も同じことを繰り返す犬…。それって「強迫神経症」かも。

2017.12.06

犬の強迫神経症について解説

外出する時に、「玄関の鍵を閉めたっけ?」と気になり、もう一度確認をするといったことは誰しも経験があるのではないだろうか? ところが、それが気になって何度も同じことを繰り返すようになると強迫神経症または強迫性障害(Obsessive-compulsive disorder / OCD)という病気だと言われる。

たとえば、あるものが不潔な気がして触れない、触ったとしてもその後に何度も繰り返し手を洗う、ものの数や回数を何度も確かめないと気が済まない、など。重症になると周囲の人間にも同様のことをするよう求めたり、鬱病を併発したりすることもあり、本人にとっては辛い病気となる。

これは人の病気であるが、犬にも似たような症状が出ることがある。一般的に常同行動または常同障害と呼ばれ(犬の強迫性障害Canine compulsive disorder / CCD)、主に以下のような症状が見られる。

    • 同じ場所を行ったり来たりと繰り返す。または、同じ場所をぐるぐると歩き続ける。
    • 自分の体の一部(足先や脇腹など)を舐め続ける。または、カプカプと噛み続ける。

⇒ 自分の体の場合、そのことによって炎症を起こしたり、傷になったりしていることがある。

    • 自分のしっぽを追い駆けてぐるぐると周り続ける。または、自分のしっぽやお尻のあたりを気にし続ける。
    • 空中に何かあるように追い続けたり、カプッと噛むような仕草を続けたりする。
    • まるで自分に向かって吠えているかのように吠え続ける。など

このような神経症状は何らかの不安やストレスが要因になっていることが多いと言われるが、犬は人にとって身近な動物であることもあってか、モデル動物として人の強迫神経症の研究に用いられることがある。

マサチューセッツ工科大学とハーバード大学からなるブロード研究所(遺伝子医学)の研究チームは、人、犬、マウスにおける強迫神経症に関連する608個の遺伝子を同定し、さらに調べたところ、4つの遺伝子が人の強迫神経症に強く関連をもっていることがわかったそうだ(*1, 2)。

それらの遺伝子は脳の特定の伝達経路に作用し、たとえば「手を洗う」という行為を一回行えば、そこでその行為には「終了」とブレーキがかかるところ、遺伝子に変異があった場合、うまくブレーキがかからずに、何度も同じ行為を繰り返してしまうらしい。

とは言っても、遺伝子変異をもっているからといって、必ずしも発症するというわけではなく、その可能性が高くなるということのようだ。

この研究では、犬とマウスに関しては強迫神経症にもっとも強く関連する遺伝子について5つとあるが、データ的な細かい差異はともかく、研究者は、「犬は驚くほど人に似ている」と言っている。

犬の場合は、強迫性障害の発症頻度が他犬種に比べて高いとされるドーベルマン・ピンシャーを用いての研究もあったが、それではセロトニン受容体遺伝子座が強迫性障害の重症度に関連するという他、やはりいくつかの遺伝子の関与が考えられるとしていた(*3)。

いずれにしても、強い、もしくは長期にわたるストレスや不安、恐怖などが発症のきっかけになることがあるということは人でも犬でも同じで、もしそのような症状が見られ、心配な時には、専門的な治療を受けるとともに、ストレスや不安の原因を探り、可能な限り排除できるものは排除するよう努力することも大切となるだろう。

ちなみに、犬にとってストレスや不安になり得るというと、以下のようなものが考えられる。もちろん、以下のようなことをストレスと感じないタイプの犬もいることはご承知おきを。

    • 散歩や運動不足。逆に過剰な運動。
    • 人との接触が少ない。逆に過剰である。
    • 飼い主の犬に接する不適切な態度(すぐに怒る、体罰虐待、荒々しい態度など)。
    • 飼い主が変わった。
    • 家族間にケンカが多い。
    • 分離不安。
    • 寝場所が落ち着けない。
    • 引越し。
    • 騒音。
    • 狭い場所にずっと入れられっぱなしである。
    • 同居犬や同居猫が増えた。
    • 子どもが産まれた。
    • 病気やケガによる痛み。など

なお、症状が見られる時には、飼い主としてはついイライラしてしまうかもしれないが、叱ったり、騒ぎ立てたりすると余計症状がひどくなってしまう可能性があるので、そのようなことは避け、犬にとって楽しいことや、おやつを詰めた犬用の知育玩具を与えるなど気を紛らわせてあげられるようなことをして過ごすのがいいのではないだろうか。

強迫神経症は遺伝子が関与しているとしても、症状を軽減させることもできれば、状況によっては悪化させてしまうこともある。早期に対処をすることはもちろん、ストレスサインにも早めに気づいてあげたいものである。

参考資料:

(*1)Integrating evolutionary and regulatory information with a multispecies approach implicates genes and pathways in obsessive-compulsive disorder / Hyun Ji Noh et al. / Nature Communications 8, Article number: 774(2017), doi:10.1038/s41467-017-00831-x

(*2)Search Of DNA In Dogs, Mice And People Finds 4 Genes Linked To OCD / npr

(*3)Genomic risk for severe canine compulsive disorder, a dog model of human OCD / Dodman, N. H. et al. / Int. J. Appl. Res. Vet. Med. 14, 1–18 (2016)

文/犬塚 凛

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