何でも上司の言うことを聞く人が職場にいる場合、唯唯諾諾という言葉が耳に入ってくることもあるでしょう。ネガティブな表現として使われるため、自分で用いる際はしっかりと意味を理解しておくことが重要です。唯唯諾諾の読み方・意味・例文を紹介します。
唯唯諾諾の読み方と意味
唯唯諾諾は、どのように読めばよいのか迷いがちな四字熟語です。まずは、正しい読み方と言葉の意味を理解しておきましょう。
読み方は「いいだくだく」
『唯唯諾諾』は『いいだくだく』と読みます。『唯々諾々』と書く場合も、読み方は同じです。
唯唯諾諾の『諾』は、『承諾(しょうだく)』や『快諾(かいだく)』の熟語にも使われているため、読み方に悩むことはないでしょう。
唯唯諾諾の読み方で問題になりやすいのが『唯』の読みです。『唯(ゆい)』や『唯(ただ)』という読み方が世間では強く認識されているため、唯唯諾諾の前半を『ゆいゆい』や『ただただ』と読んでしまう人も多いでしょう。
人の言いなりになる様子を表す
唯唯諾諾とは、逆らうことなく何でも人の言いなりになる様子を指す言葉です。人から何を言われても、文句を返さずに従う様子を意味します。
唯唯諾諾で使われている唯は、相手に賛成する言葉『はい』の意味を持つ漢字です。諾という漢字にも、『返答する』『引き受ける』の意味があります。
唯と諾を重ねて使うことで、『はいはい、分かりました』と完全に相手の言いなりになっている様子がより強調されています。
唯唯諾諾は、自分が誰かの言いなりになっているケースや、自分以外の人が誰かに従っている場合にも使うことが可能です。
唯唯諾諾の由来や使い方
言葉の由来を知れば、意味をより理解しやすくなるでしょう。唯唯諾諾の由来を解説し、具体的な使い方が分かる例文も紹介します。
韓非子(かんぴし)の一節が出典とされる
唯唯諾諾は『韓非子』を由来として生まれた言葉だとされています。韓非子とは、中国の春秋・戦国時代に活躍した思想家『韓非』が書いた思想書です。
韓非は韓非子の中で、家来が主君に対して働く8つの悪事を指摘しています。そのうちの一つが、『主君が実際に命じる前に分かったような態度で働こうとする態度』です。
このような家来の態度を、韓非子では『未だ命ぜずして唯唯、未だ使わずして諾諾』と書いています。唯唯と諾諾が登場する一節を出典とし、唯唯諾諾が誕生したといわれています。
否定的な意味で使われる
唯唯諾諾は何でも相手の言うことに従う様子を意味するため、否定的な意味で使われます。物事に対する判断を行わず安易に応答する人に対し、非難する気持ちを込めて用いられる言葉です。
ビジネスシーンなら、先輩や上司の意見に逆らうことなく常にイエスマンであり続ける人が、『唯唯諾諾としている人』といえます。争ったり怒られたりするのを嫌うタイプです。
自分の態度を反省する際にも唯唯諾諾を使えます。反論したい気持ちがあるのにもかかわらず、相手に自分の考えを伝えられない場面では、唯唯諾諾と従う自分に嫌気が差すこともあるでしょう。
唯唯諾諾を使った例文
唯唯諾諾はどのような形で使うのでしょうか。正しい使い方を覚えるために、以下の例文をチェックしておきましょう。
- 先日新しく私が配属された部署では、全員が上司の言うことをいつも唯唯諾諾と聞いている。みんな仕事は頑張っているのだが、果たしてこれが健全な状況といえるのだろうか
- 彼は学習塾に通っているだけでなく、親の指示で英会話と水泳も習っているそうだ。唯唯諾諾としている状態がいつまでも続けば、そのうち体を壊してしまうかもしれない
- 今日こそは上司に自分の意見を伝えようと思っても、会社ではいつも上司に逆らえない。唯唯諾諾と従ってしまう自分が嫌になる
唯唯諾諾の類義語・対義語をチェック
唯唯諾諾には数多くの類義語や対義語があります。それぞれの代表的な言葉をチェックしておきましょう。
類義語は「付和雷同」「おもねる」など
唯唯諾諾と似た意味の言葉としては、『付和雷同(ふわらいどう)』や『おもねる』が挙げられます。付和雷同は安易に賛同すること、おもねるは相手に気に入られようとすることです。
付和雷同の『付和』とは、自分で考えることなく相手の意見に同調することを意味します。雷が鳴ると全ての物が共鳴する様子を表す『雷同』も、わけもなく賛同するという意味です。付和雷同は同じ意味の熟語を並べた構成となっています。
おもねるは、単に相手に従うだけでなく、機嫌をとったり評価されるように行動したりする意味を含んでいる点が特徴です。『権力におもねる』『時流におもねる』のように、人以外にも使えます。
対義語は「是々非々」「不承不承」など
唯唯諾諾の対義語には『是々非々(ぜぜひひ)』があります。相手との関係や雰囲気にかかわらず、公平な立場で物事をきちんと判断することです。
是々非々の『是』は『良いこと・正しいこと』、『非』は『悪いこと・間違っていること』を意味します。政治やビジネスでよく使われる言葉です。
是々非々の類義語としては、『公平無私』『大公無私』『公明正大』『厳正中立』などが挙げられます。
また、気が進まないまましぶしぶ承知するという意味の『不承不承(ふしょうぶしょう)』も、唯唯諾諾とは反対の意味を持つ言葉といえるでしょう。ただし、是々非々とはかなりニュアンスが違う点に注意が必要です。
構成/編集部