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日本で最初にととのった人は誰か?110年続くサウナブームの源流と変遷

2022.03.05

サウナ施設で『日本サウナ史』という箱入りの本が販売されているのを見たことがある人もいるのではないだろうか。外箱には『サ道』で知られる漫画家・タナカカツキさんのイラストが配され、印刷も豪華だ。著者はフィンランド政府観光局公式のフィンランドサウナアンバサダーであり、サウナを愛する編集者の草彅洋平さん。

本の値段は3960円(税込)であり「ただものではない」という雰囲気が漂う。だが豪華な造本で、手にとってみれば決して高くはない近年稀に見る愛の詰まった本だ。ページをめくると、「いつ、だれがサウナを日本に持ち込み、広めたのか」という疑問に答えるとともに、埋もれていた日本スポーツ界の偉人たちにスポットを当てている、驚きと喜びに満ちた重厚な一冊はいかに生まれたのか著者・草彅さんにお話を伺った。

サウナのルーツを探して行き着いたのは陸上の本だった

――『日本サウナ史』は363ページにわたり、戦前の文献を紐解き、エビデンスを追求したまさに歴史書だと感じました。執筆のきっかけは何だったんでしょうか。

草彅洋平さん(以下・草彅):現在、サウナブームと言われていますが、その歴史を示す底本がないために、いろんな人が勝手なことを言い、それが独り歩きしていると感じました。そういった自分で調べずに発するフェイクニュース的な言説に対する“怒り”と違和感が溜まっていったのです。「誰も書かないなら、自分が書く」と執筆をスタート。2021年3月に書き始め、8月には出版しました。

――草彅さんは2017年に、まだサウナに注目する人が少なかった頃、下北沢で野外サウナイべント『CORONA WINTER SAUNA』を開催しています。

草彅:早かったですね。あの頃から、日本のサウナの歴史について興味を持ち、4年間かけて断片的に情報は蓄積していたのです。決定的だったのは、2021年3月にサウナーとしてあるバラエティ番組に出演したこと。そこでサウナ=変態的であるような紹介をされてしまった。サウナは水平に広く、垂直に深いカルチャーなのに、私自身に確たる“何か”がなかったために、相手型も単に変態として紹介するしかなかったんですよ。この頃からサウナに恩返しするために、また自分がサウナにとって何者かを証明するために、サウナ史をまとめようと決意したのです。

――サウナの歴史書といえば、『昭和・平成のサウナ史』(中山眞喜男著/日本サウナ・スパ協会技術顧問)が有名です。

草彅:1956年に銀座で開業したサウナ施設『東京温泉』からの戦後のサウナの歴史をまとめている本です。でも私は「もっと前からあったのではないか」と疑問に思っていました。なぜなら、日本には奈良時代から続く岩風呂などの歴史があり、サウナと日本人は親和性が高いと感じていたからです。

そこで、中山眞喜男さんのところに伺うと、貴重な資料であるサウナを特集した雑誌『アサヒグラフ』増刊(1991年10月号)をお貸出しいただきました。そこにハンネス・コーレマイネンというフィンランドの陸上選手が「私が優勝できたのはハードトレーニングとサウナのおかげだ」と発言したことが、全世界に「サウナ」というものを知らしめた最初だと」と書かれていたのです。

参考:ハンネス・コーレマイネン

調べると、戦前に活躍した名選手だとわかりました。同時期に『サウナ健康法 明日を生き抜くためのサウナ学入門』(川崎秀二著/1973年刊)を読んでいたのですが、そこにもコーレ・マイネンの名前が。いずれも、彼が何者かという言及がない。そこで戦前の陸上の本を片っ端から集めて読んでいったんです。

その過程で当時フィンランドが世界の中で1-2位を争うほど、陸上の強豪国だったことがわかりました。日本で一番古くフィンランドについて書かれている本は『芬蘭のランニング』 (竹内廣三郎著/1926年刊)という本です。著者の竹内廣三郎は1928年のアムステルダムオリンピックの陸上競技チームの総監督。この本は日本の選手育成のために、当時の陸上強国・フィンランドの選手のトレーニング方法を視察に行った記録だったのです。

――そこにサウナが出てきたんですか?

草彅:「蒸し風呂」として紹介されていました。旧字で調べなければ! それに気づいてからは、さまざまな文献を検索しやすくなりました。国会図書館や古書店サイトで「蒸し風呂」「芬蘭」で検索すると、様々な文献が出てくる。「サウナ」「フィンランド」ではひっかからないわけですよね。戦前の表記ではないのですから。

本を片っ端から集め、4月はひたすら日本の陸上の本を読破。あのときは、いわゆる「ゾーンに入る」という状態でした。

読むうちに、日本人で初めてフィンランドサウナを経験したスポーツ指導者・岡部平太(1891―1966年)や、日本人で最初に“ととのった”記録を残したスポーツ指導者・織田幹雄(1905―1998年)の存在を知りました。彼らはサウナ史のみならず、日本のスポーツ史における功労者です。彼らの熱意や平和にかける思い、愛国心などは鬼気迫るものがあり、その思想や足跡に魅了されました。

――サウナ史は日本のスポーツ史と並行するというのはこの本を読んで始めて知りました。そこで、埋もれていた偉人たちが出てきたというわけですね

草彅:そうなんです。ほかにもたくさんの偉人が出てきましたが、スポーツとオリンピックとは、とにかく密接ですね。織田幹雄の御子息に献本させていただいたのですが、「良く調べたね」と言われたときは嬉しかったです。報われた感がありました。

『日本のサウナ史』を読んだ人から、「サウナ以外の話が多い!」と言われることもありますが、歴史は複数の人や事象で作られるため、きちんと話を進めると、どうしても話が脱線しがちです。先人へのリスペクトを込めて編んでいった「日本とフィンランドの友情の物語」ということをご理解ください。

僕の本を読めば日本のサウナブームは、110年間前に始まり、形を変えていまなお続いていることがわかるでしょう。つまりサウナは、当時も今も消費されにくいカルチャーなんですね。

戦前から日本のサウナ史を紐解いた草彅さんの注目の施設とサウナの未来とは? 2回目に続きます 

草彅洋平(くさなぎ・ようへい)
編集者・著述家。メディア、イベントなどに精通している。2017 年に下北沢で野外のサウナイべント「CORONA WINTER SAUNA」の企画、運営に携わり、現代のサウナブームの第一人者。フィンランド政府観光局が認めた、公式フィンランドサウナアンバサダー。著書に『作家と温泉』(編著/河出書房新社)、『日本サウナ史』(amami)などがある。

日本サウナ史
CULTURE SAUNA TEAM AMAMI 

取材・文/前川亜紀

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