歓楽街を中心に存在する性風俗店は、しばしば違法営業によって警察に摘発されています。
もし違法な性風俗店を利用した場合、利用客の側も何らかの罪に問われるのでしょうか?
また、違法な性風俗店を利用が会社に発覚した場合、何らかの処分を受けてしまうのでしょうか?
今回は、性風俗店に対する風営法の規制や、違法な性風俗店の利用客が負うリスクなどについてまとめました。
1. 性風俗店は「性風俗関連特殊営業」の許可取得が必要
利用客に性的サービスを提供し、その対価として料金を徴収する「性風俗店」は、「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」(風営法、風適法)によって規制されています。
性風俗店を営業するためには、提供する性的サービスの内容に応じて、都道府県公安委員会から「性風俗関連特殊営業」の許可を受けなければなりません(風営法3条1項)。
風営法上認められている性風俗関連特殊営業には、以下の5種類があります。
①店舗型性風俗特殊営業
ソープランド、店舗型ヘルス、ストリップ劇場など
②無店舗型性風俗特殊営業
デリバリーヘルスなど
③映像送信型性風俗特殊営業
アダルト動画の配信など
④店舗型電話異性紹介営業
店舗型テレクラなど
⑤無店舗型電話異性紹介営業
無店舗型テレクラなど
2. 違法な性風俗店の主なパターン
性風俗店の中にも、違法営業を行っている店舗が一部存在します。
性風俗店による違法営業の主なパターンは、以下のとおりです。
2-1. 適切な性風俗関連特殊営業の許可を受けていない
周辺に学校や図書館が存在する場合など、地域的に性風俗関連特殊営業の許可を得られないケースがあります。
このような場合には、無許可で性風俗店を開業する例があるようです。
当然ながら、無許可での性風俗店営業は、風営法違反となります。
(例)飲食店と称して営業しつつ、実際には、店舗内で性的サービスを提供している場合
また前述のとおり、性風俗関連特殊営業には複数のパターンがあるところ、実際の営業形態に即した種類の許可を取得していない場合も、風営法違反の無許可営業です。
(例)無店舗型性風俗特殊営業の許可に基づいて営業しつつ、実際には店舗型ヘルスのサービスを提供している場合
2-3. 18歳未満のスタッフに接客させている
性風俗店は、18歳未満の者に客の接待をさせることを禁止されています。
したがって、性風俗店が18歳未満の接客スタッフを勤務させている場合、風営法違反となります。
2-4. 店舗が売春の周旋・管理売春等を行っている
接客スタッフが利用客と性交渉を行い、その対価として利用客から金銭を受け取る行為を「売春」と言います。
性風俗店が、接客スタッフによる「売春」に関して以下の行為をしている場合、売春防止法違反の違法営業となります。
・売春の勧誘(公の場で売春を勧誘すること)
・売春の周旋(売春を仲介、あっせんすること)
・売春をさせる契約(接客スタッフとの間で、売春対価の取り分などを決めること)
・場所の提供(売春が行われることを知って、その場所を提供すること)
・管理売春(接客スタッフを指定の場所に住ませて売春させること)
など
3. 違法な性風俗店の利用は犯罪?会社に発覚したらどうなる?
違法な性風俗店は、警察の準備が整った段階で摘発される可能性が高いです。
一方、違法な性風俗店の利用客には、基本的に犯罪が成立することはありません。
ただし、利用の事実が会社に発覚した場合は、懲戒処分等の不利益を受ける可能性があるので注意が必要です。
3-1. 違法営業は店舗側の問題|客が罪に問われることはない
店舗側に風営法または売春防止法の違反行為があったとしても、それはあくまでも店舗の営業に関する問題です。
利用客は、店舗と共同して違法営業を行っているわけではないため、違法営業について犯罪に問われることはありません。
3-2. 買春は「違法」だが「犯罪」ではない
性風俗店において性交渉(いわゆる「本番行為」)をした場合、利用客は「売春の相手方」に当たる可能性があります。
売春の相手方となる行為(いわゆる「買春」)は、売春防止法3条によって違法・禁止とされています。
その一方で、買春について罰則規定は設けられていません。
したがって、性風俗店において買春をすることは違法であるものの、犯罪ではないという整理になります。
3-3. 会社に発覚したら懲戒処分の可能性も
違法な性風俗店の利用は、会社の就業規則における禁止行為に該当する場合があります。
「違法な性風俗店の利用を禁止する」
などと明文で禁止されていなくても、
「会社の品位を害する行為を禁止する」
などと、違法な性風俗店の利用を含め、会社の従業員としてふさわしくない行為を幅広く禁止していると解釈すべき例もあるので要注意です。
就業規則に違反した場合、会社から懲戒処分を受けるおそれがあります。
メディアで大々的に報道されて、会社の評判を著しく毀損したなどの特殊なケースを除けば、戒告やけん責などの軽い懲戒処分で済む可能性が高いです。
しかし、会社内での立場が悪化することも懸念されますので、違法な性風俗店の利用は避けることをお勧めいたします。
取材・文/阿部由羅(弁護士)
ゆら総合法律事務所・代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。ベンチャー企業のサポート・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。東京大学法学部卒業・東京大学法科大学院修了。趣味はオセロ(全国大会優勝経験あり)、囲碁、将棋。
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