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国によって異なる犬の避妊去勢手術の考え方

2016.12.26

国によって異なる犬の避妊去勢手術の考え方

german shepherd

あなたの愛犬は避妊去勢手術をしているだろうか? 一口に避妊去勢手術と言っても、メリットとデメリットがある。

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日本やアメリカなどでは、将来的になるかもしれない性ホルモンに関連する病気を予防するため、もしくは望まない繁殖を避けるといったことを目的に避妊去勢手術が選択されることが多く、またそれが推奨されている感がある。

一方、ヨーロッパ在住の方に話を聞いてみると、スウェーデンに代表されるようなヨーロッパの国ではむしろ逆で、避妊去勢手術は極力避ける傾向にあり、手術を施すということは、飼い主が自分の犬をきちんと管理できないことの表れでもあるという考え方が主流になっているという。

どちらが正しいというわけでもなく、お国柄というか、犬とのつきあい方の違い、また犬環境の違いなど諸々の理由によって考え方が分かれるといったところだろう。

さて、ここ10年ほどで避妊去勢手術が犬の健康に及ぼす影響についていくつかの研究調査が行われたということであるが、この度、Veterinary Medicine and Scienceに発表されたBenjamin Hart教授(UC Davis School of Veterinary Medicine)らのジャーマン・シェパード・ドッグを対象にした新しい研究調査によると、1歳になる前に避妊(卵巣摘出)去勢手術をした犬では、特に前十字靭帯断裂のような関節障害のリスクが約3倍になることが見い出されたとのこと。

この調査では、14年半分(2000.1.1~2014.6.30)にわたる動物病院の記録を用いて1,170頭のジャーマン・シェパード・ドッグ(オス犬705頭=未去勢460頭、去勢済245頭/メス犬465頭=未避妊172頭、避妊済293頭)を避妊去勢していない犬、避妊去勢手術を生後6ヶ月前に受けた犬、生後6ヶ月~11ヶ月の間に受けた犬、生後12ヶ月~23ヶ月(1歳)の間に受けた犬、2歳~8歳の間に受けた犬、の5つのグループに分けて分析。

その結果から主なものを抜粋してみると、以下の表のようになる。

調査対象のジャーマン・シェパード・ドッグにおける各疾患の発症率
スクリーンショット 2016-07-15 11.50.58
Neutering of German Shepherd Dogs : associated joint disorders, cancers and urinary incontinence(Benjamin L. Hart et.al.)を参考に作成

オス犬の場合、1つ以上の関節障害があったのは、去勢手術をしていないオス犬では約7%であるのに対して、生後6ヶ月未満で去勢手術をしたオス犬では約21%、生後6ヶ月~11ヶ月で去勢手術をした犬では約16%、これを1歳前に去勢手術をした犬として見ると17.8%だったそうだ。

同じく、メス犬では避妊手術をしていない犬では約5%であるのに対して、生後6ヶ月未満で避妊手術をした犬では約13%、生後6ヶ月~11ヶ月で避妊手術をした犬では約17%、1歳前に避妊手術をした犬として見ると16.4%であった。

また、乳腺腫瘍について見てみると、生後6ヶ月未満で避妊手術をした場合は0%であるが、それ以降徐々に増え、避妊手術をしていないメス犬では4.1%となる。

次いで、尿失禁では逆に避妊手術をしていないメス犬では0%で、避妊手術をした時期が若くなるにつれパーセンテージが高くなる傾向にあり、発症平均年齢は5.2歳となっている。

実は、同じBenjamin Hart教授らによって2014年に発表された同様の研究調査では、ラブラドール・レトリーバーの場合、1歳前に避妊去勢手術をした犬では1つ以上の関節障害をもっている率が約2倍となり、ゴールデン・レトリーバーの場合は約4倍になるという結果が出ている。

性ホルモンは骨の成長軟骨板の閉鎖と大きく関連があるそうで、早期に避妊去勢手術を施すことによって骨や関節の成長に影響が出るのではないかということが注目されているようだ。

これらの数字だけを見ると、飼い主としては、特に病気を予防することを目的に避妊去勢手術を考えるとするなら、メス犬の場合、乳腺腫瘍と関節障害とどちらを優先させるかと悩みたくもなるだろう。

研究者は、「関節障害のリスクを減少させるために、この研究調査が、いつ子犬に避妊去勢手術をしたらいいのかを決めるガイドラインになることを望みたい」と言っている。手術をするのであれば、そのタイミングというのは考えてあげる必要があるのだろうが、ただ、多くの犬種について調査が行われたわけではない現段階においては、更なる情報を待ちたいものだ。

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参考資料:Neutering of German Shepherd Dogs : associated joint disorders, cancers and urinary incontinence / Benjamin L. Hart1,*, Lynette A. Hart2, Abigail P. Thigpen2 and Neil H. Willits2 / Version of Record online: 16 MAY 2016 DOI: 10.1002/vms3.34 / Veterinary Medicine and Science
Early Neutering Poses Health Risks for German Shepherd Dogs, Study Finds / UC DAVIS

文/犬塚 凛

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