
スピード違反や一時停止違反などを警察に見咎められた場合、反則金の支払いを求められることがあります。
突然の取締りに「納得できない」という声もよく聞かれるところですが、もし反則金を支払わなかった場合、どのようなリスクを負うことになるのでしょうか?
今回は、交通違反の反則金制度の概要と、反則金を支払わなかった場合のリスクについてまとめました。
1. 交通違反切符は赤・青・白の3種類
警察が交通違反を発見した場合、運転者に対していわゆる「違反切符」を交付します。
違反切符には「赤切符」「青切符」「白切符」の3種類があります。
このうち、反則金の支払いを求められるのは「青切符」のみです。
1-1. 赤切符|起訴・刑事処分相当
「赤切符」の正式名称は、「道路交通法違反事件迅速処理のための共用書式」です。
赤切符は、以下に挙げるような重大な交通違反に対して交付されます。
・危険運転致死傷罪に該当する運転
・酒酔い運転
・酒気帯び運転
・交通事故時の救護義務違反
・無免許運転
・高速道における40km/h以上の速度超過
・一般道における30km/h以上の速度超過
など
赤切符が交付された場合、検察官による正式起訴または略式起訴が行われます。
つまり重大な違反であるがゆえに、反則金の段階を飛ばして、直接裁判へと移行するのです。
公判手続きで有罪判決が確定した場合や、略式裁判によって罰金または科料を科された場合には、前科が付いてしまうことになります。
1-2. 青切符|反則金の納付を求められる
「青切符」の正式名称は、「交通反則告知書」です。
青切符が交付される交通違反には、非常にたくさんの種類があります。
主な例は以下のとおりで、いずれも赤切符に比べると軽微な交通違反です。
・高速道における40km/h未満の速度超過
・一般道における30km/h未満の速度超過
・運転中の携帯電話の使用等
・信号無視
・一時不停止
・追越し禁止違反
・駐停車禁止違反
・免許証不携帯
など
これらはいずれも、本来であれば、道路交通法違反として犯罪に当たる行為です。
しかし、青切符に該当する交通違反は、日常的に多数発生しています。
そのため、捜査機関がそのすべてについて、十分な捜査を行うことはできません。
そこで、青切符に該当する交通違反を犯した者に対しては、警察本部長が簡易的な手続きにより、反則金の納付を通告できるものとされています(道路交通法127条1項)。
通告日の翌日から起算して10日以内に、運転者が反則金を納付した場合、運転者に対する公訴提起(少年の場合、家庭裁判所の審判)は行われません(同法128条2項)。
1-3. 白切符|反則金なし、違反点数のみ
「白切符」は、単に「告知票」という名称が付されています。
白切符が交付されるのは、青切符よりもさらに軽微な交通違反です。
白切符の場合、反則金を納付する必要はなく、免許証の違反点数が1点加算されるにとどまります。
2. 青切符の反則金を納付しないとどうなる?
青切符の反則金を納付しない場合、交通違反を理由として、検察官に起訴される可能性があります。
2-1. 反則金を納付しないと、起訴される可能性がある
青切符の反則金を納付すると、運転者に対する公訴提起が免除される法的効果が発生します(道路交通法128条2項)。
逆に言えば、反則金を納付しない限り、検察官による公訴提起の可能性は残ってしまいます。
もし検察官によって起訴された場合、赤切符と同様に、裁判手続きによって罪責が判断されることになります。
公判手続きで有罪判決が確定した場合や、略式裁判によって罰金または科料を科された場合には、前科が付いてしまうので要注意です。
2-2. 実際に起訴される確率は?
実際には、青切符相当の交通違反について、実際に検察官が公訴提起を行う可能性は、それほど高くないと考えられます。
そもそも検察官は、客観的に成立していると思われる犯罪につき、すべて公訴提起を行うわけではありません。
捜査や公判手続きに対応するために、警察・検察が確保できる人員は有限なので、比較的重大な事件に絞って公訴提起が行われるのです。
この点、青切符相当の交通違反は、反則金にして3000円から4万円と、少額のペナルティが想定されているに過ぎません。
公訴提起が行われた場合、これを超える罰金等が科される可能性はあるものの、犯罪として訴追するには軽微な部類と言えます。
したがって、検察官が時間と労力を割いてまで、青切符相当の交通違反を起訴する可能性は低いと考えられるのです。
2-3. 公訴提起が心配であれば、反則金を納付した方が無難
とはいえ、公訴提起の可能性が全くないわけではありません。
もし検察官に起訴されてしまったら、公判手続きへの対応に時間をとられてしまいます。
また、万が一有罪判決が確定して前科が付いた場合、会社から懲戒処分を受けたり、その後の転職等に影響が出てしまったりする事態になりかねません。
このような事態を懸念するのであれば、警察の指示に従い、反則金を納付した方が無難でしょう。
もし反則金を納付しないという選択をする場合には、可能性は低くとも、公訴提起の可能性が残る点に十分ご留意ください。
取材・文/阿部由羅(弁護士)
ゆら総合法律事務所・代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。ベンチャー企業のサポート・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。東京大学法学部卒業・東京大学法科大学院修了。趣味はオセロ(全国大会優勝経験あり)、囲碁、将棋。
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