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ついに登場!Nikonのフルサイズミラーレス「Z9」を4本のレンズで撮り比べてみた

2022.01.29

■連載/ゴン川野の阿佐ヶ谷レンズ研究所

電子シャッターで完全消音を実現

Nikonプロ用カメラと言えば銀塩時代のNikon Fから、機関銃のようなシャッター音とモータードライブの巻き上げ音が鳴り響き、撮影現場が戦場のように感じられたものだ。私もシャッター音が好きでNikon「F5」を持っている。フィルム自動巻き取りの音までシビれるのだが、デジタル化されると静音化が重視され、どんどん音は小さくなった。そして、遂にミラーレスのハイエンド「Z 9」で完全に無音になった。

その理由は電子シャッターの採用、そしてメカニカルシャッターは排除された。これによって秒120コマの高速連写や1/32000secの超高速シャッター速度を実現している。また、EVFも偽りのブラックアウトフリーではなくリアルタイムの画像を表示し続ける「Real-Live Viewfinder」を搭載する。無音ではシャッターを切るタイミングが分かりにくいだろうという配慮からダミーのシャッター音をスピーカーから出せるのだが、この音が私にはいただけない。ファームウエアのアップデートで複数の音色から選べるようにして欲しいものだ。

今回は4本の交換レンズを使ってZ 9の魅力を引き出すため写真家、小平尚典氏と共に横浜を中心に作例を撮影した。

シャッター幕はないが、電源スイッチに連動するセンサーシールドが撮像素子を保護する機能を搭載

インターフェイスは従来と同じでNikonユーザーなら操作は迷わない。上面表示パネルは「D6」よりも小型化されている。これはZシリーズの流れをくんだのだろうか。私は大きい方がいいと思った

MODEボタンと思わせて、しっかりロック機構付きダイヤル兼用になっている

背面モニターはタテヨコ4軸のチルト式を採用。タテ位置にも対応したが自撮りは無理だった

AFは犬、猫、鳥など世界最多9種類に対応

ミラーレスのメリットと言えば、ほぼ画面全体をカバーする広いAFエリアと瞳認識など小さいな範囲での精密なピント検出である。これに対して一眼レフは高速追尾AFや低輝度でも確実に合焦などのメリットがあった。Z 9は高速AF演算とディープラーニング技術を使い、3D-トラッキングにZシリーズのミラーレスで初対応、低輝度は-8.5EVまで対応する。

被写体検出は人物、犬、猫、鳥、車、バイク、自転車、列車、飛行機の9種類で、人間と動物は切り替えなしの自動検出設定ができる。モードもワイドエリアAF、オートエリアAF、3D-トラッキング、ターゲット追尾AF(動画撮影時)から選択できる。これらを駆使すれば、どんなジャンルでもAF最強と言えるはずだ。

3D-トラッキングと人物と動物の自動検出設定を選択した画面

「NIKKOR Z MC 50mm f/2.8」重さ約260gの軽量実力派マイクロレンズ

Z 9はハイエンドだけあって重い。電池込みで1340gもある。これにレンズを加えると1.5kgをカンタンに超えてしまう。そこで軽いレンズとして重さ約260gで等倍マクロ撮影に対応した「NIKKOR Z MC 50mm f/2.8」を借用。フルサイズなので開放絞り値F2.8でも充分にボケる。今回は贅沢にもスナップメインでほとんどマクロとしては活躍していない。普通の50mmでいざという時は、レンズ面約5cmまで寄れる単焦点というキャラ設定で使った。

レトロなデザインのねじ込み式フードが付属、レンズ全長は66mmとかなり短い

硬すぎない描写で背景のボケ味もなかなかいいのでポートレートにもいい、モデルは亜希子さん
Z 9 NIKKOR Z MC 50mm f/2.8 1/320sec、F3.2+0.33、ISO100

横浜、山下公園、手前のカップルでなく奥で作業する人にピントを合わせた
Z 9 NIKKOR Z MC 50mm f/2.8 1/1250sec、F3.2+1、ISO100

雲ひとつない晴天で、寺院の屋根の飾りを撮影。色合いは派手過ぎずかなり正確に再現された
Z 9 NIKKOR Z MC 50mm f/2.8 1/400sec、F14+0.67、ISO400

上の画像を100%で切り出すと、肉眼ではよく見えない屋根の飾りがハッキリ見えてきた
Z 9 NIKKOR Z MC 50mm f/2.8 1/400sec、F14+0.67、ISO400

横浜と言えば中華街で中華料理、せっかくなのでマクロ撮影、美味しそうな色合いで撮れた
Z 9 NIKKOR Z MC 50mm f/2.8 1/25sec、F3.5-0.33、ISO400

新世代の標準レンズ「NIKKOR Z 20mm f/1.8 S」

明るいレンズの代表と言えば50mmから85mmぐらいを思い浮かべるが、最近は超広角レンズも明るい。現代の標準レンズが28mmと想定すれば、その付近の焦点距離で明るいレンズがあってもいい。明るければ広角でも背景をボカせるし、暗さに強くなり、感度を上げる必要がなくなる。しかし、良いことばかりではなく、レンズは大きく、重くなり、価格は上昇する。「NIKKOR Z 20mm f/1.8 S」はZマウントの中でも特に高い社内基準を満たしたS-Lineシリーズの超広角レンズである。ちなみに開放絞り値F1.8のレンズは全てS-Lineであり、明るいレンズ=高性能レンズと考えて間違いない。

撮影してみると、歪みが少なく非常にヌケがいい。28mmか24mmを標準レンズと考えれば、20mmは新世代の広角レンズと言える。実用性から見れば14mm~30mmが使いやすいが、これ1本で決める勝負レンズとしては20mmF1.8は有望株であり、Zマウントカメラオーナーにぜひ使って欲しいレンズだ。

約505gと超広角ズームよりヘビー級だが光学性能はピカイチ。コントロールリングも幅広だ

超高速電子シャッターを使い昼間でも絞り開放で撮影可能、明るいレンズのボケが楽しめる
Z 9 NIKKOR Z 20mm f/1.8 S 1/8000sec、F1.8+0.67、ISO400

さすが現代のレンズは周辺光量が落ちない、雲ひとつない空のグラデーションが見事だ
Z 9 NIKKOR Z 20mm f/1.8 S 1/8000sec、F2.5-1、ISO100

最短撮影距離はセンサーから20cmなのでマクロ撮影にも強い、広い画角を活かした構図で撮った
Z 9 NIKKOR Z 20mm f/1.8 S 1/2000sec、F1.8+0.33、ISO400

超広角なので狭い場所も得意、狭い所を広く見せる効果も得られる
Z 9 NIKKOR Z 20mm f/1.8 S 1/1000sec、F1.8+0.33、ISO400

思いがけずに現れたダイナミックな光景をスナップ、ボディ内手ブレ補正機能のおかげでブレ知らずだ
Z 9 NIKKOR Z 20mm f/1.8 S 1/80sec、F2.5+0.67、ISO400

驚異のコンパクトサイズ超広角ズーム「NIKKOR Z 14-30mm f/4 S」

Zマウントで最も広角なのは意外にも単焦点レンズではなく、超広角ズームなのだ。選択肢は2つで「NIKKOR Z 14-30mm f/4 S」または「NIKKOR Z 14-24mm f/2.8 S」である。王道を行くのが開放絞り値F2.8通しの14-24mmだが、重さ約650gで望遠側が24mmというのがネックになり、常時携帯して1本で万能とはいかない。それに対して開放絞り値はF4だが、望遠側は30mmまであって重さは約485gの14-30mm。ミラーレスなら明るいEVFが使える、さらに広角系のレンズは絞って使う事が多いので、14-30mmの方が実用性は高い。ということで今回は14-30mmを借用した。これに加えて24-120mmの2本があれば、一般的な撮影は楽々こなせるに違いない。

Z 9とのバランスもいい。Zマウントのボディを手に入れたら、最初に揃えたいレンズだ

30mmで撮影すると歪みがなく標準レンズのようだ、亜希子さんも歪まない
Z 9 NIKKOR Z 14-30mm f/4 S 1/500sec、F4+0.67、ISO100

14mmまで引くと風景がダイナミックに変化した、中心部はパースも付かず人物も自然に撮れる
Z 9 NIKKOR Z 14-30mm f/4 S 1/400sec、F4、ISO100

太陽が写り込むような逆光でも気になるゴーストやフレアは発生せず高性能レンズの実力を発揮
Z 9 NIKKOR Z 14-30mm f/4 S 1/2500sec、F4、ISO100

横浜で見つけた面白い被写体、14mmで見ると広大な空間を占めていることが分かる
Z 9 NIKKOR Z 14-30mm f/4 S 1/1250sec、F5+1、ISO100

中華街で流行中のイチゴ飴のダミーサンプル。30mmで近寄ると背景はいい感じにボケる
Z 9 NIKKOR Z 14-30mm f/4 S 1/400sec、F4+0.33、ISO100

ゴチャゴチャした中華街のカオス感を切り取る。ズームなので思い通りの構図が狙えた
Z 9 NIKKOR Z 14-30mm f/4 S 1/1000sec、F4+0.67、ISO400

柔らかい描写とボケ味の中望遠レンズ「NIKKOR Z 85mm f/1.8 S」

85mmと言えばポートレートレンズなので、亜希子さんに撮影をお願いする予定だったのだが、スケジュール調整がうまくいかず、別のレンズで登場してもらった。ポートレート以外に何を撮るのか、それが問題だったが、地元の阿佐ヶ谷界隈を散歩してスナップするうちに、自然な距離感で何でも撮れることが分かってきた。単焦点なので被写体が入りきらなければ、部分的に切り取る構図になるが、それでもいいと割り切るか、85mmで収まりのいい被写体を探すことになった。

明るいレンズのイメージ通り前玉が大きい、重さは約470gで見た目より軽く感じる

手前の赤を活かして右側は絞り開放でボカしている。1/25secでも手ブレの心配はなかった
Z 9 NIKKOR Z 85mm f/1.8 S 1/25sec、F1.8、ISO400

直射日光を浴びて輝くミニクーパー。クラシックカーらしい色合いが再現された
Z 9 NIKKOR Z 85mm f/1.8 S 1/2000sec、F3.5+0.33、ISO160

商店街を歩く親子。絞りを開けると人物が浮き上がりドラマの1シーンのようだ
Z 9 NIKKOR Z 85mm f/1.8 S 1/50sec、F1.8、ISO400

旧中杉通りの飲み屋のちょうちん、絞り開放でキレイな玉ボケが得られた
Z 9 NIKKOR Z 85mm f/1.8 S 1/25sec、F1.8、ISO400

写真・文/ゴン川野

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