日常的に使われているプラスチック製品が肥満に関連?
ペットボトル入りの水を飲んだだけで太ることなどあるのだろうか? その可能性は、完全には否定できないようだ。
ノルウェー科学技術大学(ノルウェー)のMartin Wagner氏らによる研究で、ペットボトルや食品の包装などのプラスチック製品に使われている化学物質が、肥満のリスクをもたらす可能性が示されたのだ。
この研究結果は、「Environmental Science & Technology」に1月26日発表された。
食品の包装にはプラスチック製の袋や容器が広く使用されている。プラスチック製品は安価な上に、包装した食品の品質をより長く保持できるからだ。
しかし、プラスチックには数多くの化学物質が含まれている。Wagner氏によると、そうした化学物質の一部は人々の体内に入り込み、代謝に影響を与え、その結果、体重にも影響を及ぼす可能性があるという。
そこでWagner氏らは今回、ヨーグルトの容器や飲料ボトル、食品包装用のラップなど、日常的に使用されている34種類のプラスチック製品を対象に、それらに含まれている化学物質の特性について調べた。
その結果、対象としたプラスチック製品から、全部で5万5,300種類の化学的特徴を持つ成分が検出され、これらの特徴から、629種類の化学物質が同定された。
これらの中には、フタル酸ベンジルブチル(BBP)やフタル酸ジブチル(DBP)、リン酸トリフェニル(TPP)など、人体の代謝に悪影響を与える「代謝攪乱物質(metabolism-disrupting chemical;MDC)」が11種類含まれていた。
また、分析したプラスチック製品の3分の1から検出された化学物質については、脂肪細胞の成長を促すことが実験で確認された。
Wagner氏らは同大学のニュースリリースで、「これらの化学物質は、前駆細胞を、増加しやすく蓄積しやすい脂肪細胞になるよう再プログラムしていた」と説明している。
さらに、いくつかのプラスチック製品は、既知のMDCを含んでいないにもかかわらず、脂肪細胞の成長を引き起こしていたことも確認された。
これは、プラスチックの中に、人体に脂肪が蓄積するプロセスに干渉する未知の化学物質が含まれていることを意味している。
Wagner氏は、「われわれの実験では、過体重や肥満との関連が過小評価されているさまざまな化学物質が、日常的に使われているプラスチック製品に含まれていることが示された」と話す。
一方、研究論文の筆頭著者である同大学のJohannes Völker氏は、「ビスフェノールAなどの問題視されることの多い化学物質が代謝を攪乱しているわけではないようだ。
つまり、プラスチックに含まれる既知の化学物質以外の物質が、過体重や肥満を促している可能性がある」との見方を示している。
以前は、プラスチック製品に含まれている化学物質のほとんどは製品から漏れ出すことはないと考えられていた。
しかし、Wagner氏らは最近の研究で、プラスチック製品から大量の化学物質が溶出し、人間の体内に入り込む可能性があることを報告している。
また、先行研究では内分泌攪乱物質を含む一部のプラスチックが、ヒトの発達や生殖機能に影響を与える可能性があることが示されているが、今回の研究では、それらの物質が体重増加ももたらし得ることを示したといえる。(HealthDay News 2022年1月31日)
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(参考情報)
Abstract/Full Text
https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acs.est.1c06316
Press Release
https://norwegianscitechnews.com/2022/01/plastic-chemicals-may-contribute-to-weight-gain/
構成/DIME編集部