インターネット上に違法アップロードされた海賊版コンテンツは、ダウンロードするだけで犯罪に当たる可能性があります。
今回は、海賊版コンテンツのダウンロードに関して犯罪が成立するための要件や、逮捕・刑事訴追の可能性についてまとめました。
1. 海賊版コンテンツのダウンロードが犯罪に当たる場合とは?
2012年10月から、音楽・映像の海賊版コンテンツをダウンロードする行為の一部が刑事罰化されました。
その後の法改正により、2021年1月から、音楽・映像以外の著作物全般についても、海賊版のダウンロード行為が刑事罰化されています。
1-1. 正規版が有償の場合、海賊版のダウンロードは犯罪
現行の著作権法上、海賊版コンテンツのダウンロードは、正規版が有償か無償であるかを問わず、原則として違法とされています(著作権法30条1項3号参照)。
その一方で、海賊版コンテンツのダウンロードが刑事罰(犯罪)の対象とされているのは、正規版が有償で提供・提示されている場合のみです(同法119条3項)。
この場合、ダウンロードをした者について「2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金」が科され、または併科される可能性があります。
したがって、海賊版コンテンツのダウンロードは原則として、
正規版が無償
→違法だが犯罪ではない
正規版が有償
→違法かつ犯罪に当たる
という整理になります。
1-2. 例外的に海賊版のダウンロードが犯罪にならない場合
ただし、以下のいずれかに該当する場合には、正規版が有償である海賊版コンテンツのダウンロードであっても、例外的に犯罪が成立しません。
①スクリーンショットを行う際の違法画像等の写り込み
②ダウンロードの態様が「軽微なもの」である場合
(例)
・数十頁で構成される漫画の1コマ〜数コマをダウンロードした場合
・ダウンロードした画像が非常に粗く、それ自体では鑑賞に堪えない場合
③二次創作・パロディ
④著作権者の利益を不当に害しないと認められる特別な事情がある場合
(例)
・被害者救済団体のサイトに違法アップロードされた、有償著作物である詐欺マニュアルを、被害予防の目的でダウンロードする場合
インターネットユーザーによる情報収集行為に対して、過度な萎縮効果を与えることを防ぐ配慮により、上記のような例外が設けられています。
2. 違法ダウンロードで逮捕・訴追される可能性はある?
客観的に犯罪とされる違法ダウンロード行為であっても、実際に逮捕・起訴に至る可能性は低いのが実情です。
ただし、違法アップロードなど別の犯罪と併せて訴追され、刑が加重される可能性はあると考えられます。
2-1. 違法ダウンロードは「親告罪」|著作権者の刑事告訴が必要
違法ダウンロードは、検察官が公訴提起(起訴)を行う際、被害者の告訴が必要となる「親告罪」とされています(著作権法123条1項)。
違法ダウンロードの場合、被害者となるのは著作権者ですので、著作権者による告訴が必要となります。
2-2. 違法ダウンロードの摘発は難しいのが実情
違法ダウンロードを行う者は不特定多数のため、著作権者が個別の違法ダウンロード被害を特定して刑事告訴を行う可能性は、現実的に低いと考えられます。
また、仮に刑事告訴が行われたとしても、捜査機関(警察・検察)のリソースには限界があります。
そのため、刑事告訴の時点で十分な情報が揃っていない違法ダウンロードの捜査よりも、さらに重大な犯罪の捜査が優先されてしまうことが多いでしょう。
このような事情から、違法ダウンロード行為そのものが、犯罪として摘発される可能性は低いのが実情です。
もちろん、違法ダウンロードで逮捕・訴追される可能性が全くないわけではありません。
また、逮捕・訴追の可能性が低いからといって、違法ダウンロードをしてもよいわけではないことは当然です。
2-3. 違法アップロードとの併せて訴追される可能性はある
違法ダウンロードが刑事訴追されるとすれば、他の犯罪との「合わせ技」になるケースが考えられます。
一例として挙げられるのは、違法ダウンロードによって海賊版コンテンツを仕入れ、さらにその海賊版コンテンツを違法アップロードしていた場合です。
違法アップロードの訴追・処罰事例は、これまでも複数報告されています。
そのため、悪質な形で海賊版コンテンツの違法アップロードを行った場合、刑事訴追される可能性は大いにあります。
また、違法ダウンロードした海賊版コンテンツを違法アップロードした場合、ダウンロード・アップロードの被害者は同じ(著作権者)です。
この場合、違法アップロードについての摘発をきっかけとして、著作権者が違法ダウンロードを刑事告訴することも十分考えられるでしょう。
違法ダウンロードと違法アップロードが同時に処罰される場合、「併合罪」(刑法45条)によって刑が加重(合算)されます。
その結果、最大で「12年以下の懲役もしくは1200万円以下の罰金」が科される可能性があるので要注意です(著作権法119条1項、3項、刑法47条、48条2項)。
取材・文/阿部由羅(弁護士)
ゆら総合法律事務所・代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。ベンチャー企業のサポート・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。東京大学法学部卒業・東京大学法科大学院修了。趣味はオセロ(全国大会優勝経験あり)、囲碁、将棋。
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