Dr.林のにゃんこの処方箋
猫を動物病院に連れて行くコツ
猫ちゃんを動物病院に連れて行く場合、結構大変で、猫ちゃんにも飼い主様にもストレスになってしまうことがあります。今回は動物病院にスムースに連れて行く方法をお話しします。
1)キャリーの選び方
ちなみにキャリーとはプラスチックや布でできていて猫を安全に移動する入れ物のことです。
ペットショップには様々な形や素材のキャリーが売っていますが、なんといっても天井と前面(後面)が空く、ハードタイプのものがベストです。真ん中でふたとボトムをわけられるタイプのものだとなおいいですね。こういうタイプのキャリーだと、病院で怖がっている猫さんやどこかに痛みがある猫さんを、無理に外に引っ張り出さずにボトム部分にいれたまま診察することができます。
近頃はビニール製や布製のおしゃれなキャリーも出回っていますが、車で来院するにしても、やはりシートベルトでしっかりと固定して猫さんの安全を守らなければならないので、頑丈なプラスチック製のものにしてあげてもらいたいです。また、車に乗ることに慣れていない猫さんのほうが多いと思いますので、見慣れない風景などにおびえてしまいます。キャリーにはブランケットやバスタオルをかけてあげると良いでしょう。
こういったキャリーがベストです(出典:https://www.richell.co.jp/shop/pet/detail/s0000000050)
2)キャリーで快適に過ごせるように
動物病院に行くのにキャリーに入ってもらう必要があるわけですが「キャリー=嫌!」「怖いところに連れてかれる!!」と、多くの猫ちゃんは思っているかもしれません。
だからこそ、キャリーは快適で、自分から入りたくなっちゃう場所と思ってもらえるようにしたいものですね!そうするためには
①キャリーを猫ちゃんのお部屋にいつでも置いておく
病院に行くときだけキャリーを出してくるようだと、キャリーが出てくると警戒してしまいます。いつもいる場所にいつでもあれば、嫌なこととの関連ができにくくなります。
②お気に入りの毛布、家族の服などを入れておく
普段と同じ場所の匂いがすると、いざ移動の時も安心してもらえます。
③おやつやおもちゃをキャリーの中に入れておく
普段からキャリーの中に猫ちゃんの好きなおもちゃなどを仕込んでおきましょう。もしかしたら、誰もいない時にもこっそり入って遊んだりしてくれるかもしれません。
とはいえ、猫ちゃんたちがキャリーに対する警戒心をなくしてくれるのはなかなか大変です。もしかしたら何日も、何週間もかかるかもしれません。静かに、辛抱強く、時間をかけてわかってもらう必要があります。キャリーと猫ちゃんが仲良くなれるように、特別なキャリーの工夫を凝らしてみましょう。上手にキャリーに入ることができたらご褒美をあげたりして、キャリー嫌いを克服しましょう!
3)気の進まない猫をキャリーにいれるには
キャリーに慣れてくれた子は心配なく、動物病院に連れて行けますが、病気は突然やってきます。まだキャリーに慣れていない猫さん達はどのようにしたら病院へ連れていけばよいのでしょうか。
その方法は2つあります。
①ほとんど隠れる場所のない小さな部屋にキャリーを入れてお部屋のドアを閉める。ゆっくりと穏やかに、けっして猫さんを追いかけたりせずお菓子やおもちゃを使ってキャリーの中に誘導してみる。
②歩いて入ってくれない場合は上が開くキャリーであれば上部を取り外し置いておき猫さんをゆっくりとそこへ運ぶ、あるいは歩いてはいってくれるのを待ってから上部のふたを静かにかぶせる。
さらには、キャリーの中にいつも猫さんがつかっているお布団をいれたり、猫フェイシャルフェロモンスプレー(フェリウェイ)をキャリー使用の少なくとも30分前に吹きかけておくことも穏やかに移動する手助けをしてくれます。
どの方法が自分の家の猫さんにあっているのか事前に試してみるのもいいかもしれませんね。
4)病院の待合での過ごし方
よほど病院慣れしている猫さん以外は、病院の待合室はストレスフルな空間と感じています。ほかの猫のにおいや鳴き声、聞きなれない人間の声、機械の音、処置室から聞こえてくる叫び声などなど。
待合室ではなるべくほかの猫さんから離れた場所を選ぶようにし、キャリーのドアを飼い主さんのほうに向けてあげます。また、バスタオルをキャリーにかけて外が見えないようにしてあげるのも良いでしょう。日頃、猫さんが好んでいるタオルなど臭いが付いてるものがあればより落ち着きます。
もし、待ち時間が長くなりそうな場合は、車の中で待たせてもらうことも提案しましょう。
動物病院に連れて行くことが、お互いのストレスにならないようにいろいろな工夫をしてみてくださいね。
文/林 文明(はやしふみあき)
1988年北里大学獣医学修士課程修了。1998年コロラド州立大附属獣医学教育病院に留学し、欧米の先進動物医療を学ぶ。現在は、山梨・東京・ベトナムで5つの動物病院を経営。獣医師、日本動物医療コンシェルジュ協会代表理事。最新著書『愛犬を長生きさせる食事』(本体1000円+税)好評発売中!
◆日本動物医療コンシェルジュ協会
http://www.jamca.gr.jp/
◆ノア動物病院
http://www.noah-vet.co.jp/