呂律が回らないという表現の意味は分かっていても、呂律が何を指すのか分からない人は多いでしょう。言葉を由来から学べば理解をより深められる上、正しく使うことも可能です。呂律が回らないの呂律の語源や、言い換え表現・対義語を紹介します。
呂律が回らないの意味とは
呂律が回らないとは、どのような状態を指す表現なのでしょうか。言葉の正しい意味を理解しておきましょう。
はっきり言葉をしゃべれない状態
『呂律(ろれつ)が回らない』とは、言葉をはっきりしゃべれないことを指す表現です。口や周辺をうまく動かせなくなり、発する言葉が不明瞭になる状態を意味します。例文で使い方を確認しましょう。
- 1人だけハイペースで飲み続けている彼女は、相当酔っぱらっているようだ。呂律が回らなくなっており、何を話しているのか分からない
- あの有名人が現行犯逮捕されたときは、覚せい剤の影響で呂律が回っていなかったらしい
- けいれんの症状が見られたり、呂律が回らず受け答えがおかしかったりする場合は、熱中症を疑わなければならない。できるだけ早く救急車を呼ぶ必要がある
呂律は言葉の調子のこと
呂律が回らないの呂律は、知っていなければ読めない難読漢字です。『ろりつ』や『りょれつ』ではないことに注意しましょう。
呂律とは『言葉の調子』を意味する言葉です。何かものを言うときの高低やスピードの具合を指します。
音の具合を『律』で表現する言葉には、『調律』があります。調律とは、楽器の音の高さや音色を整えることです。言葉の調子を呂律と言うのに対し、楽器の音の調子は音律と言います。
呂律の由来は仏教音楽から
呂律は仏教音楽が由来と考えられている言葉です。お経に旋律や抑揚をつけて唱えることを『声明(しょうみょう)』と言い、声明には呂・律・中曲と呼ばれる音階があります。
このうち、呂と律を組み合わせた『呂律(りょりつ)』という言葉が、声明の調子や旋律を意味する言葉として使われるようになりました。呂律の読み方は、声明の『りょりつ』が変化したものとされています。
盆踊り・音頭・民謡・演歌など、日本の音楽は声明に大きな影響を受けています。なお、大原三千院の近くを流れる『呂川』と『律川』も、声明にちなんで名づけられたものです。
呂律が回らなくなる理由は?
呂律が回らなくなる原因について解説します。緊張や酔いから引き起こされるだけでなく、何らかの病気が原因になっていることもあります。
口や周辺の動きが悪くなるため
呂律が回らなくなる原因は、口や周辺の動きが悪くなることにあります。口そのものだけでなく、舌や顔がうまく動かなくなることでも、はっきりとした言葉をしゃべれなくなるのです。
日常生活の中で呂律が回らなくなりやすいのは、緊張しているときや急いでいるとき、お酒を飲んで酔っているときです。一時的に脳や筋肉が正常に機能しなくなることで、口や周辺もうまく動かなくなってしまいます。
緊張したり急いだりして上手にしゃべれなくなった場合は、意識的にゆっくり話すことが重要です。それでも話が伝わらないなら、ジェスチャーや文字を使ってコミュニケーションをとる方法もあります。
さまざまな病気による症状
呂律が回っていない人は、何らかの病気にかかっている可能性もあります。病気が原因で脳や筋肉の動きが悪くなり、言葉をはっきりとしゃべれなくなるのです。
呂律が回らなくなる代表的な病気には、適切な発音ができなくなる『構音障害』が挙げられます。構音障害を引き起こす原因は人によりさまざまです。
他にも、舌がん・脳梗塞・脳卒中・一過性脳虚血発作・ALSなどの病気により、呂律が回らなくなることがあります。急に呂律が回らなくなった人が身近にいる場合は、すぐに病院へ連れていきましょう。
言い換えや反対語をチェック
呂律が回らないの言い換え表現や反対語を覚えておきましょう。関連語を知ることで、言葉への理解がより深まります。
類語は「舌がもつれる」
呂律が回らないの類語としては、『舌がもつれる』が挙げられます。うまく言葉が出ずにすらすらとしゃべれない状態を意味する慣用句です。
『もつれる』には『思うように動かない』という意味があります。舌だけでなく、足がうまく動かないときにも、『足がもつれる』と表現することが可能です。
舌がもつれるは単独で使える他、『舌がもつれてうまくしゃべれない』のように、『しゃべれない・話せない』とセットになることも多い言葉です。
反対語は「舌が回る」「滑舌が良い」
呂律が回らないの反対語の一つに『舌が回る』があります。『よどみなくしゃべる』や『しっかりした発音でしゃべる』の意味を持つ言葉です。
舌が回るには、『巧みにものを言う』という意味もあります。この場合は、言葉をはっきりとしゃべれるという意味より、『話の内容をよい方向に持っていける』や『説明がうまい』などの意味合いが強くなります。
『滑舌(かつぜつ)が良い』も呂律が回らないの反対語です。言葉を明瞭に聞き分けられる人や、軽快なテンポで発音する人に使えます。アナウンサーは滑舌が良い人の代表例といえるでしょう。
構成/編集部