LIFULL「2022年 LIFULL HOME’S 住みたい街ランキング」
LIFULLは、『2022年 LIFULL HOME’S 住みたい街ランキング』を発表した。
首都圏版「借りて住みたい街」ランキング
準近郊・郊外エリアの人気が加速!都心へのアクセスと駅勢圏の広さが共通
2年連続の1位となった「本厚木」を始め、「大宮(2位)」「柏(3位)」「八王子(4位)」など、準近郊・郊外でも都心方面に乗換なしでアクセス可能な路線があり、駅勢圏(駅周辺の繁華性のある地域)が広い街が共通して上位にランクインしている。
一方、「池袋(昨年5位→本年12位)」、「高円寺(11位→18位)」など、生活と交通の利便性が高く、これまで人気のあった都心・近郊の街は低迷。
コロナ禍の長期化で“居住希望エリアの郊外化”がさらに鮮明になり、テレワークやオンライン授業が定着したことで、毎日の通勤・通学が前提でなければ利便性を前提とした都心周辺に居住する必要は薄れるため、生活コストを見直せば、郊外方面で新たに住まいを探そうと考えるのは当然のことと言える。
郊外への意識はありつつ、利便性も欠かさない “中間層”が支持する街の人気も継続
コロナ禍の長期化は、住まい探しでのエリア選択に新たな動き、それは“郊外化”と別の“中間層”とも言うべきニーズを生み出している。
これは「川崎(昨年10位→本年10位)」や「荻窪(15位→14位)」など、昨年調査で都心に位置する駅と一緒に順位を下げた近郊の駅の順位が前回並みに留まっていることで明らかとなり、都心・近郊の街が今回さらに順位を下げていることとは対照的な動き。
郊外への意識はあっても、都心へのアクセスなどといった利便性は欠きたくないという “中間層”が支持するエリアが形成されていることは本年の調査結果の特徴とも言える。
郊外エリア人気の背景に潜む平均年収の減少!生活コスト削減意向と住まい探しの関係性が密接に
感染拡大期(2021年1月/5月/7~9月)の郊外志向(都心駅の順位が下がり郊外駅の順位が上がる)、もしくは感染収束期からの都心回帰(都心駅の順位が上がり郊外駅の順位が下がる)という現象は発生していないことから、ユーザーはコロナ禍であることを意識しつつも、感染拡大期であるか否かにかかわりなく住むエリアを探していることが明らかとなった。
新型コロナウイルスが郊外化の間接的原因に留まるとすれば、郊外化の有力な要因として考えられるのは生活コストの削減。
国税庁の調査によると、民間企業の給与は2019年から2年連続減少しているため、将来不安の拡大で生活コストを少しでも下げる努力をされるケースが増えていると想定される。
※国税庁「民間給与実態統計調査結果(令和2年)」より
総括:長期化するコロナ禍の影響により、賃貸ユーザーの郊外志向は一過性ではなくなる
長期化するコロナ禍により、これまでの利便性最優先の生活スタイルを見つめ直し、賃貸ユーザーも生活のゆとりや地域コミュニティとのかかわりなどに気持ちを向ける機会がもてるようになった。
2年連続で首都圏の賃貸ユーザーの郊外意向が明らかになったことは、一過性の傾向ではないと言えるだろう。また、今後コロナ禍が終息に向かった場合、再び利便性重視&コロナ以前の生活スタイルに戻るのか、それとも郊外における新たなコミュニティや居住スタイルが生まれるのか、注目が集まる。
首都圏版「買って住みたい街」ランキング
昨年の郊外人気から一変!資産価値の高い物件のある都心の街が上位に回帰
3年連続で1位となった「勝どき」周辺には、昨年開催されたスポーツイベントの選手村跡地の大規模プロジェクトが進行中で、昨年12月には平均倍率8.7倍、最高111倍という人気で完売し、依然として高い注目を集めている。
同様に、2年連続2位の「白金高輪」、「牛込柳町(昨年19位→本年11位)」など話題性の高い分譲物件のあった街はランクを維持もしくは順当に上げている。
コロナ禍が継続する現状においても、購入ユーザーのニーズは利便性&資産性重視であることに変わりはなく、「コロナ禍でも資産性が高く維持されると期待できる都心や周辺の人気エリア」に関心が集まっていることが明らかとなった。
首都圏の新築マンション価格高騰で中古マンションの購入意向が増加
首都圏の新築マンション平均価格はバブル期を超え過去最高となっており、昨年23位から本年3位に急上昇した「横浜」は、横浜駅に隣接した中古マンションが豊富な街。
近年では、一般に駅勢圏(駅周辺の繁華性のある地域)が広い街に中古マンションが多い傾向があり、本ランキング上位で類似する街としては、「浅草(21位→4位)」、「渋谷(100位以下→28位)」などがある。
都心回帰の傾向がみられる一方で、通勤・通学の減少や物件価格の高騰により郊外需要も堅調
都心回帰の傾向がある一方で、ベスト30のうち都心・近郊は10駅に留まっているが、「平塚(昨年14位→本年5位)」「八街(17位→7位)」「千葉(13位→8位)」などテレワークの進捗と物件価格の高騰を背景としたニーズの受け皿として準近郊・郊外が上位に多く躍進していることから、都心志向が戻りつつも郊外需要も堅調と言える。
順位を急上昇させた街の共通点は、活気を感じられる商店街
昨年から大きく順位を上げた「東中野(昨年67位→本年9位)」や「三ノ輪(95位→12位)」、「入谷(66位→14位)」の傾向として、駅前やその周辺に活気ある商店街がある。
一般的に商店街のある街は新たな住居エリアに対する漠然とした不安や、生活上のちょっとした不便や不案内を解消する要素を備えていると言われている。
下町に限らず、庶民的な商店街の存在は、ショッピングセンターや大規模なスーパーマーケットにはない、人情やふれ合い、癒しや安心感といった目に見えない効果をもたらす。
コロナ禍の外出控えで身近なエリアで過ごす時間が増えたことにより、住み替え先となる街にはどのような活気があるのかが住まい探しの一つの要素となっていると推測できる。
総括:購入ユーザーはポストコロナを見据えた住まい探しに注目
Withコロナの生活も2年が経過し、感染に対する不安や脅威といったものが日常と共存する環境下において都心・近郊の人気住宅地がランキング上位に登場したことは、コロナ後をある程度イメージした利便性と資産性の高い都心周辺エリアに買っておきたいという要望と、コロナ禍だからこそ比較的移動が少なくて済む“職住近接”を実現したいという二つのニーズがあるといえる。
分析・解説:LIFULL HOME’S 総研 副所長 チーフアナリスト 中山登志朗(なかやま・としあき)氏
出版社を経て、 1998年から不動産調査会社にて不動産マーケット分析、知見提供業務を担当。不動産市況分析の専門家としてテレビ、新聞、雑誌、ウェブサイトなどメディアへのコメント提供、寄稿、出演を行うほか、年間多数の不動産市況セミナーで講演。2014年9月にHOME’S総研副所長に就任。国土交通省、経済産業省、東京都ほかの審議会委員などを歴任。(一社)安心ストック住宅推進協会理事。
■ 調査概要
対象期間:2021年1月1日 ~ 2021年12月31日
対 象 者 :LIFULL HOME’S ユーザー
┗首都圏版 東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県
┗関西版 大阪府、京都府、兵庫県
┗中部版 愛知県、岐阜県、三重県
┗九州版 福岡県
集計方法: LIFULL HOME’S に掲載された賃貸物件・購入物件のうち、問合せの多かった駅名をそれぞれ集計
分析: LIFULL HOME’S 総研
関連情報:https://www.homes.co.jp/cont/s_ranking/
構成/DIME編集部