南勝「おとり広告(おとり物件)」について調査
1~3月は賃貸物件も分譲物件も良く動く時期と言われている。そこで、一級建築士兼宅地建物取引士として、不動産・土地の選び方などについて様々なノウハウを伝えている印南 和行氏が代表を務める南勝は、自身が住む家や部屋をポータルサイトで探し、不動産会社に問い合せや訪店したことがある20歳以上50歳未満の男女1,023人を対象に「おとり広告(おとり物件)」について調査した。
4人に1人が『問い合わせたらすでに成約済み。他の物件を紹介された』経験あり
「ポータルサイトで気になった物件について、不動産会社に問い合わせや訪店した際、このような経験はあるか」尋ねた。
最も多かった回答は47.0%の「あてはまるものはない」だったが、「問い合わせたら、その物件は成約済みと言われ、他の物件を紹介された」は26.6%、「訪店したら、その物件が成約済みと言われ、他の物件を紹介された」も24.2%と比較的多く、4人に1人が、問い合わせたらすでに成約済みで他の物件を紹介された経験があることがわかった。
2割強がおとり広告に騙された経験ありと自覚!
続いて、「『おとり広告(おとり物件)』という言葉を知っているか」尋ねたところ、「知らない」が40.4%で最も多く、「なんとなく知っている」は25.7%、「よく知っている」18.4%、「聞いたことがある」15.5%となった。
次に、「『おとり広告(おとり物件)』に騙されたことはあるか」尋ねた。「ない」が42.7%で最多だが、「ある」は21.1%、「わからない」も36.2%いた。
建築や不動産、土地のプロ・印南 和行(いんなみ かずゆき)氏が解説!
ネットで部屋や家を探していて、「この物件いい!今すぐ不動産会社に問合せしよう」と思っていたら、ちょっと待って!まずは、私の話を聞いてみてください。聞いておかないと後悔してしまう可能性があるからです。
あなたは「おとり広告(おとり物件)」をご存じですか?おとり広告(おとり物件)とは、ポータルサイトや不動産会社のホームページなどに公開されていたり、広告に掲載されていたりするものの、実際にはすでに成約済みの物件やそもそも募集自体行なわれていない物件のこと。
またはそのような物件を掲載している広告のことです。公益社団法人 首都圏不動産公正取引協議会が行った2020年に行った「インターネット賃貸広告の一斉調査報告(第8回)」によると、調査対象物件のうち12.2%がおとり広告と認められました。しかし、おとり広告は巧妙に仕組まれているので、なかなか気づかないのが実情です。
おとり広告に惑わされて、大切な時間を浪費したり、希望と異なる物件の契約をしてしまったりということにならないように、「おとり物件とはどのような物件なのか」「おとり広告なぜなくならないのか」「おとり広告に騙されないためのコツ」をお伝えします。おとり物件という落とし穴に気をつけてください。
おとり物件とはどのような物件?
<例1> 掘り出し物件(他の物件よりも目立っていて人目を惹くような物件)
間取りも立地も掲載写真も良く、家賃も相場より少し安いので、気になって早速不動産会社に行ってみたら、「あの物件決まってしまったんです。人気でしたから」と言われ、ガッカリしていたら、別の物件を紹介された。それ、おとり物件の可能性大です!
<例2> 理想の設備が整っているのに相場より少し安め
バス・トイレ別の物件を探していたら、ウォシュレット付き。しかも、オートロックも付いているなど、設備が整っている割に家賃は相場よりも少し安いくらい。理想の部屋を見つけられたと喜んでいたら、内見(内覧)の直前になって、「昨日お申し込みが入ってしまって」と言われた。これもおとり物件の可能性大です!
おとり広告はなぜなくならない?
色々と迷惑なおとり広告。おとり広告は違法ではないの?という疑問が湧きます。もちろん違法です。
各関連省庁から注意を喚起する通達も出ています。国土交通省から「おとり広告の禁止に関する注意喚起等について」という通達も出されており、その中で、実際には存在しない物件などの虚偽広告について禁止とされています。にもかかわらず、なくならないのはなぜでしょう。
それは、おとり広告をするとお客さんを集められるからです。違法とわかっていても、多くのお客さんに来店してほしいからと、おとり広告をする会社もあります。
おとり広告がなくならないもう1つの理由はバレにくいからです。なぜなら、個人では、物件情報の本当の情報を調べることは難しいからです。
おとり広告に騙されないためのコツ
<コツ1> 電話で念押し
不動産会社に直接電話して、「まだ空いていますか?」「おとり物件ではないですよね?」と伝えてください。さすがに、このような電話をもらったら、担当者もきちんと確認して返事をくれると思います。
もし、おとり物件だったなら、「すみません。もうその物件は決まったようです。他の物件もありますので」などと連絡が来るかもしれません。
<コツ2> 案内は現地集合
まず店舗にお客さんを誘導して別の物件を案内したいために、おとり物件を使うことが多いので、内見は現地集合にすると良いでしょう。しかし、中には現地集合でも別の物件を紹介してくる担当者もいるので、100%ではありません。
<コツ3> 更新日をチェック
更新日をチェックすることは重要です!更新日が1週間前になっているまたは更新予定日を過ぎているのにそのままになっている場合は注意しましょう。更新し忘れている場合もありますが、更新日についてはしっかりと確認しましょう。
印南 和行(いんなみ かずゆき)プロフィール
一級建築士。宅地建物取引士。株式会社南勝 代表取締役。日本長期住宅メンテナンス有限責任事業組合技術顧問でもあり、ファイナンシャルプランナー(AFP)、一級建築施工管理技士、不動産コンサルティング技能試験合格など多くの建築・不動産関連の資格を保有している。2014年には、週刊住宅新聞社から『プロが教える 資産価値を上げる住まいのメンテナンス』を発売し、翌年の「日本図書館協会選定図書」に選ばれる。
また、2020年に一級建築士ユーチューバーとして「住宅専門チャンネル YouTube不動産」(https://www.youtube.com/channel/UCu5pac3VmabJ-OvFiPxlzIA)を開設し、建築や不動産、土地などについて様々なノウハウを伝えている。
調査概要
調査期間:2022年1月10日
調査手法:インターネット調査
調査地域:全国
調査年齢:20歳以上50歳未満
調査地域:関東1都3県(東京都・神奈川県・千葉県・埼玉県)、近畿2府1県(大阪府・京都府・兵庫県)
調査対象:自身が住む家や部屋をポータルサイトで探し、不動産会社に問い合せや訪店したことがある男女
サンプル数:1,023人
※YouTube不動産 調べ
構成/DIME編集部