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社用車をプライベートで利用して交通事故を起こしたら刑事罰の対象になる?

2022.02.25

営業職の方などは、会社所有の車(社用車)を使うことを許可されているケースもあろうかと思います。

社用車の私的利用が認められている場合もありますが、もし社用車の運転中に事故を起こすと、会社を巻き込んだトラブルに発展するおそれがあるので要注意です。

今回は、社用車を私的に利用している最中に、交通事故を起こしてしまった場合の法的問題をまとめました。

1. 社用車の私的利用はOK?NG?

社用車の私的利用が認められるかどうかは、会社の就業規則等に定められたルールによります。

業務以外での社用車の使用はNGとしている会社もあれば、福利厚生の一環として、プライベートでも社用車を使用してよい会社もあるでしょう。

いずれにしても、社用車をプライベートで使用したい場合には、あらかじめ就業規則等のルールを確認する必要があります。

2. 社用車の私的利用中に交通事故を起こした場合、解雇される?

社用車をプライベートで使用している最中に、交通事故を起こしてしまった場合、

「解雇されるのではないか」
「何らかの懲戒処分を受けるのではないか」

という点を懸念される方もいらっしゃるかと思います。

社用車の私的利用中の交通事故について、懲戒処分が認められるかどうかは、就業規則の内容や事故の態様などによって左右されます。

2-1. 懲戒処分には就業規則上の懲戒事由が必要

会社が従業員に対して懲戒処分を行う場合、就業規則上の懲戒事由が必要です。

したがって、

①社用車を私的に利用する
②社用車の利用中に交通事故を起こす

という一連の行為の中で、懲戒事由に該当する行為が存在することが、懲戒処分の要件となります。

実際に懲戒事由に該当するのは、以下のいずれかのパターンであることが多いと考えられます。

・そもそも社用車の私的利用が認められていない場合
・社用車の私的利用は認められているものの、あまりにも危険な方法で運転をした結果、交通事故を起こした場合

2-2. 解雇までは認められない可能性が高い

懲戒処分は、問題となる行為の性質・態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は無効となります(労働契約法15条)。

つまり、行為の悪質性と懲戒処分の重さは、つり合いがとれている必要があるのです。

この点、就業規則に違反して社用車を私的利用した、さらに過失による交通事故を起こしたという程度では、懲戒解雇や諭旨解雇といった重い懲戒処分は認められない可能性が高いと考えられます。

それまでも従業員の素行・勤務態度などにもよりますが、戒告やけん責、重くても減給程度の懲戒処分に留まるケースが多いでしょう。

ただし、あまりにも危険な方法で社用車を運転し、その結果交通死亡事故を引き起こしたようなケースでは、きわめて悪質な就業規則違反として、懲戒解雇等の対象になる可能性もあるので要注意です。

3. 社用車で交通事故を起こしたら、刑事罰の対象になることも

社用車で交通事故を起こした場合、事故の態様によっては、刑事罰を科されることもあります。

過失による物損事故であれば、犯罪は成立しません。

これに対して、人身事故(被害者が死傷した事故)の場合は「過失運転致死傷罪」が成立します(自動車運転処罰法5条)。

過失運転致死傷罪の法定刑は、「7年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金」です。

さらに、きわめて危険な方法により社用車を運転した結果、交通事故を起こして被害者を死傷させた場合には「危険運転致死傷罪」が成立する可能性があります(同法2条)。

危険運転致死傷罪の法定刑は、被害者を負傷させた場合は「15年以下の懲役」、死亡させた場合は「1年以上の有期懲役」です。

交通事故の加害者が一律起訴されるわけではないですが、事故の態様が重大・悪質な場合には、犯罪の責任を負う可能性がある点に留意しておきましょう。

4. 交通事故被害者に対する損害賠償、会社も責任を負う?

従業員が社用車の運転中に起こした交通事故については、会社も被害者に対して「使用者責任」(民法715条1項)を負う可能性があります。

会社が被害者に対して使用者責任を負うのは、従業員による社用車の運転が、会社の「事業の執行について」のものであると認められる場合です。

「事業の執行について」の判断基準については、最高裁昭和39年2月4日判決が参考になります。

同最高裁判決の事案では、自動車販売会社の従業員が、退社後映画鑑賞をしていたところ終電を逃し、会社の内規に違反して社用車を運転して帰宅したところ、その途中で交通事故を起こしました。

最高裁は、従業員による社用車の運行が、会社業務の適正な執行行為ではなかったことを指摘する一方で、以下のとおり判示して会社の使用者責任を認めました。

「民法七一五条に規定する「事業ノ執行ニ付キ」というのは、必ずしも被用者がその担当する業務を適正に執行する場合だけを指すのでなく、広く被用者の行為の外形を捉えて客観的に観察したとき、使用者の事業の態様、規模等からしてそれが被用者の職務行為の範囲内に属するものと認められる場合で足りるものと解すべきである」

つまり、就業規則等のルールがどうであるかにかかわらず、「社用車を運転している」という客観的な事実(=外形)に注目して、会社の使用者責任が肯定される場合があるということです。

このように、社用車をプライベートで使用する際には、万が一交通事故を起こした場合、会社に迷惑をかける可能性が高い点に十分ご留意ください。

取材・文/阿部由羅(弁護士)
ゆら総合法律事務所・代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。ベンチャー企業のサポート・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。東京大学法学部卒業・東京大学法科大学院修了。趣味はオセロ(全国大会優勝経験あり)、囲碁、将棋。
https://abeyura.com/
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