「家事シェア」や「家事メン」という言葉は定着しているが、まだまだ夫婦間で家事に関する意識のギャップはあるようだ。普段、「ゴミ出し」や「買い物」はきちんと担っていると主張する夫は多いだろう。しかし、妻はもっと別の家事をやってほしいと思っているようだ。
そのアンケート調査結果をもとに、家事シェアの専門家、NPO法人tadaima!の三木智有氏に意見と共に、夫が率先してやりたい家事や夫婦間の意識のギャップを埋める方法を聞いた。
妻が夫にもっと取り組んでもらいたいギャップの大きい家事は「名もなき家事全般」
ビースタイル ホールディングスのしゅふJOB総研が、2021年11月に既婚女性499名に対して行った「夫の家事育児2021」調査結果では、「2021年を振り返って、夫は家事・育児に十分取り組んでいたと思いますか?」の問いに対して、「不満なし」が49.7%、「不満あり」が50.3%と大きく2つに分かれた。
そして子どもがいる・いないに関わらず、「夫が積極的に取り組んでいたと思う家事・育児」トップ3は「ゴミ出し」「買い物」「掃除や片付け」の順となった。
一方、「夫はもっと積極的に取り組んだほうがいいと思う家事・育児」のトップ3は、「掃除や片付け」「名もなき家事全般」「料理」の順となった。
特に夫が積極的にやっておらず、妻がやったほうがいいというギャップが大きいのが「名もなき家事全般」だった。
なぜ妻は掃除・片付け・名もなき家事を夫にやってほしいと思っているのか
この調査結果からは、夫と妻の間では家事・育児に関して少なからず意識のギャップがあることが分かる。夫としては、「家事やってるのに…」と主張するかもしれない。けれど、妻はもっと掃除・片付け・名もなき家事・料理などをやってほしいと思っているのだ。
この結果について、三木氏に意見を聞いた。
【取材協力】
三木智有氏
NPO法人tadaima!代表・家事シェア研究家・インテリアコーディネーター
リフォーム会社でインテリアプランニング、施工管理、営業販売などの業務を経て独立。フリーのコーディネーターとしてマンションオプションの販売、内装工事、個人宅のコーディネートなどを行う。2011年。家は家族にとって何より”自分らしくいられる居場所”であって欲しい。そうした想いから、「10年後も”ただいま!”と帰りたくなる家庭」で溢れた社会の実現を目指し、NPO法人tadaima!を起業。日本唯一の家事シェア研究家として、家事シェアを広める活動を行う。
http://npotadaima.com/
「パートナーに『やって欲しいな』と思う家事とは、自分が負担に感じている家事の裏返しです。つまりこの調査を見たときに『夫は、妻の願う家事とは違う、的外れな家事ばかりしている』と思うのではなく、『家事の中で負担が大きくて大変なのは何か』を把握し合うように理解するのが大切です」
「もし夫婦の間で『シェアしたい家事』と『シェアできている家事』にズレがあるなら、負担が大きくて大変な旨を相談し、軽減する方法を一緒に考えてみましょう。
また、負担が大きい家事はその分だけ相手にも『この大変さを知ってもらいたい』と思うものです。ですので、たとえ苦手であっても、自ら取り組んでみることでパートナーへの労いの気持ちを再確認し、伝えることも良いコミュニケーションになります」
夫が進んでやったほうがいい「名もなき家事」とは?
ところで、妻が夫にやってほしい家事の2位に挙がっていた「名もなき家事全般」は、範囲が広い。中でも、夫が進んでやったほうがいい「名もなき家事」は何だろうか? 三木氏は次の5つを挙げる。
・服を脱ぎっぱなしにしない
・使った物は元の場所に戻す
・家族と別に食べた食器は自分で洗う
・飲み終わったカップをそのままにせず、すぐに洗う
・子どもの行事の把握
「基本的には『家族の手間を増やさない気遣い』が大切になります。もちろん夫だけに限らず、家族みんながその気持ちを持つことができれば家の家事全般がグッと楽になります。
もうひとつ、名もなき家事を増やさないために家族で意識しておくといいことがあります。それは『家事は次の人が使うための準備をすること』という意識です。
名もなき家事の多くは『終わらせる』の一歩先、『次の人』を考えると減らすことができます。子どもの行事をはじめ、情報の把握ができていないのは伝える側にとっては大きな手間。シェアする仕組みは大切です」
夫婦間の「家事」ギャップを埋めるには?
アンケート調査結果においても、夫がやる家事と妻がやってほしい家事とではギャップが出ていた。このギャップを埋めるにはどうすればいいか、三木氏は次のように話す。
「家事を主で担っていない人にとって家事は『隙間の時間を使ってやるのが効率的』と思いがちです。ですが、家事を主で担っている人にとって家事をする時間は『捻出するもの』なのです。この家事時間についての認識の違いが、不満感につながってきます。いわゆるワーキングママとパパの大きな違いはこの時間への切迫感の違いです。家事育児が常にスケジュールに入っている中で仕事をするか。仕事が空いた時間でなるべく家事育児をするか。これはまったく違います」
この時間への切迫感のギャップはどうすれば埋めることができるのか。
「『時間は家族の共有資産』であるという意識が大切です。特に子どもが生まれると、残業したり休日に出かけたりするというのは『パートナーの時間を借りる』ということでもあります。共有財産である時間を一方的に使い放題されれば、不愉快になり信頼を失っていくのは当たり前です。
家事育児という時間の支出は、固定費のように、ある程度確定しています。ですから、その時間を夫婦がどう担い合うかというフラットな話し合いができるといいと思います」
もし妻が夫である自分の家事行動に不満を寄せているなら、妻自身が大変な思いをしている可能性を考えること。そして夫婦間で「時間」に関する共通認識を持つことや、シェアの仕組みをしっかりと作ることなどを話し合うことが重要であるようだ。
【出典】
ビースタイル ホールディングス しゅふJOB総研『夫の家事育児2021』
取材・文/石原亜香利