美しいライトアップのもと、華麗なプレイで観客を魅了する……スポーツでの成功を得たいと、多くのアマチュア・学生選手が夢のステージにあがるため、厳しい練習を日々、重ねています。
選手たちの夢を支えるためにパナソニックは今、LED投光器でアマチュア・学生スポーツの照明設備をより良いものにしたいと、その改善に取り組んでいます。
スポーツ環境を最適化するLED照明……関西学院大学での取り組み
そんな中、関西学院大学では、スポーツ施設の照明でLED照明化が進んでいます。その取り組みをご紹介します。
関西学院大学の西宮上ケ原キャンパスは、赤い瓦屋根とクリーム色の外壁を特徴とする独特の建築様式「スパニッシュ・ミッション・スタイル」で統一され、日本でも屈指の美しさを誇ります。
【参考】関西学院大学
そして、西宮上ケ原キャンパスのある甲東園は、高級住宅地「西宮七園」の1つで、第二次世界大戦後に日本で2番目に文教地区に指定されたことでも名高い場所。
そんな関西学院西宮上ケ原キャンパスとその周辺地区は、2020年6月1日に、兵庫県西宮市の景観地区に指定されています。
豊かな自然環境や歴史的背景を持つ関西学院西宮上ケ原キャンパスには8つの学部が集い、部活動などのスポーツ施設が充実しています。
その西宮上ケ原キャンパスにある、多目的グラウンドの第1フィールドと、アメリカンフットボール場と硬式野球場がある第3フィールドが2021年にLED照明化されました。その背景には文教地区であり、景観地区である上ケ原を守る目的が含まれていたのです。
関西学院大学第1・第3フィールド ナイター照明設備で改善が望まれていたこと
関西地区の大学の中でも部活動が盛んな関西学院大学。その第1・第3フィールドは夜間練習も可能なスポーツ施設を持ちます。
第3フィールドにあるアメリカンフットボール場と硬式野球場は12年ほど前に従来の照明設備を導入。高等部が使う第1フィールドの多目的グラウンドは、さらに以前から照明設備を設置しています。
かつては緑濃い上ケ原でしたが、近年は近隣の開発が進み、また、少し離れた場所には高層マンションが建ち並ぶ状況となっています。そんな環境の変化の中、ナイター照明設備は旧態化し、周辺住宅などへの光漏れへの配慮は急務となっていました。
学校法人関西学院 施設部の神田さんは、「周辺への光漏れに配慮し、一部では遮光ネットを使ったり、照明の明るさ自体を抑えていました。照明に加えて騒がしいことも配慮して活動の時間も制限し、対外試合での夜間のグラウンド使用は極力実施しませんでした」と状況を説明してくれました。
また、従来照明設備によく使われていたHIDランプの生産停止や、よりスポーツしやすい環境にするため、「2年ほど前から更新計画が立ち上がった」(神田さん)そうです。
そして、スポーツ施設でのLED照明の評価が高まったこと、LED照明の設置コストの低下が追い風になり、第1・第3フィールドのナイター照明がLED化したのです。
パナソニックからの提案……フィールドは明るく美しく。しかも周辺への光害を抑えたい
そんな関西学院大学西宮上ケ原キャンパスの第1・第3フィールド ナイター照明設備更新。工事はパナソニックが担当することになりました。
同社の施設専門の提案チームに所属する唐澤さんによると、2019年頃から関西学院大学にナイター照明設備更新の提案を行い、そのための調査を徹底したそうです。
パナソニック株式会社 エレクトリックワークス社 ライティング事業部 エンジニアリングセンター 専門市場エンジニアリング部 西部屋外照明課 課長 唐澤 宜典さん
前述の通り、第1・第3フィールドの周辺は近接する住宅があり、光が漏れないように、実地調査を繰り返しました。
また、省電力化には照明台数を減らすことが効果的なこともあり、同社のVR技術を駆使してシミュレーションを繰り返し行い、最小の台数で最大の効果を生むための試行錯誤をしたといいます。
その結果、アメリカンフットボール場では、フィールド部分の明るさを従来の照明と同等に確保しつつ、スタンドなどの明るさを抑え、また、照明の角度を工夫することで周辺への光の漏れを極力減らすことに成功しました。
アメリカンフットボールでは〝パント〟と呼ぶ、高いキックでプレイすることがあり、想定される高さは30mにもおよびます。一方で従来の照明では、十分な明るさを確保したとは言い難いところでした。
そこで、今回のLED化にあたり、高さ3.5mから上方45度の角度でアッパーライトを設置。他方、光害対策に配慮したLED投光器は下方に向けた角度で設置し、光漏れを抑えながら高い位置にあるボールを見やすくしました。
また、硬式野球場では内野の周囲にしか照明塔を設置していません。そのため、従来の照明では外野に十分な光を届けられなかったのですが、今回のLED化で使用した投光器は2つのレンズを持ち、まぶしさに配慮。外野方向へと照射範囲を広げることに成功しました。
さらに、多目的グラウンドがある第1フィールドの照明設備は導入時期が早く、劣化が目立っていた部分です。HID照明のため十分な照度を得るまでの時間もかかり、LED化が急がれる設備でした。
今回のLED化では、照明の台数を部分的に減らしつつ、グラウンド平均の明るさは従来と同等を確保。しかも、光漏れの少ない照明となりました。
完成した第1・第3フィールド ナイター照明設備で実現した美しくまぶしさを抑えたLED照明
関西学院大学の要請を受けて、パナソニックが調査・設計した第1・第3フィールド ナイター照明設備更新は無事、2021年に完成しました。
関西学院大学 施設部の神田さんによると、夏場の試験期間中で日中練習に限られる時期に改修工事を集中したため、学生の部活動への影響は最小限に抑えられたといいます。
また、全面工事するのではなく、グラウンドの一部を学生が利用できるように配慮したことも、部活動の制限を少なくしてくれたそうです。
その結果、当初のもくろみ通り工事は進み、周辺住宅地などへの光漏れを大幅に減少できました。
上の画像左が従来の照明で、右が更新されたLEDナイター照明です。赤い破線で囲んだエリアへの光漏れを大幅に抑えたことがわかります。
さらに、照度も上がり、選手に好評を得ることとなりました。
下の画像は、アメリカンフットボール場の従来の照明です。
下の画像は、更新された照明です。
硬式野球場の更新効果も絶大です。
下の画像は従来の照明の硬式野球場です。
下の画像は更新後の照明。外野での明るさの違いは顕著です。
それではここで、実際にグラウンドを使う選手の感想を聞いてみたいと思います。
関西学院大学 体育会アメリカンフットボール部〝FIGHTERS〟でタイトエンド(TIGHT END)の重責を担う小林選手に、プレイヤー目線から話をうかがってみました。
関西学院大学 体育会アメリカンフットボール部「FIGHTERS」タイトエンド #92 小林陸選手
タイトエンドは、パスを受ける選手でもあり、力を必要とする選手でもあります。それは、ライン裏でパスを受けたり、ラインに自らが加わることがあるためで、高い身長とある程度の体重を持つ選手が有利になります。一方、180cmを超え100kg前後となる大型選手であっても、高い走力やパスキャッチングの技術が要求される、難しいポジションです。
さらに、受けるパスは重要局面であることが多く、背後からのタックルに臆すことなくプレイに集中する、強いハートが必要です。たとえ、日中で陽射しがきつい中でのプレイであろうと、夜間であろうと、悪天候であっても、研ぎ澄まされたプレイを継続できる、ほかの選手から信頼を得る選手でなければなりません。
第74回ライスボウルで活躍する小林選手
(C)関西学院大学体育会アメリカンフットボール部
多くの人が憧れるスーパーアスリート、タイトエンドで活躍する小林選手は、夜間でのプレイ中、照明が明るいところと暗いところの境界で「パスが視界から消える」ことがあるそうです。もし、勝負を決するような局面でパスが取れなかったら……大事になります。
しかし、今回のLED照明の導入により、小林選手の視界からクオーターバック(QB)のパスが消えることは大幅に減ったと話してくれました。多くの競技場の照明がLEDで明るくなれば、さらに小林選手のスーパーキャッチの機会が増えるのではないか……そう期待してしまいます。
上の画像左は更新前のアメリカンフットボール場の照明で、右が更新後のLED照明です。投光器の周囲のグレア(まぶしさ)が抑えられたことがわかるかと思います。
そんな関西学院大学 体育会アメリカンフットボール部は、超強豪チームです。照明設備が整ったスタジアムでの試合も多々あります。しかし、同校のグラウンドの照明の方が明るい、そう感じることもあると、小林選手は話してくれました。
さらに、小林選手はクォーターバックなどほかの選手のために、対戦相手をブロックすることがあり、そんな時に「グラウンド全体が明るいと視界を広く保てて、プレイがしやすいです」と教えてくれました。
そして、選手だけではなくコーチ陣も、照明更新の効果を実感したそうです。何より選手のモチベーションが高まり、それが好成績につながったというのです。
実際に、2021年12月19日に行われた「第76回甲子園ボウル」では、東西大学王座決定戦で勝利。見事、4年連続32回目の優勝を果たしました。
【参考】関西学院大学体育会アメリカンフットボール部〝FIGHTERS〟オフィシャルホームページ
パナソニックの技術が詰まった光害対策投光器
ここからは、関西学院大学第1・第3フィールド ナイター照明設備更新に活用された、光害対策を施したパナソニックの投光器をご紹介します。
同設備で導入されたのは、マルチハロゲン灯Sタイプ 1500形相当の「NYS12697 LF2」と、水銀灯1000形相当の「NYS12347 LF2」です。
「NYS12697 LF2」は据置取付型のアウルビームLED投光器です。中角タイプ配光で、昼白色5000K(ケルビン)となります。
器具光束は6万7900lm。電圧は200〜242Vで消費電力は最大665Wです。
本体はアルミで前面パネルは透明なポリカーボネイト。耐雷サージ15kV、耐風速60m/sec仕様で、-20〜35℃での使用を想定される、タフな照明となっています。
「NYS12347 LF2」は壁直付型・据置取付型のLED投光器。広角形(60°〜)で、昼白色5000Kです。
器具光束は4万1000lm。電圧は200〜242Vで消費電力は最大264Wとなります。
本体はアルミで前面パネルは透明なポリカーボネイト。耐雷サージ15kV、耐風速60m/sec仕様で、-20〜35℃での使用にも耐える照明です。質量は10.5kgとなります。
「NYS12697 LF2」はアメリカンフットボール場と硬式野球場の双方で、「NYS12347 LF2」はアメリカンフットボール場のアッパーライトとして活用され、既存設備であったHID1500形投光器を置き換えました。
その結果、アメリカンフットボール場では約61%、硬式野球場では約52%、第1フィールド(高等部グラウンド)では約57%もの電気料金の節約を可能にしました。
さらに、パナソニックはLED誘虫器も関西学院大学第1・第3フィールド ナイター照明設備に付属しています。
夜間照明では多くの虫が誘引されます。急にグラウンドの照明を落とすとあかりに集まった虫が飛散し、周辺へ悪影響をおよぼす可能性があります。
そこで、LED誘虫器をメインの照明を消灯した後に点灯し、虫を殺さずに誘導します。
LED誘虫器「虫キーパー」
様々なスポーツ施設に広がるパナソニックのLED照明技術
関西学院大学でのLED照明化の様子をここまで見てきました。パナソニックではさらに、アマチュア・プロを問わず、様々なスポーツ施設のLED照明化をサポートしています。
たとえば、青森県・八戸市にある「FLAT HACHINOHE」という民設民営のアリーナでは、海外のプロバスケットチームが利用するアリーナを彷彿とさせるLED照明を実現しました。
ここでは、光の重心をスケートリンクなど競技部分に集中。まるで劇場のような没入感の高い観戦環境を味わえます。
また、照明器具を直視した時のまぶしさも抑え、プレイする選手も観客も楽しめるアリーナとなっています。
このように、様々なスポーツ施設で、美しく明るく、それでいて周辺への光害を抑える次世代のLED照明技術の導入が進んでいます。
もしかしたらみなさんが利用したり、観戦するスポーツ施設にも今後、LED照明が使われるのかもしれませんね。パナソニックの挑戦は今後も続くようです。
取材・文/中馬幹弘