青山尚暉のわんこと行くクルマ旅
ホンダ・シャトル
“わんこと行くクルマ旅”にとってふさわしいクルマとは?そんな疑問に答えるクルマのボディタイプ別メリット・デメリットを紹介します。
●セダン/ハッチバッグ
トヨタ・カムリ(HV)
ホンダ・グレイスHV
トヨタ・プリウス
メリット
1. 一般的に車高が低く低重心で足回りを固める必要がなく、乗り心地面に優れる
2. ミニバンやSUVにくらべ空気抵抗に優れ、高速走行中の風切り音が小さく、静か
3. 後席のシート位置が低く、愛犬を乗り降りさせやすい
スバル・インプレッサ
スバルXV
デメリット
1. 愛犬を乗せる場所が後席に限られる
2. 一般的なセダンはシートアレンジ性が制限され、人、荷物、犬の乗車フォーメーションの自由度がない
ハッチバックのインプレッサなどなら多彩なシートアレンジ可能
ミニクラブマン
セダン/ハッチバック選びのポイント:愛犬は後席のみの乗車なので、後席の座面が比較的フラットで、後席エアコン吹き出し口、リヤサイドウインドーにサンシェードがあるクルマが理想。後席を片側または両側倒したときにフロアがフラットになれば、より自由な乗車フォーメーションが可能
犬に優しい後席エアコン吹き出し口
●ステーションワゴン
マツダ・アテンザ
メリット
1. セダン同様、一般的に車高が低く低重心で足回りを固める必要がなく、乗り心地面に優れる
2. セダン同様、ミニバンやSUVにくらべ空気抵抗に優れ、高速走行中の風切り音が小さく、静か
VWパサートヴァリアント
アウディA4アバント
3. セダン同様、後席のシート位置が低く、愛犬を乗り降りさせやすい
4. 愛犬を乗せる場所は後席、ラゲッジ、後席を格納した拡大ラゲッジの3カ所あり、人、荷物、犬の乗車フォーメーションの自由度がある
アウディA4アバント
ボルボV90
5. 世界のステーションワゴンのラゲッジフロア地上高の平均値は約620mm。開口部に段差のない車種も多く、犬の乗車性に優れる
6. 車種によって居住スペースとラゲッジを仕切るパーテーションネットが備わり、居住スペースへの愛犬の飛び出しが防止できる
7. 車種によってラゲッジフロアボードをA字に立てられ、居住スペース後方に荷物と分けられた愛犬専用スペースが確保できる(VWゴルフ7ヴァリアント)
8. セダン同等のフォーマル感、高級感があり、ペットと泊まれる高級リゾートホテルのエントランスにも似合う
ボルボV90@レジーナリゾート蓼科
ステーションワゴン選びのポイント:居住スペースとラゲッジを仕切るパーテーションネット、後席エアコン吹き出し口、リヤサイドウインドーにサンシェードがあるクルマが理想
BMW5シリーズツーリングはガラスハッチ付き
後席エアコン吹き出し口
ボルボV90はBピラーにもエアコン吹き出し口が
サンシェード付きの BMW5シリーズツーリング
デメリット
1.4~5人乗車時、大きな荷物があると、ラゲッジに荷物と犬が同居しなければならない
●SUV
三菱アウトランダーPHEV(旧タイプ)
メリット
1. 最低地上高に余裕があり、4WDなら天候、路面を問わないオールロード性能を発揮し、犬が大好きな白銀の世界、悪路の先にある場所へも安心して行ける
2. 車高が高いため、走行中、犬も外の景色を楽しみやすい
トヨタC-HR
高級リゾートホテルにも似合うボルボXC90
3. ステーションワゴン同様、愛犬を乗せる場所は後席、ラゲッジ、後席を格納した拡大ラゲッジの3カ所あり、人、荷物、犬の乗車フォーメーションの自由度がある
トヨタC-HRの後席片側を倒して愛犬スペースに
トヨタC-HRはラゲッジに大型犬と小型犬が乗れる
4. クリーンディーゼル車の選択肢が広く、長距離ドライブでの経済性に優れる(最新のクリーンディーゼル車は想定外に静かに走ります)
デメリット
1. 車高、フロアが高いため、後席(シート地上高はセダン、ステーションワゴンの550~600mm に対して、650~770mm)、ラゲッジに愛犬を乗せるのが大変なケースも(ステーションワゴンの平均値620mmに対して、650~800mm)。
2. 車高が高いため、カーブなどで姿勢変化が少なくない車種もある(G-ベクタリングコントロールを備えたマツダCX-5、CX-3のように安定した走りが可能な車種を選ぶとよい)
マツダCX-5
CX-5はG-ベクタリングコントロールで山道も安定。マリアのネックレスの揺れ最小限
3. SUVはセダンやステーションワゴンにくらべ車重が重く、悪路走破性に優れた4WDだと燃費性能でやや劣る
SUV選びのポイント:愛犬を乗せてドライブする機会が多いなら、できるだけフロアが低く、介助して乗せる場合も楽な車種を選びたい。また、HV、PHEVタイプを選べば、より静かでスムーズな犬にも優しい走行が可能
●ミニバン
トヨタ・エスティマHV
トヨタ・ノア
ホンダ・フリード
メリット
1. スライドドアミニバンなら、左右にクルマが止まっているような駐車スペースでもスライドドアから愛犬を乗り降りさせやすい
2. 愛犬の乗降はスライドドア、ラゲッジの両方から行える
3. ワンステップフロアのスライドドアミニバンの多くはフロアが低く、段差がなく、小型犬、シニア犬でも自身で乗り降りしやすい
トヨタ・ノアHV
ホンダステップワゴンのサブドア
ステップワゴンはフロアが低い!!
4. 中型以上のミニバンの多くは2/3列目席用のエアコン/クーラーコントローラー、吹き出し口が完備され2/3列目席、3列目席を格納し拡大したラゲッジフロアに乗った愛犬も1年中、快適にドライブを楽しめる
トヨタ・エスティマ
5. ラゲッジフロアの低いミニバンも多く(500mm~)、ラゲッジ側からの乗降も楽々
6. 人、荷物、愛犬の乗車フォーメーションの自由度がもっと高い
ホンダステップワゴンのシートアレンジ例
ホンダ・フリードの3列目席に大型犬が乗車
7. 4~5人乗車でも、愛犬を3列目席、クッションを敷いた2列目席足元などに乗せられるため、ステーションワゴンと違い、ラゲッジを純粋に荷物スペースとして使える
ホンダステップワゴン
トヨタ・ノアの3列目席に犬と飼い主が乗車
8. 車高が高いため、走行中、犬も外の景色を楽しみやすい
デメリット
1. 人、荷物、愛犬の乗車フォーメーションの自由度に優れるものの、2~4人家族だとクルマが大きすぎ、普段、無駄な空間をしょって走っている感覚がある
2. セダン、ステーションワゴンにくらべ、特に両側スライドドアミニバンは車重が重くなる傾向にあり、燃費性能ではセダン、スターションワゴンにやや劣る
ミニバン選びのポイント:愛犬乗車前提なら、ミニバンならではの後席エアコン吹き出し口が装備される車種を選びたい。2列目席が愛犬の専用席の場合、ベンチシートを選ばずとも、キャプテンシートを中寄せしセミベンチタイプになる車種がある。また、3列目席が床下格納できる車種は、大容量ステーションワゴンとしても使えて便利
2/3列目席のエアコン吹き出し口
トヨタ・ノアの2列目キャプテンシートを中寄せして乗車
●HV PHV(セダン、ステーションワゴン、SUV、ミニバンを含む)
トヨタ・エスティマHVとプリウス
メリット
1. 出足、クルージング状態ではモーターだけで走れるEVモードに入る場面も多く、全域でモータートルクによる滑らかかつ静かな走行が可能。聴覚に優れた犬にとって乗り心地よく快適なドライブ空間となりやすい
ドッグフレンドリーなホンダ・オデッセイHV
トヨタ・カムリの後席は静かで犬も快適
2. PHVの場合、軽井沢のような充電設備の充実したドッグフレンドリーリゾートを訪れれば、リゾート地でモーターだけの愛犬も喜ぶ静かでスムーズな走行が可能
3. 100V/1500W電源が備わるHV、PHVモデルなら(ガソリン、クリーンディーゼル車にはなし)、車内でコーヒーメーカーや簡易電子レンジなどの家電品の使用が可能。ドッグカフェがなくても、車内が“どこでもドッグカフェ”になる。災害時に愛犬連れで避難所に入れないような状況下でも愛犬といっしょの“マイ避難所”として威力を発揮してくれる
4. ピュアEVと違い、電欠の心配がないため、愛犬のペースでドライブができる(充電スポットを探さなくてもよい)
5. アイドリングストップ中もエアコンが効くインバーターエアコンを採用しているため、冷風が途切れず、夏、暑がりの犬も快適にドライブを楽しめる(ガソリン車でも蓄冷式エアコン装着車なら、アイドリングストップ中も一定時間、冷風が出る)
トヨタ・ノアHVの後席エアコンコントローラー
デメリット
1. HVバッテリーの搭載位置、搭載量によって、後席が2座になり、ラゲッジのフロアが高まるなどして、中大型犬の乗車がしずらい車種もある
プリウスPHVの後席は2座でセンターコンソール付き
プリウスPHVの後席。飼い主+小型犬なら快適に乗車できる
2. 愛犬とのドライブには関係ないが、同車種のガソリン車にくらべ割高な価格
HV/PHV選びのポイント:PHEVのSUVは地震大国日本ではある意味、最強のドッグフレンドリーカー。悪路に強く、電源供給車としても機能し、愛犬連れで避難所に入れない場合も安心。
尚、軽自動車については、改めて「小型犬から大型犬まで乗れる」ドッグフレンドリー軽・・・を取り上げる予定です。
撮影/横山 快
文/青山尚暉(あおやま・なおき)
ドッグライフプロデューサー、モータージャーナリスト。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。90年代にペットと泊まれる宿の覆面調査「わんわんミシュラン」を8年間連載。愛犬とのドライブ、ドッグフレンドリーカー選び、ペットと泊まれる宿に関する業界第一人者。Web、専門誌、一般誌、ムック、ラジオ番組などで「愛犬との快適安心な旅スタイル」を提言中。現在、ラブラドールレトリーバーのマリアと、ジャックラッセルのララ(どちらもレスキュー犬)と暮らしている。
小学館PETomorrowでは「わんこと行くクルマ旅」「今月のドッグフレンドリーカー」などの連載記事を担当。小学館ブックピープル、愛犬と行く旅、ONE BRAND(現在休刊)、レスポンス、カートップなどでも愛犬とのライフスタイル、ドライブ旅行、ペットと泊まれるホテル関連の記事を連載、展開中。インターペット2017では「ペットとお出かけ快適ドライブ術」トークショーの司会を務める。2016年4月には愛犬とのドライブ旅行の集大成となるムック本『愛犬と乗るクルマ』が発売されている。