『一目置く』は、日常生活でもビジネスでも用いられる言葉です。耳にしたことがある人もいるのではないでしょうか?何となく意味を想像できてもはっきり説明できない人に向けて、意味や由来・使い方を紹介します。類語も確認して知識を深めましょう。
「一目置く」とは?
言葉を正しく使うためには、意味をきちんと理解することが大切です。まずは『一目置く』の意味と由来を確認しましょう。由来についても知ることで、言葉の意味をより深く理解できるようになります。
意味は「相手の実力を認め敬意を払うこと」
『一目置く』を『ひとめおく』と読むのは間違いで、正しい読み方は『いちもくおく』です。自分よりも相手が優れていることを認め、敬意を払っている様子を表します。
簡単にいうと『尊敬され認めていること』を指すのが、『一目置く』です。特定の行動に対してではなく、存在そのものが尊敬されていたり認められていたりする場合に使います。
例えば、ある人がプロジェクトを成功に導いたという行動だけに対して、一目置くとは表現しません。他にも尊敬や信頼を集めるエピソードがあったり、プロジェクトの成功を機に周囲から敬意を払われるようになったりすれば、「あの人は一目置かれている」と言われます。
『一目置く』を強めて言いたいときは、『一目も二目も置く』という言い回しも可能です。
囲碁が由来
『一目置く』という言葉の由来は囲碁です。囲碁では『盤上の一つの目』や『1個の碁石』を『一目』と呼び、『1個の碁石を置くこと』を『一目置く』といいます。
囲碁でハンデを付けて対戦する場合、弱い者が強い者よりも先に碁石を置いて勝負を開始します。基本的に先手の方が有利とされているため、弱い者に配慮しハンデを与えているのです。
つまり、先に碁石を置くということは、自分よりも相手が優れていると認めていることになります。『一目置く』は碁石を1個先に置くことで、相手を優位にとらえていることを表す言葉です。
『一目置く』には、配慮してもらったことに対して敬意を払うという意味もあります。『相手を認め敬意を払うこと』という意味で使われるようになりました。
「一目置く」はどう使う?
言葉の意味を理解しても、使い方が分からないと正しく使いこなせません。正しい使い方を分かりやすい例文とともに紹介します。使う際の注意点についても確認しましょう。
「一目置かれている」と受け身で使うことが多い
『一目置く』は、主に目上の人が目下の人に使うのが一般的です。『一目置かれている』と受け身で使われるケースが多いでしょう。
- 彼はまだ若いが、トップアスリートとして一目置かれる存在だ
- 彼女は上司に頼まれなくても先を見越して行動できるため、周囲の人から一目置かれている
- 私は君に一目置いているからこそ、このプロジェクトのリーダーを任せたいと思っている
相手や第三者に対してだけでなく、自分に使うことも可能です。
- 将来的には、社内で一目置かれるような存在になるのが目標だ
- 仕事でミスばかりしている私が、一目置かれる人になりたいなんて無謀かもしれない
このように『尊敬され認められる存在』に対して、幅広いシーンで活躍する言葉です。
目上への使用は避けて
『一目置く』は、基本的に目上から目下に対して使う言葉です。目上に対して使わないように注意しましょう。『一目置く』には尊敬だけでなく『認める』や『評価する』というニュアンスがあり、立場が上の人に使うと失礼に当たるためです。
例えば、「私は誰からも慕われている課長に一目置いている」のように使うと、一見、褒め言葉のように思えるかもしれません。しかし、実際には『上司を評価している』という上から目線の表現になってしまいます。
ただし、「上司は社長から一目置かれている存在だ」というように、さらに立場が上の人から尊敬されているという意味では使っても問題はありません。この場合、上司を評価しているのは言った人ではなく社長だからです。
「一目置く」の類語
類語を知ることで表現の幅が広がり、状況に合わせて的確な表現を選べるようになります。言い換えできる表現の種類や、それぞれの意味・使い方を学びましょう。
敬意を表す
『敬意を表す(けいいをひょうす)』は、『尊敬する気持ち』という意味の『敬意』と、『態度や言葉に表す』という意味の『表す』を組み合わせた言葉です。『尊敬する気持ちを表す』という意味を持ち、基本的に目上に対して使います。
- プロジェクトを成功に導いた上司に対し、敬意を表したい
- 今回の発明に寄与した○○さんの多大なる努力に、心から敬意を表します
『敬意を払う』という言い回しも、同じような意味で頻繁に使われます。
- 目下に対して横暴な振る舞いをする上司が多い中、いつも丁寧に接してくれる部長には敬意を払いたいと思う
『一目置く』と違って、『敬意を表す(払う)』には、『認める』『評価する』というニュアンスはありません。単純に相手の行動や人柄を敬うという意味で使えるため、目上に使っても失礼には当たらないのです。
尊敬する
『尊敬する』には、『人格や人の行為・業績などを認めて敬う』という意味があります。『一目置く』と似たニュアンスで使える言葉です。
- 子どもの頃は母が厳しすぎると思っていたが、大人になってからしつけの大切さが分かり母を心から尊敬するようになった
- どんなトラブルを目の前にしても、冷静沈着に対応できる彼を尊敬している
- 偉業を成し遂げた人が、必ずしも尊敬されていたとは限らない
『尊敬する』は多くの人が知っている一般的な言葉なので、日常会話でも使いやすいでしょう。『敬意を表す』と同様、目上に対して使っても失礼に当たりません。
高く買う
『高く買う』は、本来『相場よりも高い値段で買う』という意味の言葉です。それが転じて『人物や能力を高く評価する』という意味を持つようになりました。
相手を認めたり高く評価したりするときに使うほか、第三者に対して『高く買われている』と表現することも多いでしょう。ビジネスシーンであれば、経営手腕に優れており、社内で一目置かれていると人物に対して使えます。
ただ、目上に対して使うと、『一目置く』と同じく失礼に当たります。上司の技能を表現したいときは、他の表現を使うのがおすすめです。
称賛する
『称賛(しょうさん)』は、どちらも『褒め称える』という意味の『称』と『賛』を合わせた言葉です。『称』には『となえる』という意味もあり、『称賛する』は『行為や成果を素晴らしいと言葉にして褒め称える』ときに使います。
- プールで溺れかけていた子どもにいち早く気付き、救助した高校生に称賛の声が上がっている
- オリンピックで金メダルを獲得しても、なお努力し続ける彼は世界中から称賛の的になった
- 彼は大きなプロジェクトを成功させ、会社に多大な利益をもたらしたことで社員全員から称賛されている
「素晴らしい」「すごい」など、声に出して褒める状況に適しているでしょう。素晴らしい行動に対して、『称賛に値する』と表現することもあります。
構成/編集部