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あんなに明るくて優しかった母親が…恐ろしい詐欺の手口を解説するNetflixのドキュメンタリー「究極のペテン師:人を操る天才たちの実像」

2022.01.28

明るく優しく家族思いだった“よき母親”が、なぜ卑劣な詐欺師にコントロールされてしまったのか。

2022年1月18日よりNetflixで独占配信中の『究極のペテン師: 人を操る天才たちの実像』は実際に起こった詐欺事件についての犯罪ノンフィクションシリーズ。

英国アカデミー賞に輝いたドキュメンタリー『The Imposter (原題)』の製作陣が手掛けた。

あらすじ

英国スパイ“MI5捜査官”を自称して次々とターゲットを騙し、財産を奪ってきた詐欺師ロバート・ヘンディ・フリーガード。

ロバートが狙いを定めたのは、シングルマザーの女性サンドラさんだった。

サンドラさんは元夫マークさんと14歳で出会い、20歳で初恋を実らせて結婚。1男1女に恵まれたが、数年後に離婚。

しかし離婚後も元夫とは良好な関係を続け、協力しながら子育てをしてきた。

シングルとなったサンドラさんは、新たな恋愛を求めてマッチング・サイトに登録。

詐欺師ロバートはデビッドの偽名を使い、サンドラさんに急接近した。

コミュニケーション能力が高くお洒落でリッチな雰囲気の“デビッド”に、サンドラさんはすぐに魅了された。

しかし“デビッド”の全てが嘘であり、罠だった。

みどころ

元夫も子どもたちもみなサンドラさんのことを庇い、決して悪くは言わない。

明るく優しく、歌うことが大好きだったという被害者のサンドラさん。娘ソフィーさんの友達からも羨ましがられる、理想の母親だったという。

あまりにも大胆な詐欺事件が報道されると、「被害者にも落ち度が大いにあったのではないか」と世間から疑われることは少なくない。

実は被害者バッシングは「自分は被害者のようにはなりたくない」「自分は被害者とは根本的に違うはずだ」という、不安や恐怖に基づく心理だという説もある。

しかし残念ながら、サンドラさんはどこにでもいる普通の女性であり、彼女のような被害に遭う可能性は誰にでも十分にある。

本作を見てつくづく思ったのは、初めの小さな違和感を見逃してはならないということだ。

たとえば、息子ジェイクさんが“デビッド”にさりげなく名字を尋ねると、「気にするな」と返事が。

いや普通気にするし怪しすぎるだろう……と突っ込みを入れたくなるが、久しぶりの彼氏に嬉しそうな母親に気兼ねして、ジェイクさんやソフィーさんたちはそれ以上追及できなかったのかもしれない。

ターゲットを家族から切り離して孤立させるなど卑劣な詐欺の手口も細かく紹介されており、詐欺被害を防ぐ教材としても参考になりそうなドキュメンタリーだ。

似たテーマの作品としては、Netflixの『ダーティ・ジョン-秘密と嘘-』がある。

シーズン1では、被害者を家族ぐるみで苦しめた結婚詐欺師ジョン・ミーハンの事件をドラマ化。本作を観て気に入った人は、ぜひ併せてチェックしてみてほしい。

もちろん加害者である詐欺師が一番悪いことは間違いない。

しかし、詐欺の被害に遭わないよう自分がしっかり気をつけておかないと、大切な家族にまで辛い思いをさせることになりかねない。

誰もが持っているであろう寂しさや弱さからくる、心の隙。

それが原因で、家族も財産も何もかもを一瞬で失うこともあるということを教えてくれる作品だ。

Netflixシリーズ『究極のペテン師: 人を操る天才たちの実像』
独占配信中

文/吉野潤子

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