親の人生設計とのバランスを考えると、教育費は子どもが中学校を卒業する15歳ごろまでに貯め終えられるとベストです。
反対に、子どもが15歳になっても教育費のメドがたたない状況だと、その後の親の生活に支障がでる可能性が高くなります。
備えるべきは大学費用
「教育費は、子ども1人あたり1000万円ほど準備した方がいい」と言われることがあります。
なぜ「子ども1人あたり1000万円」といわれるかというと、幼稚園から大学まですべて公立を選択しても、平均して1000万円ほどの教育費がかかると言われているからです(※1)。
私立などを選択する場合は、それ以上の教育費がかかることになります。
しかし、だからといって教育費の全額を貯蓄で賄う必要はありません。
高校までの教育費は貯蓄を崩さずやりくりし、負担が大きくなる大学費用に絞って貯蓄を行うというのが、一般的な教育費の準備方法になります。
私立大学を選択する場合、大学費用は4年間でおよそ500万円となりますから、子どもひとりにつき500万円ほどの貯蓄が必要になります。
500万円準備するのが難しい場合は、入学金と1年目の学費として200万円を目安にするというのもひとつの方法です。
15歳までに教育費を貯めるべき理由
上記の通り、大学費用として、ひとりにつき500万円ほど貯蓄しておくと安心ですが、なおかつ子どもが中学校を卒業する15歳前後までに貯め終えておくと、さらに安心です。
なぜ15歳までかというと、近年では私立高校授業料実質無償化などにより、高校から私立を選択する人が増えたこと、公立高校を選択した場合でも大学進学のための塾や予備校などに費用がかかることから、子どもが高校生の時期にも多額の教育費が必要になる人が多いことが挙げられます。
塾や予備校に通う必要がない、特待生で授業料が無料などの特別な事情がない限り、高校の学費の支払いと並行して大学費用の貯蓄を行うことは、一般的な収入の世帯ではよほどの節約家でなければ、ほぼ不可能と言っても過言ではありません。
そのため、子どもが高校生になるまでに貯蓄ができていないと、そのまま貯蓄なしで大学に進学することになる人が多く、奨学金や教育ローンなどの借り入れに頼らざるをえなくなる可能性が高まります。
厚生労働省の「令和3年度 出生に関する統計の概況(※2)」によると、第一子出生時の母の平均年齢は、令和元年では30.7歳であることから、父親も母親と同世代であるとすると、子どもが高校生の頃は45歳前後である親が多いと考えられます。
大学費用に15年の教育ローンを利用すると、多くの家庭で定年間際まで住宅ローンと教育ローンのダブル返済に苦しむことになり、教育費の準備不足がそのまま老後資金の準備不足を引き起こす原因になります。
反対に、15歳までに教育費を貯め終えてしまった人は、教育ローンなどに頼る必要もないため、老後資金の準備や住宅ローンの繰り上げ返済なども行いやすくなります。老後まで返済が残る可能性も低くなりますので、老後の資金計画も立てやすくなり、老後も安泰となる可能性が高くなります。
なお、近年では中学受験をする人も増えています。中学受験を考えるのであれば、15歳までではなく、子どもが小学校4年生になる10歳前後までに貯蓄を終えてしまうと安心です。
さらに、第2子、第3子とお子さんがいらっしゃるご家庭なら、可能なら第1子が15歳(中学受験をするなら10歳)になるまでに下のお子さんのための教育費も貯め終えておくと理想的です。
教育費の準備により老後の生活が変わる
教育費の負担は必ずしも親がしなければならないわけではなく、お子さんが奨学金を利用し、お子さんが返済していくという方法もあります。
しかし、上記のように子ども1人につき500万円の貯蓄をお子さんが15歳前後までに終えてしまえば、お子さんが奨学金を利用した場合はそのまま老後の資金とするなど、資金活用の幅を広げることができます。
このように、教育費の準備をどのように行ってきたかによって、老後の生活水準まで変わってきてしまうのです。
ゆとりのある老後を送りたいという人は、お子さんが15歳になる頃までに教育費の準備を終えられるように、お子さんが誕生したら、できるだけ早期から綿密な計画を立てておきましょう。
※1
参考引用元
文部科学省「平成30年度子どもの学習費調査」
文部科学省「私立大学等の令和3年度入学者に係る学生納付金等調査結果について」
文部科学省「国公私立大学の授業料等の推移」
※2
厚生労働省の「令和3年度 出生に関する統計の概況」
文/家計簿・家計管理アドバイザー あき
著書に「1日1行書くだけでお金が貯まる! 「ズボラ家計簿」練習帖 (講談社の実用BOOK)」「スマホでできる あきの新ズボラ家計簿(秀和システム)」他