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コロナ禍で受診を控えている人はおさえておきたい「がん検診」最新事情

2022.01.22

コロナ禍で、がん検診を受ける人が減っているという実態がある。これにより、がんの発見が遅れる恐れがあるといわれる。会社勤務の場合、年一回はがん検診を受ける機会があることも多いはずだ。今一度、がん検診の必要性について各人が考えてみる必要がある。

また、がん検診の職域における受診勧奨のDX化や、簡易化されたがん検査も登場している。今回は、それらのがん検診に関するトピックスを紹介する。

コロナ禍でがん検診を控える傾向

ジョンソン・エンド・ジョンソン メディカル カンパニーが2021年11月に、全国の20~79歳の男女15,000人を対象に実施したアンケート調査「健康診断・人間ドック、がん検診等、医療受診に関する意識・実態調査」よると、健康診断・がん検診の受診を「控えたい」および「やや控えたい」と回答した人の割合は、昨年の5割台から3割台に減少し、改善傾向が見られたものの、依然として「受診予定はない」あるいは「わからない」とする人は少なくない結果となった。

「がん検診」を「受ける予定はない」または「わからない」と回答したのは、約6割にも上った。その理由として「コロナ感染リスク」や「からだの変調を感じない」、「健康状態に不安を感じない」といったものが多かった。

また同社は同時にがんの診断・治療を行う全国の医師300人に対しても調査を行ったが、その結果からは、「コロナ感染拡大への不安を理由に健康診断やがん検診などが控えられること」を危惧している医師が8割以上、「がんが進行した段階で病院に来る患者が増えること」を危惧している医師が6割以上存在していた。

「がん検診」や「適切な医療受診」に関する生活者と医師との認識の差があることが分かった。

がん検診を控える傾向に医師が警鐘

同社の本調査にコメントを寄せていた、公益財団法人がん研究会 有明病院 病院長の佐野武氏は、がん検診を控える傾向に警鐘を鳴らしている。

「公益財団法人日本対がん協会の発表によれば、2020年における5大がん(胃、大腸、肺、乳、子宮頸)の検診では、2019年と比較して早期がんの発見が明らかに減少しました。

もし2020 年に前年と同じように検診や通院ができていれば発見できたであろうがんが、約9%あったと推測されます※」

公益財団法人 日本対がん協会「2020年のがん診断件数 早期が減少 進行期の増加を懸念 日本対がん協会とがん関連3学会が初の全国調査」

「がん検診はがんの早期発見のために重要です。今回の調査では、検診の受診予定がない方の多くが、『からだの変調を感じないので』あるいは『健康状態に不安はないから』と回答されています。しかし、がん検診の目的は症状のない人たちの早期のがんを見つけて治すことだということを忘れないでください」

「がんの多くは着実に進行し、がん検診が半年、あるいは1年遅れることで、より進んだ状態で見つかることになります。実際当院でも、毎年受けていた検診をコロナの感染を恐れて受けないでいたところ、症状が出現して進行したがんが見つかった人や、手術ができない状態まで進行してしまった人もいました。せっかく毎年検診を受けていたのに、1回先延ばししてしまったことで、早期の発見を逃してしまうことがあり得るのです」

「これまで検診を受けていたのに現在控えているという方は、『コロナの感染拡大がなければ、自分はどんな行動をとっていたか』を考えてください。また検診を予定していない方は、症状がなくても検診でがんが見つかるかもしれないということを忘れないでください。日本のがん治療に及ぼすコロナの影響が最小限で済むことを祈るばかりです」

調査結果と医師の呼びかけを踏まえて、一度、がん検診を捉え直したほうがいい時期といえる。

進化するがん検診・がん検査

そんながん検診だが、時代の流れと共に、職場の受診勧奨がDX化したり、手軽に受けられるがん検査がぞくぞく登場するなど、進化を遂げている。ここでは、2つのトピックスを紹介する。

1.職域におけるがん検診 受診勧奨のDX化

職域においては、がん検診の受診勧奨が課題として挙げられる。予防医療・健康増進を中心としたDX支援を行う株式会社プロセシングは、LINEを活用したがん検診の受診勧奨のサービスを提供している。

同社の代表取締役、横垣祐仁氏によると、富士通の健康保険組合の事例では、がん検診の問い合わせや予約、結果の参照まで、すべてLINE上で行うことができるようにしたという。従来は被扶養者や退職者には紙面で案内状を送付していたため、相当な時間とコストがかかっていたが、それが削減されることが期待できる。

事前にLINEの友達登録が必要だが、富士通はここに500円のインセンティブを付けたことで、開始1ヶ月で約1万人もの友達登録が実現したという。

また、受診率向上への効果も認められた。未受診者に年賀状を兼ねた勧奨メッセージを送ったところ、LINEの場合は35%が受診、従来のハガキの場合は6%が受診とおよそ6倍の差が出たという。

このLINEを活用したがん検診の受診勧奨事業は、現在、静岡県浜松市でも実施しているそうだ。

「浜松市様では、昨年から子宮頸がん検診受診勧奨の実証事業を行っております。これまでの紙による受診勧奨に加えてLINEを取り入れることで、特に、20代、30代の若年層における子宮頸がん検診の受診率を上げることが狙いです」

●がん検診後の「受けっぱなし」にも課題

職域ではがん検診が「受けっぱなし」になることが多く、精密検査の受診までフォローされないことが多いと横垣氏は述べる。同社は、この部分の支援をすべく、精密検査の受診勧奨支援サービスにも取り組んでいるという。

「がん検診は、受診させることがゴールではなく、陽性であった人には精密検査を受けていただくことが非常に大事です。そこに至るプロセスは以下のようになります」

(1)がん検診の結果をすべて集める
(2)要精密検査となった対象者を把握する
(3)精密検査の受診勧奨をする
(4)精密検査の受診率を把握する

「昨今、(3)や(4)が実施されていないと問題視されており、色々な実証事業が行われているのですが、実は職域の現場では(1)や(2)ができていないことが多く、そこから取り組むべき会社や健保が多いです。まずは自社や自組合で実施しているがん検診の結果がすべて集められているか、さらに判定結果が整っていて、要精密検査の対象者が把握できる状況なのか、ということから確認し、必要に応じて、例えば委託先検診機関との交渉を行うといった見直しを図る必要があるかと考えます」

今後、LINE等でのがん検診の案内が届く会社員が増えるかもしれない。LINE上で申し込みができるのも便利だ。不注意で「受けっぱなし」になるのが防げる仕組みが、今後多数の企業でできるのを期待したい。

2.尿検査によるがん検査等、簡易化された検査がぞくぞく登場

がん検診といえば、検査方法によっては多少の痛みや不快感を伴うことがある。そうした中、より手軽にチェックできる、新しい検査方法がぞくぞく開発されている。

その一つとして、近々、尿検査によって「卵巣がん」「肺がん」を早期発見するがんリスクスクリーニング検査サービスの提供が始まる。それは名古屋大学発のベンチャー企業、Craif株式会社による「miSignal(マイシグナル)」で、2022年2月より医療機関を通じて順次、提供開始するという。

同サービスは、尿中に排出される「マイクロRNA」というがんの発生や進展と深いかかわりのある微量な分子を、独自の技術により効率よく捕捉。AI(人工知能)を組み合わせ、高精度にがんを早期発見することを目指した検査だ。早期のがんリスクも高い精度で検出することができるという。

検査を受ける方法も簡単。医療機関へ尿を提供するだけだ。

miSignalにより、がん検診を受ける側はどのような変化が期待できるだろうか。CEOの小野瀨氏に尋ねた。

「がんの早期発見は健康寿命の延伸や医療費の抑制に直結する世界の最重要課題の一つです。しかし、既存の技術ではがんの早期発見はむずかしく、検査自体にも痛みや不快感が伴ったり、大型の検査機器や医療従事者のリソースが必要になったりと、多くの人が定期的に受け続けるには不向きであるのが現状と考えます。その点miSignalは受検者が、少量の尿を医療機関へ提供するだけで、負担なく気軽にがんのリスクチェックを行うことができます。また、マイクロRNAは多くの他のバイオマーカーと比較して、早期のがんの検出に強みを持つといわれています」

がんが手軽な検査でチェックできるのは、忙しいビジネスパーソンにとってもありがたいものだ。

しかし現状、がん検査は、国が予防医療行為として認めている「検診」いわゆる「対策型検診」とは異なる位置付けであることは理解したい。がん検査は、あくまで簡易的にチェックできるものと考え、対策型がん検診を受けることを基本ととらえよう。

現在、がん検診の受診を控える思いがあるビジネスパーソンは、今一度、自分や家族の将来のためにも、できうる限り、感染対策をしっかりとしながら、受ける方向で検討したいものだ。

【出典】
ジョンソン・エンド・ジョンソン メディカル カンパニー「健康診断・人間ドック、がん検診等、医療受診に関する意識調査」2021年版

取材・文/石原亜香利

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