1年の延期を経ていよいよ劇場公開される『映画ドラえもん のび太の宇宙小戦争2021』。DIME世代にもおなじみの作品のリメイクだけに「どう生まれ変わったのか?」と期待が高まる。山口 晋監督にこだわりのポイントを聞いてみた!
山口 晋監督
1967年生まれ。TVアニメ『ドラえもん』の絵コンテ・演出・作画を数多く手がけ『映画ドラえもん のび太の月面探査記』では演出を務めた。
『映画ドラえもん のび太の宇宙小戦争 2021』
2022年3月4日公開
ピリカ星から地球にやって来た手のひらサイズの宇宙人・パピと出会い、親交を深めていくドラえもんたちだったが、彼を追って来たクジラ型宇宙戦艦の攻撃を受ける。責任を感じたパピは、ひとり立ち向かおうとする……。小さな友達との友情と宇宙を駆ける大冒険を描き、シリーズの中でも屈指の人気を誇る『映画ドラえもん のび太の宇宙小戦争』(1985年)が再映画化!
意識は完全新作!フラットに楽しんでほしい
旧作どうこうではなくて、この原作をエンターテインメントとしてどう映画化するか、という気持ちで取り組みました。脚本の佐藤大さんや藤子プロの皆さんともそういった話をしました。どうアップデートするかといったことはあまり意識せずに、完全な新作のつもりでスタッフ一同作っています。子供たちはもちろん、今回初めて見る人にも、フラットに楽しめるものにしようと。かつて子供の頃に旧作を見たという大人の方には、懐かしさを感じるところも当然あるでしょうが、見終わった時に何か新鮮なものを感じていただけたらうれしいです。
それと、映画の中ではドラえもんのひみつ道具を使っていますが、スネ夫たちがやっているような撮影や編集は、今ではその気になればスマホでもできてしまうんですよね。グリーンバックで合成とかもできる。ちょっとした手作業に創意工夫さえあれば、簡単な特撮は手軽にできる時代になっていて、今の子供たちがうらやましい。この映画を機に「何か作りたい!」と思ってくれれば、うれしいです。
監督に聞いた!こだわりポイントBEST3
[監督のこだわり 01]「スネ夫のジオラマを実際に製作して特撮スピリットを取り入れました」
「スネ夫たちの特撮映画のセットは、実際にジオラマを製作して撮影しアニメと合成しています。クライマックスシーンのピリカ星の町並みのビルもミニチュアです。撮影で色調や質感をアレンジし、2Dのアニメの中に取り込んでもなじむように調整してもらっています」(山口監督)
〈旧作〉旧作では背景はマットペインティングだったが、本作ではグリーンバックになっている。
監督自らの手によるラフスケッチをもとに実際にジオラマが製作された。
↓
川崎市藤子・F・不二雄ミュージアムで展示!ジオラマなどは『STAND BY ME ドラえもん』シリーズの白組が製作。
↓
合成してなじませつつも、あえてちょっとした違和感を残し「特撮っぽさ」を表現したという。
[監督のこだわり 02]「リアルさよりも、キャラを立たせたいひと目でわかるデザインの戦車にしました」
「宇宙空間を戦車が飛ぶ、というのはやはりロマンがありますし、それはもちろん踏襲しつつプラスアルファの味つけを加えました。キャラごとにイメージカラーをつけて色分けしたのもポイントですね。あえておもちゃっぽいデザインにしています」(山口監督)
〈旧作〉旧作では戦車はすべてカーキ色で、クローラーなど細部もリアルなミリタリーテイスト。
戦車だけでなくバギーに乗るシーンでも、やはりそれぞれ色分けされている。
[監督のこだわり 03]「パピの設定とデザインを変え、キャラに奥行きを加えました」
「ピリカ星の大統領という設定のパピですが、旧作では元治安大臣のゲンブ、愛犬のロコロコという仲間はいるものの、ひとりで戦っていました。そこでオリジナルキャラクターとしてパピのお姉さん、ピイナを加えることに。家族という心の後ろ盾を描くことで、パピがより感情移入できるキャラクターにできたと思います。併せてパピのデザインも変更しています」(山口監督)
〈旧作〉旧作でのパピは頭身が低く、頭髪もなくツルンとしていて、見た目としては幼さが残る印象だった。
頭身が上がっただけでなく色味も変更され、より理知的な雰囲気に。ピリカ星の大統領という設定にも納得。
パピの唯一の家族、姉のピイナ。追っ手からパピを逃がし自分はピリカ星に残る。
©藤子プロ・小学館・テレビ朝日・シンエイ・ADK 2021
取材・文/小田サトシ