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ブランドものや流行には無頓着!?ヨーロッパの富裕層に共通するお金の感覚

2022.02.05PR

【短期集中連載】世界の超富裕層を知る投資マイスターが解き明かすお金の話

【第6回】ヨーロッパの富裕層たちの「お金の感覚」

 スイスの伝統的プライベートバンクの運用哲学や世界の超富裕層の投資哲学にも詳しい、独立系アドバイザリー・ファーム「アリスタゴラ・アドバイザーズ」代表・篠田丈が、経済ニュースの読み解きから具体的な投資アドバイスまで縦横無尽に語っていく短期新連載。今回は、ヨーロッパの富裕層たちの「お金の感覚」について紹介します。

ブランドものや流行には無頓着

「そういえば、クリスチャン・ルブタンの本店ってどのあたりにあるのか、知りません?」

「えっ、ルブタンって何ですか?」

 これは十数年前、パリを夫婦で訪れた際、かつてBNPパリバ証券で上司だったラファエルの自宅に招かれた時の、私の妻とラファエル夫人とのやりとりです。ラファエル・マスノーはBNPパリバ証券の幹部であり、家柄もしっかりした、フランス社会では間違いなく富裕層と目される一人です。彼は以前から、パリ中心部の高級住宅街として知られる第7区で自宅を探していたのですが、ようやくエッフェル塔のすぐそばに築300年ほどの邸宅を購入したので、招待してくれたのです。

 アドレスを頼りに訪ねてみると、ものすごく大きく分厚い木製の扉があり、「本当にここだろうか?」と思いながら呼び鈴を押すと、「タケシ、よく来たな」と満面の笑みを浮かべたラファエルが出迎えてくれました。扉を入ると広い中庭があり、エッフェル塔がすぐそこに見えます。壁一面には知り合いの画家に頼んで描いてもらったというフレスコの風景画がありました。ゲストルームに移り、おいしいワインと手料理を楽しみつつ、話が盛り上がる中で飛び出したのが、冒頭の妻の質問です。

 女性の方ならよくご存じかもしれませんが、「クリスチャン・ルブタン」はレッドソール(赤い靴底)のハイヒールなどで有名なフランスの新進の高級ブランドです。マドンナやレディー・ガガ、サラ・ジェシカ・パーカー、ブリトニー・スピアーズ、日本では浜崎あゆみなどがその愛好者として知られています。

妻としては、フランスの富裕層ならきっと詳しいはず、と思って尋ねたのでしょう。しかし、答えは期待外れのものでした。

 実は、ヨーロッパの富裕層の多くは、「今どんなファッションが流行しているのか」とか「高級車ではこれが今人気」などといった話にはほとんど関心がありません。私が知っている限られた範囲でも、ヨーロッパの富裕層は、自分の年齢とライフステージに合わせた落ち着いたファッションを身に付け、普段の食事なども意外なほど質素です。おそらく小さい頃から、そういうふうに育てられているのです。

 もちろん、富裕層ですから、ブランド物や高級車を所有していますが、それは「人気だから」「有名人が持っているから」、ましてや「値上がりしそうだから」といった理由からではなく、本当に「このブランドが好き」「このメーカーの車が好き」だからです。

 むしろ、持ち物などを自慢したり、見せびらかすことは「品がない」という感覚なのです。とはいえ、ラファエルはやっと手に入れることができた自宅について、「実はこのあたり、なかなか売りものが出なくてね。この家は南フランスの城(キャッスル)より高かったんだ」とさらっと口にしていました。こちらは「えっ!」という感じですが、本人はいたって普通の会話でもしている感じでした。

見た目は普通の人の好い〝おじさん〞

 こうしたヨーロッパの富裕層の姿をもうひとつ、ご紹介しましょう。私たち夫婦が親しく付き合っているスイス人のシュナイダー夫妻です。ご主人のロルフ・シュナイダー氏は、スイスの運用会社であるブルーマー&パートナーズの創業オーナーであり現CEOです。スイスやオーストリアなど多くの伝統的プライベートバンクのエクスターナル・アセット・マネージャー(外部運用会社)として富裕層の資産を実際に運用し、ヨーロッパのプライベートバンクのほとんどの経営者と面識がある正真正銘のエスタブリッシュメントです。

 しかし、見た目は普通の人の好い〝おじさん〞といった雰囲気なのです。口ぶりもごく普通で、偉そうにしたり、自慢気にしたりするようなところはいっさいありません。ただ、いろいろ話をしていると、富裕層らしい片鱗がそこかしこにのぞきます。たとえば、車が好きだというので、「どんな車に乗っているの?」と聞くと「最近はアウディかな」との答え。

「ベンツは?」

「ベンツも持っているけど、最近は乗らないな」

「車は何台くらいあるの?」

「8台だったかな、いや10台だったかも。フェラーリのF40も持っていたけど、合わないので手放しちゃった」

 さらに聞いていくと、自分でレーシングチームを持っているそうで、ニコニコしながら「これが今のうちのチームなんだ」と言って写真を見せてくれます。

「レース会場に行くとき、公道は走れないから専用のトラックを何台か用意しないといけないんで大変なんだよ。そういえば来月、ドイツのレースに出るから見にこないか」などと誘ってくれます。

 車について私はそれほど興味がありませんが、彼とは食道楽という点では一致していて、ロルフたちが日本に来たら日本のおいしいお店に連れていきますし、私たちがスイスにいくと現地の有名なレストランに連れていってくれます。

 どこの店にいっても、いい席に案内され、素敵な料理が出てきます。日本ではあまり知られていませんが、スイスはワインが素晴らしく、そんなスイスワインがずらりと並んだセラーの中にわざわざテーブルをセットしてもらい、自分たちで好きなワインを取り出し、飲み比べしたりすることもあります。彼からは何もいいませんが、特別なお客さんなんだというのがすぐ分かります。

お金の種類を4つに分ける

 そんなヨーロッパの富裕層たちがよく口にするのが、お金をその目的や性質によって分類するということです。人によって多少、違いがありますが、大まかには次の4つに分けることが多いようです。

① 日常的に使うお金
② 事業のために使うお金
③ 子孫のために守るお金
④ 社会のために使うお金

①の「日常的に使うお金」には彼らの感覚で〝ちょっとした〞贅沢も含まれますが、そこには一定の上限が決められており、見栄を張るための無駄な出費などは意味がないと考えています。

②の「事業のために使うお金」ですが、ヨーロッパの富裕層は一般的に自ら手掛けているビジネスがあり、そのための事業資金を確保しています。そこから生まれるキャッシュフローは再度、事業に充てられるほか、日常的に使うお金や寄付など社会のために使うお金、さらには子孫のために守るお金に充当されたりします。日本のいわゆる地主層が資産管理業しか行っていなかったりするのとは、少々異なるのです。

③の「子孫のために守るお金」は、伝統的なヨーロッパ富裕層の資産の中核をなすお金です。これについては通常、信託や財団を設立してそこで管理し、運用についてはプライベートバンクやファミリーオフィスに任せています。

運用において重視されるのは、お金を「増やす」のではなく減らさずに、ファミリーの次代へ承継していくこと。ただ、当然ながら現状維持の運用成績でよしとするのではなく、ファミリーで営むビジネスに適正な予算を回しながら、向こう数百年を見据えてファミリーがさらに発展していく未来を目指して、資産を管理します。基本的に運用はプロに任せきりですが、求めるレベルは決して低くありません。

 私が印象に残っているのは、先ほど紹介した友人のロルフの息子さんです。息子さんは小さい頃から動物が好きだったそうで、今は南アフリカで広大な土地を取得し、そこで野生動物などの保護を行っています。これもある意味、超長期でファミリーの価値を高めるための一つの投資と言えるかもしれません。

④の「社会のために使うお金」については、伝統的な「ノブレスオブリージュ」の考えに基づくもの、といえばわかりやすいでしょうか。

 日本と比べて、ヨーロッパでは寄付文化が人の精神に完全に根付いています。ヨーロッパの伝統的富裕層は、赤十字をはじめ、難病の人や貧困に苦しむ人を救済する団体に相当額の寄付をしているのが当たり前です。多くの富を得たら一定分は社会に還元する、という考え方で、私たちからすれば驚くような額を社会貢献に投じます。

 一方、日本では10年ほど前、上場している大手製紙会社の三代目がマカオやラスベガスの賭博の掛け金や負けで100億円以上の損失を出した事件がありました。その清算のため関連のファミリー企業から80億円以上を不正に引き出し逮捕、起訴され、実刑判決を受けたのです。未上場のファミリー企業の株式の9割を創業家が保有しており、三代目はたまたま現金が足りなかったからファミリー企業から借りたという意識だったようです。

日本人にはヨーロッパ式が向いている

 ヨーロッパの富裕層のお金との付き合い方は、派手さもなければ特別なテクニックもありません。日本人の感覚で言えば「退屈」といってもいいでしょう。しかし、それを10年、20年どころか何十年も続けるところに、凄みがあります。彼らは一族の歴史の積み重ねの中で、「変わらないこと」の大切さをDNAとして受け継いでいるのです。

 本来、日本人は伝統的に家族のつながりを大切にし、国の歴史も長いです。根本的には、ヨーロッパのような文化にむしろ近い部分があると思います。実際、日本でもいわゆる名家といわれるような、江戸時代あるいはそれ以前にルーツを遡って繁栄しているような家は存在します。そんな家柄の人たちは、ヨーロッパで私がみてきた「本当のお金持ち」に近いマインドを持っているように感じるのです。逆に、近年になって日本に急にアメリカ的な成金が出てきたのが、むしろイレギュラーなのです。

 皆さんも、お金について考えることをきっかけにヨーロッパの流儀を知り、家族の永続的な繁栄を意識することができると素晴らしいと思います。

取材・構成/フォーウェイ(https://forway.co.jp/)仲山洋平、古井一匡

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https://www.shogakukan.co.jp/books/09310698

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文/篠田 丈(シノダ タケシ)

アリスタゴラ・アドバイザーズ代表取締役会長。日興証券ニューヨーク現地法人の財務担当役員、ドレスナー・クラインオート・ベンソン証券及びINGベアリング証券でエクイティ・ファイナンスの日本及びアジア・オセアニア地区最高責任者などを歴任。その後、BNPパリバ証券で株式・派生商品本部長として日本のエクイティ関連ビジネスの責任者を務めるなど、資本市場での経験は30年以上。現在、アリスタゴラ・グループCEOとして、日本、シンガポール、イスラエルの拠点から、伝統的プライベートバンクと共に富裕層向け運用サービスを展開、また様々なファンドを設定・運用、さらにコーポレートファイナンス業務等を展開している。https://aristagora.com/

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