政治関連のニュースを見ていると、紳士協定という言葉を聞くことがあるでしょう。具体的な意味や使い方を理解しておけば、ビジネスやプライベートでも用いることが可能です。紳士協定の意味や具体例、言い換え表現について解説します。
紳士協定の意味
紳士協定はさまざまなシーンで使われている言葉です。意味や具体例、紳士協定を用いた例文を紹介します。
団体や個人間の非公式な決まり・協定
紳士協定とは、個人や団体の間で交わされた非公式な決まりや協定のことです。お互いの信頼関係のみをベースに成り立っている約束事を意味します。
個人や団体間で重要な決まりを作る場合は、公式な手続きを踏むのが一般的です。決まりに法的な効力を持たせるケースもあります。
一方、紳士協定では公式な手続きを踏まず、法的拘束力もありません。基本的には口約束のみで結ばれます。当事者間の関係が悪化すれば、簡単に破られてしまうこともあります。
紳士協定の具体例
かつて、新卒採用を行う企業と学校の間では、就職協定と呼ばれる紳士協定が結ばれていました。学生向けの説明会や採用内定などの時期を決め、企業の青田買いの防止を申し合わせていたのです。
しかし、就職協定を結んでも青田買いを行う企業は減らず、就職協定は廃止されました。その後もいくつかの就活ルールが作られ、現在は政府主導でルール作りが進められています。
同じ業界内の企業同士でも、人材を引き抜かないように紳士協定を結ぶことがあります。人材の移動により良好なビジネス関係が崩れるのを防ぐためです。
紳士協定を用いた例文を紹介
紳士協定はさまざまな場面で使用できる言葉です。正しい使い方を理解するために、以下の例文をチェックしておきましょう。
- スカウティングルールにおける日米の紳士協定を破ってメジャー球団と契約した彼は、日本の野球界から永久追放されるかもしれない
- 好きな人が親友と同じであることが発覚した。学校内で仲良く2人でいる場面は見たくないため、卒業まではお互いに告白しないという紳士協定を結ぼうと思っている
- 国家間では非公式な紳士協定が数多く結ばれているといわれている。仲が悪そうな国同士でも、裏では我々には知る由もないルールが決められているのだろう
紳士協定を破るとどうなる?
紳士協定は当事者間の信頼関係のみで成り立っているルールです。紳士協定を破った場合はどうなるのかを解説します。
法的拘束力がないため破っても罰則はない
当事者間の信頼関係のみで結ばれている紳士協定には、法的拘束力がありません。定められたルールを破ったとしても、罰則は科されない協定です。
ビジネスの重要な取引においては、紳士協定ではなく契約書を締結する必要があります。紳士協定を結んでしまうと、一方的なルール破りで片方に大きな損失が発生しかねないためです。
ただし、紳士協定に罰則がないからといって、ルールを破っても全く不利益を被らないとは限りません。他の当事者や世間から批判を受け、イメージを悪くしてしまう恐れもあります。
口約束でも契約が成立する場合も
紳士協定で定められた約束を破っても罰則はありません。しかし、約束自体は法律上有効なものとして扱われる場合があります。
当事者間の合意に基づく契約である場合、その契約が口約束であったとしても、日本の民法上は一部を除き有効です。当事者の意思表示の合致のみで成立する契約を『諾成契約』といいます。
民法上で諾成契約として扱われる契約を結んだ場合、ルールを破ってしまうと損害賠償を請求されることにもなりかねません。紳士協定には、違反発生時に法的トラブルへと発展するリスクもあるのです。
紳士協定の類語表現
紳士協定と似た意味の言葉としては、『暗黙の了解』や『不文律』が挙げられます。類語表現を覚えておけば、状況に合わせて使い分けられるでしょう。それぞれの意味や例文を紹介します。
暗黙の了解
紳士協定の類語表現には『暗黙の了解』があります。暗黙の了解とは、黙っていても当事者間で理解されている状況のことです。
大人として意識すべき常識やマナーも、暗黙の了解の一つといえるでしょう。以下に暗黙の了解を使った例文を紹介します。
- 入社したばかりの君は知らないだろうが、定時になっても1時間は仕事をして帰るのが暗黙の了解だ。この会社にはいくつかの暗黙の了解があるから、徐々に覚えていけばいい
- 上京して一番驚いたのが、エスカレーターで急ぐ人のために、みんなが右側を空けて乗っていることだ。どうやら関東では暗黙の了解らしい
不文律
『不文律(ふぶんりつ)』とは、明文化されていないルールを指す言葉です。暗黙の了解とほとんど同じ意味の表現として使えます。
組織で長年引き継がれている慣習を意味する言葉としてよく使われます。文章では以下のように用いることが可能です。
- 今の社長は、長年にわたる会社の悪しき不文律を一掃してくれた偉大な人物らしい。ベテラン社員に話を聞くと、今では考えられないような昔のルールを話してくれる
- この業界にはさまざまな不文律が存在している。大きな変化を起こそうとしても、不文律が壁となって立ちはだかるため、結果的に改革が進まないのだ
構成/編集部