近年、話題の「聞く力」。ビジネスパーソンの間で、ぜひ身につけたいと考える人は多いのではないだろうか。その「聞く力」について、改めて、どのようなスキルなのか、また、どうすれば身につけられるのかを確認しておこう。「聞く力」を得意とするコミュニケーションの講師に話を聞いた。
近年注目を集める「聞く力」
「聞く力」とは、コミュニケーションスキルでも重要といわれているスキルだ。
「聞く力」に関連する著書も近年、話題になっている。特に『LISTEN――知性豊かで創造力がある人になれる』(日経BP刊)は有名だ。ニューヨーク・タイムズなどを手がけるジャーナリスト ケイト・マーフィ氏による書籍で、優れた聞き手になる方法が述べられている。「本当に優秀な人は聞く能力が異様に高い」という。
また、株式会社人財育成JAPAN代表取締役の永松茂久氏による大ベストセラー『人は話し方が9割』の続編『人は聞き方が9割』も2021年12月に発売され話題になっている。
今、特に社会で活躍するビジネスパーソンにとって「聞く力」を持つことは必須スキルといえるのかもしれない。
本来、「聞く力」とは?
そんな「聞く力」だが、本当の意味を理解しているだろうか。もちろん、人によって様々な解釈があるが、ここで今一度、自分なりの定義を確認してみてはいかがだろうか。
伝わる話し方がマスターできるコミュニケーションセミナーを全国で開催するモチベーション&コミュニケーションスクールの講師の一人であり、「聞く力」についてのセミナーも行う平山幸聖氏に、「聞く力」とはどんな力なのかを聞いた。
【取材協力】
平山 幸聖(ひらやま・こうせい)氏
全国展開するスクールの事業部長として、論理的な話し方、傾聴、人前での緊張改善などセミナー、企業研修を多数実施。近著に『鉄オタでコミュ障でも話し方の講師になれた 誰でもできる会話術』。
https://www.motivation-communication.com/d_listen/0524-3/
「一般的には『聞く=相手の言うことを聞く、主張に従う』という受け身の側面で理解されているように感じます。私たちは、子どものころから『親や先生の言うことを(最後まで)よく聞きなさい』と言われ、刷り込まれてきました。これはこれで大事です。
ただ、コミュニケーションは相手との会話のキャッチボールです。この前提に立つと、本来の『聞く力』は、相手の話の意図を探りつつ、最後まで注意深く聴く『傾聴力』、相手に適切な質問を投げかけて会話を円滑に進める『質問力』の合わせ技だと私は思います。
『傾聴』一辺倒で、いくら『相手のことを察しましょう』と言われても、妄想に終わってしまいかねません。相手の話を意図を知りたければ、『質問』することも必要です」
聞く力は、「傾聴力+質問力」の合わせ技。自分の中の聞く力を固めるヒントになりそうだ。
「聞く力」を持っているビジネスパーソンのメリット
ところで、聞く力を持っている人は、ビジネスシーンにおいてどうメリットが得られるだろうか。ビジネスにおいては他者も重要。自分のメリットと他人のメリットそれぞれを平山氏に聞いた。
1.自分のメリット
(1)他人に好かれる(2)営業成績がアップする(3)情報が集まってくる
「これまでは、プレゼンや発表など『話す力』についてのウエイトが高く、『聞く力』についてはそこまで重要視されてきませんでした。コミュニケーションは、『話す』と『聞く』の両輪です。例えば、タモリさんや所ジョージさんなどが今でも第一線で活躍している理由のひとつは、『聞く力』を持っており、それが希少価値の高い証だからではないかと思います。つまり、“ひとかどの人物”、優れた人物になれるということです」
2.他人のメリット
(1)問題解決が図れ、仕事が前に進む (2)話を聴いてもらえることで気持ちや思考の整理がつく (3)自己肯定感がアップする。
「話を聞いてもらえる側としては、自分の問題解決に結びつきやすくなり、仕事が前に進みやすくなるでしょう。さらに、自分の話をしっかりと聴いてもらえることで、自分の気持ちや思考の整理がつきやすくなり、自己肯定感が上がると考えられます」
「聞く力」を養うポイント3つ
メリットが大きいことを知ると、ますます身につけたくなる「聞く力」。効率的に養うにはどんなことを意識すればいいだろうか。そのポイントは3つあると平山氏は言う。
1.「2つのWを押さえる」
「2つのWとは、Who(=誰が)、Wants(=何をしてほしいのか)です。この2つのWを押さえることで、相手の意図をつかみやすくなります。あなたが人の話を聞いているときに、『誰が何をしてほしいのか』をしっかりと意識しましょう」
2.「共感」
「人間は感情を持った生き物です。気持ちや繰り返し強調するワードが話中に出てきたら、それを拾ってなぞってあげましょう。例えば、相手が『つらいんです』とたびたび言っていたら『つらいんですね』『お気持ちお察しします』など共感を持って言葉を返しましょう」
3.「掘り下げ」
「相手の話を深く知りたい、聞きたいときもあるでしょう。そのようなときは『よろしければ、もう少し詳しくお伺いしてもよろしいでしょうか?』と言うのが有効です。
また、理由を聞きたいときに『なぜ?』と言う言葉は要注意です。相手によっては詰問されたと感じるので、『なぜ?』ではなく『◯◯と思われた背景(目的)について教えていただけますか』として、相手に先生になっていただくこと。これによって、相手は格段に、答えやすくなります」
「聞く力」と一口に言っても、奥が深い。誰もが意識しているコミュニケーションスキルだからこそ、ぜひ自分なりに知識や技術を深め、高めていこう。
取材・文/石原亜香利