【連載】もしもAIがいてくれたら
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第1回:私、元いじめられっ子の大学副学長です
第34回:大雪になるとパニックになる都市・東京、雪の質感を判別できるAIがあれば路面凍結による事故も減る?
あなたの心を満たすには「愛玩用ロボット」という選択肢があるかもしれない
新型コロナウイルスの感染拡大により在宅時間が増えたことで、癒しを求めてペットを飼う人が増加しているとのことです。その一方で、コロナ禍による経済的困窮や、家中におしっこをするし思ったより世話が大変、といった理由で手放す人も増加しているとのことです。しかし、その後のペットの運命を考えると、手放すなんてだめです。
我が家にも、もうすぐ4歳になる愛犬がいますが、1歳ごろまでは賃貸マンションにおしっこしまくりでした。ペット可物件を探すのは大変ですし、ペットがいると敷金は上乗せになるし、動物病院に連れて行くと人間の病院以上にお金がかかるし、大変です。こういった大変さは、ペットを売りたいペットショップ側からは、購入時に詳細には説明していただけません。子犬の可愛さに、衝動的に買ってしまう、という人が多いのではないでしょうか。
生き物のペットを寿命まで飼う決意がないなら、愛玩用ロボットを選択した方がいいのではないかと思います。しかし、現状の愛玩用ロボットは、ペットショップに来ている人のニーズを満たすのは難しく、「生き物のカテゴリ」というより、「玩具カテゴリ」に近いかもしれません。
愛玩用ロボットも、人を認識する能力(AIによるもの)、見た目の可愛さや、生き物に近い手触り、など、いろいろな面で生き物のペットに近づこうと努力してきています。
気になるのは価格面かもしれませんが、愛玩用ロボットとして人気のLOVOTの価格は、本体価格34万9800円、サブスクプランだと月額9887円〜で、玩具にしては高いというところかとは思います。しかし、ペットショップで売られている犬の値段と維持費も、ほぼそのような感じかと思われます。月額はロボットの方が高いですが、途中で飼えずに放棄してしまう可能性があるなら、愛玩用ロボットを選択肢として考えてもよいのかもしれません。
AIやロボット技術が進み、10分程度触れ合うだけなら、ロボット犬なのか本当の犬なのかわからないレベルになり、愛玩用ロボットが、玩具ではなく生き物のペットと同等のカテゴリとして売られるようになったら、未来のペットショップで導入してもらいたいアンケートがあります
以下の項目に、「はい」か「いいえ」で答えてください。
1.毎朝毎晩ご飯をあげられますか
2.お散歩に行けますか
3.ペットと過ごす時間を確保する努力はできますか
4.おトイレのしつけを根気強くできますか
5.病気やけがをしたとき治療に努められますか
6.必要な予防接種をするなど保健衛生に努められますか
7.家族の一員としてペットを生涯愛せますか
これらのうち、「はい」と答えられない項目が2つ以上ある人で、どうしても癒しがほしい人は、愛玩用ロボットとの生活を選んだ方がよいかもしれません。1から6まで項目は、他人に依頼する、という可能性はあるのかもしれません。しかし、7つめの項目を満たせないなら、生き物のペットを飼う資格はないため、いつでも返品できるサブスク型の愛玩用ロボットの購入を勧める、ということになるでしょう。
ただし、3と5は満たせないと、愛玩用ロボットも思うような反応をしなくなる可能性があります。一緒に過ごしてコミュニケーションをとらないとロボットが期待する反応をしなくなりますし(ロボットに搭載されている機能によりますが)、故障したときは修理を依頼しないと壊れたままです。
坂本真樹(さかもと・まき)/国立大学法人電気通信大学副学長、同大学情報理工学研究科/人工知能先端研究センター教授。人工知能学会元理事。感性AI株式会社COO。NHKラジオ第一放送『子ども科学電話相談』のAI・ロボット担当として、人工知能などの最新研究とビジネス動向について解説している。オノマトペや五感や感性・感情といった人の言語・心理などについての文系的な現象を、理工系的観点から分析し、人工知能に搭載することが得意。著書に「坂本真樹先生が教える人工知能がほぼほぼわかる本」(オーム社)など。