コロナ禍で人気が上がったアクティビティのひとつが、ゴルフです。
ゴルフの四大メジャー大会のひとつ、「マスターズ・トーナメント」の2021年、第85回大会で松山英樹選手が優勝したこともあり、今やゴルフは一大ブームを迎えています。
また、ゴルフクラブの進化は、人気に拍車をかける見逃せない要素です。
人気が集まると、人々の度肝を抜くような製品が出ることは、過去の歴史が証明しています。ゴルフ界にも2022年、劇的な〝革命児〟が誕生しました。
それは、テーラーメイドの「ステルス」ドライバーです。
約100年続いたパーシモンウッドの時代に終止符を打ったテーラーメイド
さてここで、テーラーメイドというメーカーについて、カンタンにおさらいしてみたいと思います。
創始者であるゲーリー・アダムス氏がテーラーメイド ゴルフを創設したのは、今から43年前の1979年のことでした。
当時のゴルフクラブのうち、ドライバーやフェアウェイウッドと呼ばれるクラブには、パーシモン(柿の木)が多く使われていました。まさに〝ウッド〟と呼ぶにふさわしいものだったのです。
しかし、ゲーリー・アダムス氏は、ステンレス製のメタルウッドを生み出し、約100年続いたパーシモンウッドの時代に終止符を打ったのです。
テーラーメイドの歴史を説明する、テーラーメイド ゴルフカンパニー テーラーメイド プロダクト クリエーション副社長 ブライアン・バゼル氏
2022年のテーラーメイドは〝カーボンフェース〟でゴルフ界に革命を起こす
テーラーメイドは2022年に、新たな革命を起こしました。カーボンフェース〟を持つ革新的なドライバーを誕生させたのです。
2021年に登場した「SIM2」と呼ばれるドライバーも、テーラーメイド独自の「ツイストフェース」と、空気抵抗を減らしヘッドスピードを上げる「イナーシャ ジェネレーター」などの機能が絶賛された名作です。
しかし、2022年に登場した「ステルス」は、フェースを従来のチタンから、60層にもなる強固で極軽量のカーボンフェースに変更しました。
もちろん、好評のツイストフェースの技術は継承。ミスヒットに対する寛容性も備えます。また、カーボンだけだとドライではスピンが強すぎて、ウェットではスピンが弱すぎる傾向があったため、フェース全面にナノレベルの精巧な「ポリマーコーティング」を施し、さらに、極細かなスピンラインも入れて優れたスピン性能を発揮することに成功しました。
これらの革新的な技術により、フェース重量はチタンの43gから24gと、44%もの軽量化を実現しています。
現代のクラブは規定により、ヘッドの容量やフェースの反発係数に制限があります。そのため、飛距離については限界が来た……などと言われることもあります。
しかし、フェースを軽量化することで、ボール初速がアップ。また、軽いフェースに対してボディが重いので、一瞬フェースの動きが遅れて、結果として金属フェースではなしえない、エネルギーの伝達効率を上げることに成功し、従来モデルのドライバーよりもボールの初速が大幅に向上しました。
さらに、フェース自体の面積を大きくしたり、重量バランスを変更できるようになり、寛容性が向上しミート率がアップ。その恩恵として飛距離の増大にもつながることがあります。
「ステルス」ドライバーも、「SIM」ドライバーに対して20%もフェースの面積を拡大しています。
しかし、フェース面積が大きくなると空気抵抗が増えて、ヘッドスピードが低下してしまうこともあります。そこで、「ステルス」ドライバーは「イナーシャ ジェネレータ−」や流線型クラウンなどにより、従来の「SIM 2」ドライバーより空気抵抗を減らしました。
「ステルス」ドライバーの詳細を説明してくれたテーラーメイド ゴルフ株式会社 ハード グッズ プロダクト ジャパン&アジア ディレクター高橋伸忠氏
試打してわかった「ステルス」ドライバーの実力
そんな「ステルス」ドライバーを実際に試打してみました。
まずは打音です。カーボンフェースと聞くとどうしても、打音が〝ボコッ〟と鈍くなるのではないかと思っていましたが、想像よりも高い音が響き、それでいて耳障りな雑音も少なく、心地よいものでした。
筆者はドライバーのヘッドスピードが42〜44m/s程度と、ごく一般的なアマチュアゴルファーの範疇ですが、スタンダードな「ステルス」モデルのロフト角10.5°でシャフト(TENSEI RED TM50)のフレックスSを振らせてもらったところ、飛距離250ヤード前後をスカイトラックが表示。しかも打球方向は安定しており、「コレは欲しい!」と思ってしまいました。
カーボンフェースのドライバーは「ステルス」「ステルス プラス」「ステルス エイチディー」の3種類
今回登場した「ステルス」ドライバーは、「ステルス」「ステルス プラス」「ステルス エイチディー」の3種類となります。ほかにウィメンズモデルの「ステルス」ドライバーもラインアップします。
スタンダードモデルの「ステルス」は、ロフト角9°、10.5°、12°から選べて、シャフトはTENSEI RED TM50(’22)(S、SR、R)、Tour AD UB-6(S)、SPEEDER NX 60(S)、Diamana PD 60(S)がセレクト可能。価格はそれぞれ、TENSEI RED TM50(’22)が8万6900円、Tour AD UB-6、SPEEDER NX 60、Diamana PD 60が10万6700円です。
「スライディングウェイトシステム」を搭載する「ステルス プラス」ドライバーは、ロフト角9°、10.5°から選べ、シャフトは「ステルス」と同じラインアップがセレクト可能。価格はそれぞれ、TENSEI RED TM50(’22)が9万200円、Tour AD UB-6、SPEEDER NX 60、Diamana PD 60が11万円です。
ヒール寄り重心のハイドローバイアス設計で、高弾道かつ球をつかまえやすい「ステルス エイチディー」ドライバーはロフト角9°、10.5°、12°から選べて、シャフトはTENSEI RED TM50(’22)のS、R、SRがセレクト可能。価格は8万6900円となります。
取材・文/中馬幹弘