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難読漢字はさまざまあり、テレビのクイズ番組にも多数登場します。「漢字は得意!」という人は『海狸』と書いてどのように読むかご存じでしょうか。この不思議な漢字の読み方や意味、さらには難読レベルの高い動物の和名を紹介します。
海狸の読み方と意味
海狸は、とある動物を漢字で表した言葉です。『水辺に関係がある』『狸っぽい動物らしい』というヒントから、思い当たる動物をイメージしてみましょう。海狸の読み方や意味を紹介します。
海狸とはビーバーのこと
海に狸と書く和名を持つのは、ビーバーです。「海の狸?」と意外に思う人もいるかもしれませんが、動植物の和名には不思議なものが多々あります。深く考えず、『海狸=ビーバー』と覚えましょう。
日本における動植物はもともと特定の名称が決まっておらず、明治維新後に『標準和名』として整えられたといわれます。標準和名とは、『教科書に統一名称を掲載するため』『世界共通の学名に合わせ、種の呼び名を統一するため』に作られた日本式の名称です。
とはいえ、急ごしらえで作られた標準和名には、明確な命名基準を持たないものが多く見られます。海と狸という字を当てるビーバーも、そのような名称の一種かもしれません。
「かいり」「うみだぬき」と読まれる
『海狸』はビーバーのことですが、そのままビーバーとは読みません。読むときは「かいり」「うみだぬき」と読みます。文字からは想像もつかない読み方をさせる標準和名もあるなか、『海狸』の読み方はひねりがありません。比較的読みやすい部類の言葉といえるでしょう。
『海狸』すなわちビーバーは、茶色っぽい毛皮が狸に似ています。どちらも哺乳類ではありますが、分類が異なる点に要注意です。狸は、『食肉目裂脚亜目(しょくにくもくれっきゃくあもく)イヌ科』に属します。一方ビーバーは『げっ歯目ビーバー科』です。
ビーバーを海狸と書く由来は?
ビーバーについて『海の狸』と書くのはなぜなのでしょうか。ビーバーの特徴をチェックしつつ、漢字の由来について探ってみましょう。
ビーバーはダム作りで知られる哺乳類
ダム作りでおなじみのビーバーは、主にアメリカやヨーロッパに住む哺乳類です。体長は60~100cm(しっぽを除く)と大きめで、体重30kg近くになる個体もいます。陸上より水中での暮らしに適していて、撥水・保温性に優れた毛皮や、水かき付きの後ろ足を持つのが特徴です。
一方狸は、木登りが得意な哺乳類です。丸々した様子はビーバーに通じるものがありますが、ビーバーほど大きくはありません。体重もビーバーの方が重く、4~5倍もの差があるといわれます。
両者をそのまま並べた場合「そっくり」と感じる人はまれでしょう。ビーバーと狸は、見た目・特徴とも、異なります。ビーバーに『狸』という字が当てられたのは、ただ「それっぽいから」なのかもしれません。
川に生息するのに海がつく理由は不明
川の側で暮らすビーバーは、海とは無縁です。それにもかかわらず、なぜ和名では『海』という文字が使われているのでしょうか。
実際のところ、この理由についても、はっきりしたことが分かっていません。ただ、その昔の日本では、『水がたくさんあるところ』『湖』などを『海』と呼ぶことがあったそうです。
『海狸』の海も外海とつながる大きな海ではなく、『水辺のエリア』といった意味と考えられます。
他にもいる難読和名を持つ動物を紹介
『海狸と書いてビーバー』のように、難読な和名を持つ動物は他にもたくさんいます。和名の面白さに興味を持った人は、他の動物についてもチェックしてみてはいかがでしょうか。
海狸と同様に、読み方の難しい動物の和名を紹介します。
くちばしが特徴的な「鴨嘴」
『鴨(かも)』に似ていて『嘴(くちばし)』に特徴がある、と考えると分かりやすいかもしれません。正解は、『カモノハシ』です。
カモノハシはオーストラリア・タスマニアにのみ生息する哺乳類で、哺乳綱カモノハシ目カモノハシ科に属します。足とくちばしは鴨やアヒル、しっぽはビーバー、胴体と毛皮はカワウソに似ていて、『自然界で最も奇妙な生物』といわれることもあります。
またカモノハシは、『ワシントン条約』の規制対象種です。日本では動物園でさえ飼育しているところはなく、実物を見たい人は、オーストラリアに行くしかないでしょう。
水族館の人気者「海獺」
『海』と『獺(カワウソ)』を組み合わせた言葉です。海に住んでいて、カワウソに似ている動物を想像すると分かりやすいでしょう。
海獺は、『ラッコ』と読みます。食肉目イタチ科カワウソ亜科ラッコ属で、カワウソと同じ『イタチ科』の動物です。どちらも元は同じ『イタチ』で、川に適応したのが『カワウソ』、海洋に適応したのが『ラッコ』といわれます。『海のカワウソ』と書くのは、あながち間違ってはいないでしょう。
ラッコは、日本ではアニメの主人公になるなど、非常にポピュラーな動物です。しかし現実には個体数が減少しており、絶滅危惧種に指定されています。現在日本の水族館でもラッコの飼育数は減っており、実物を見るのは難しいかもしれません。
げっ歯類最大の動物「水豚」
『水辺の豚』と書きますが、実際にはネズミの一種です。ただし体が大きいため、ネズミよりは「豚っぽい」といわれることが多いかもしれません。
『水豚』とは『オニテンジクネズミ』、すなわちカピバラです。ネズミ目(げっ歯目)カピバラ科に属し、体長は約100〜130cm、体重は最大で50~60kgにもなります。のんびりしていてかわいい印象がありますが、口内に大きく鋭い歯を持っているのが特徴です。
カピバラは草食で水辺の草を好みますが、水中で暮らすわけではありません。ただし、泳ぎに適した身体的特徴を持っているため、和名に『水』という文字が付くのは道理にかなっているといえるでしょう。
構成/編集部