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始める前に知っておきたい「メタバース」に関する法規制や契約実務の課題

2022.03.07

VR技術等を活用した「メタバース」が、現実世界と併存し得る生活・ビジネスの基盤として注目を集めています。

しかし、メタバースはきわめて先端的な仕組みのため、メタバースの利用に関する法律や契約実務の整備はほとんど進展していない状況です。

今回は、メタバースに関して問題になり得る主な法律問題について、現状の取扱いと今後の展望をまとめました。

1. 「メタバース」とは?

「メタバース」とは、インターネット上の仮想空間のことです。

「超越した」「高次の」という意味を有する「meta」と、「宇宙」を意味する「universe」を組み合わせた造語となっています。

現状運用されているメタバースでは、すでにゲーム・イベント・バーチャル会議などの運営・参加が可能となっています。

VR技術などが近年急速に発展したことから、将来的には現実世界に匹敵する生活・ビジネスの場になっていくのではないかと、多くの人の注目を集めている状況です。

2. メタバースに関する主な法律問題の現状・展望

メタバースは、ボーダーレス(=国境・境界がないこと)の仮想空間として想定されているため、現実世界とは異なるルールが必要になる場面が多数存在します。

しかしメタバースに関する法規制や契約実務は、ほとんど整備が進んでいないのが実情です。

以下では、メタバースについて問題になり得る主な法律問題を4つ取り上げ、現状の法令や契約実務に照らした取扱いと、将来的な展望を検討します。

2-1. 仮想オブジェクトに対する権利の保護

メタバース内では、たとえば仮想土地が売買されたり、仮想土地上に仮想建物が建築されたりするなど、現実世界に近似した「資産(=仮想オブジェクト)」の取引が行われています。

しかし、メタバース内の仮想オブジェクトは「物(=有体物)」ではないため、法律上の所有権の対象になりません。

また、著作権等の知的財産権についても、メタバース内の仮想オブジェクトは対象外となるケースも多いと考えられます。

このように、既存の法律の枠組みでは、メタバース内の仮想オブジェクトに対するユーザーの権利を、現実世界の「所有権」と同程度に保護することは困難な状況です。

メタバースの利用人口が急速に増えていくのであれば、今後は所有権に近似した権利保護の制度導入を検討すべきと考えられます。

2-2. 複数のメタバースに跨ったチート行為への対応

メタバース内では、不正に流通通貨を増殖させたり、有料アイテムをコピーしたりする「チート行為」が行われる可能性もあります。

現状運営されているメタバースでは、チート行為が発見された場合には、サービスの利用規約に基づき運営会社が対応する形となっています。

しかし、将来的にはメタバースの互換性が向上し、複数のメタバース間でアバターや資産などの行き来ができるようになることが見込まれます。

そうなった場合、チート行為に対してどのようなルールを根拠に対応するのかは、今後の検討課題です。

基本的には、特定のメタバース内で行われたチート行為に対しては、そのメタバースの利用規約に基づいて対応するのが適切と考えられます。

しかし、複数のメタバースを跨いでチート行為が行われる可能性もあり、その場合には運営会社の間で、対応権限の分担などが問題になるでしょう。

まずは互換提携を行うメタバースの運営会社間で、個別に対応権限の取り決めを行うのが現実的と考えられます。

最終的には、世界共通のルールが形成されることが望ましいでしょう。

しかし、国境を超えたルール形成のハードルは高く、どこまで統一的なルールを形成できるかは未知数です。

2-3. 越境取引における法の適用

メタバースは一つの仮想空間であっても、メタバースの参加者は様々な国・地域からログインしています。

したがって、メタバース内で行われる取引は、異なる国籍を有する当事者間で行われることも想定されます(越境取引)。

越境取引に関してトラブルが発生した場合、契約内容に加えて、どの国の法律を適用して処理するのかが問題となります(準拠法)。

準拠法についての合意がない場合は、「当該法律行為に最も密接な関係がある地の法」が適用されることになります(法の適用に関する通則法8条1項)。

しかし、メタバース内の取引に「最も密接な関係がある地」とはどこなのか、必ずしも明確ではありません。

準拠法に関するトラブルを回避するには、当事者間で準拠法について合意することが望ましいです。

また利用規約において、当事者間の合意がない場合に適用される準拠法を定めておくことも考えられるでしょう。

3. メタバースの流行に乗じた詐欺にも要注意

過熱的な注目の集まりに乗じて、メタバースに関連した無価値な資産への投資を勧誘する詐欺事例も、一部で見受けられます。

これまで解説したように、メタバースに関する法規制や契約実務の整備は、未だ不十分な状況です。

メタバース関連の投資などを勧誘された際には、ハイリスクかつ悪質業者も多いことを十分に理解したうえで、詐欺に騙されないように注意しましょう。

万が一メタバース関連の詐欺に遭ってしまった場合には、消費者庁・警察・弁護士などへご相談ください。

取材・文/阿部由羅(弁護士)
ゆら総合法律事務所・代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。ベンチャー企業のサポート・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。東京大学法学部卒業・東京大学法科大学院修了。趣味はオセロ(全国大会優勝経験あり)、囲碁、将棋。
https://abeyura.com/
https://twitter.com/abeyuralaw

構成/KUMU

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構成/DIME編集部

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