「年魚」は、古くから人々に親しまれている魚の名前ですが、読み方やどの魚のことなのか知らない人もいるのではないでしょうか。そこで、正しい読み方と併せて意味や由来も紹介します。別名についても触れるので、知識を深めましょう。
年魚の2つの意味
「年魚」には、2つの意味があります。まずは、それぞれの意味を確認しましょう。正しい読み方についても紹介します。
年魚の読み方は「アユ」
「年」と「魚」は、どちらも小学校で習う簡単な漢字ですが、「年魚」と組み合わさると正しく読めない人が多いでしょう。読み方は「アユ」です。
一般的には「鮎」と書くことが多く、「川をくだる」という意味の「あゆる」が語源とされています。「魚」と「占」が組み合わさっているのは、古代の日本で占いに用いられていたというのが理由のようです。
「アユ」は日本全国に広く分布している魚で、鮮やかな体色と細身な姿が特徴です。旬である初夏に、「塩焼き」を楽しむ人もいるのではないでしょうか。
1年以内に誕生・死亡する魚の総称
「年魚」は、寿命が短く「1年以内に一生を終える魚の総称」になります。その代表的な魚が「アユ」なのです。
川魚で海につながる河川に生息しているアユは、秋ごろに生まれて海に移動します。春から夏にかけて成長し、夏の終わりごろから成熟し始めます。秋になると産卵をし、一生を終えるのです。中には琵琶湖のアユのように、湖や流入河川で一生を終えるものもいます。
各河川により異なりますが、一般的な釣りのシーズンは、アユの成長に合わせて5、6月から9月中までになります。毎年、シーズンを楽しみにしている人もいるのではないでしょうか。
アユ以外の代表的な年魚
秋から春にかけて釣りシーズンになる「ワカサギ」も年魚の一種です。成長期に海へ向かうものと湖で過ごすものがおり、数年生きることもあるようです。
河口付近に生息していることが多い「ハゼ」も、寿命が1年と短い魚になります。メスは産卵後すぐに生涯を終えますが、オスは卵がかえったのを見届けてから生涯を終える習性があります。中には数年生き、体長が30cmほどになるものもおり、釣り人を喜ばせることもあるようです。
体長が10cmほどの「シラウオ」も、冬の終わりから春ごろにかけて川に向かい産卵し、1年で生涯を終える魚です。その他にも、「スルメイカ」や「アオリイカ」「ヤリイカ」などイカ類も年魚に含まれます。
年魚は古代から親しまれる魚
年魚は古代にも生息しており、食べられていたと考えられています。いつごろから親しまれていたのでしょうか?また、「鮎」と表記されるようになった由来についても紹介します。
古事記や日本書紀にも登場
「アユ」は「年魚」という表記で、日本最古の歴史書とされる「古事記」や日本初の正史とされる「日本書紀」の中にも登場しています。どちらも奈良時代に完成されたとされているので、古くから日本人にとってなじみのある魚だったことがうかがえるでしょう。
「鮎」は、中国では「ナマズ」を指し、日本でもかつては同様の意味で用いられていたとされています。「アユ」の漢字に用いられるようになったのは、古くから今に伝わる出来事と深い関係があります。
漢字「鮎」の由来となる神功皇后の故事
「鮎」という漢字が用いられるようになったのは、神功皇后の故事が由来です。朝鮮半島の新羅への遠征の際に、皇后が糸の先にエサである米粒をつけて、「魚が釣れたら遠征は成功する」という祈りを込めて占ったといわれています。
そして、釣れた魚が「アユ」だったことから「占魚」とし、のちに「鮎」という字に変わったとされています。
皇后は、鮎が釣れたことを神のお告げと考え、新羅征討を決意したのです。実際に新羅の王を降伏させることに成功したとされています。
アユは香魚と書かれる場合も
「アユ」は、「香魚」と表記されることもあります。由来や天然アユの持つ香りについて紹介するので、豆知識を増やすのに役立てましょう。
良い香りがすることが由来
「香」と「魚」を組み合わせて「香魚」と表記されるのは、アユが良い香りがすることが由来です。「キュウリ」「スイカ」「若草」のような香りと例えられることも少なくありません。
代表的な料理である「塩焼き」は、味だけでなく、良い香りが楽しめる一品として人気です。実際に旬の時期に味わっている家庭もあるのではないでしょうか。
川魚でうろこやはらわたを取り除くなどの下処理がほとんど必要なく、簡単に調理ができるため、キャンプやBBQなどでも人気です。釣りたてのアユに串を刺して調理している光景を見たことがある人もいるでしょう。
良い香りに包まれながら、釣り立てをその場で味わえるのが魅力です。
天然のアユの香りとは?
「アユ」の良い香りは、体内に取り入れた脂肪酸の代謝によるものだといわれています。つまり、アユが何を食べたかによって、香りやその強さが異なるのです。
例えば、コケなどの天然の藻類を多く食べて成長したものは、良い香りがより強く感じられます。同じ川で育っても、上流と下流では藻類の質が異なり、きれいな水が流れる上流の藻類を食べて育ったアユの方が良い香りがするようです。
川によっても香りや風味に違いが出るといわれています。育つ藻類の種類や性質が異なるためです。
なお、人工のエサで育った養殖のアユの場合は、天然もののような香りを楽しめないことが多いようです。旬の時期には、天然のアユを香りとともに楽しみましょう。
構成/編集部