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サンダンス映画祭で4冠達成!耳が聞こえない両親に育てられた少女の成長を描いた作品「コーダ あいのうた」

2022.01.16

■連載/Londonトレンド通信

 1月21日公開『コーダ あいのうた』は、お披露目されたサンダンス映画祭で、約26億円というサンダンス史上最高額で落札された。観れば、なるほど売れそうな要素に満ちている。

 タイトルとなったコーダとは、CODA=Children of Deaf Adults(耳の聴こえない大人に育てられた子ども)を指す。主人公はルビー(エミリア・ジョーンズ)、一家総出の漁業で生計を立てるロッシ家で、聴こえない父(トロイ・コッツァー)、母(マーリー・マトリン)、兄(ダニエル・デュラント)の中、1人だけ聴こえる少女だ。家族と他者との通訳の役割を担っている。

 ハンデのある家族に囲まれた健気な少女か、さてはお涙頂戴、感動の押し売り?と思ってしまいそうだが、意外にも軽やか、ゴキゲンな音楽と笑いで運ばれていく。

 聴こえない家族は、『愛は静けさの中で』(1986)でアカデミー賞を獲得しているマトリンはじめ、実際に聴こえない俳優が演じている。

 リアルなのは家族だけではない。冒頭、漁の臨場感に引き込まれる。磯の香りが漂ってきそうな船は実際の漁船で、ロープの使い方をリハーサルで叩き込まれた俳優たちがトロール漁を忠実に再現している。シアン・ヘダー監督のこだわりは成功、この出だしで惹きつけておいて、後はテンポ良い展開で最後まで放さない。

 早朝の漁を終えると、学校に急ぐルビー、そこからは学園ドラマになっていく。学校では「魚臭い」と言われたりするルビーだが、密かに思いを寄せる男子マイルズ(フェルディア・ウォルシュ=ピーロ)がいる。

 ルビーはマイルズと同じ合唱クラブに入る。そして、2人で歌うパートに抜擢されたルビーとマイルズ、マイルズがルビーの家を訪れ、一緒に練習するようになる。

 それを勘違いした父が、マイルズに性の教えを施す、ルビーにとっては赤っ恥場面が痛快だ。この時の父の手話は、通訳なしで済むくらいわかりやすい。

 ジョニ・ミッチェル「青春の光と影」、マーヴィン・ゲイ&タミー・テレル「You’re All I Need To Get By」といった名曲を、ルビーは伸びやかに力強く歌いあげる。ルビーの心情とも重なり、まさにルビーの歌として聴かせる。

 素晴らしい歌声を披露した、現在、19歳のエミリア・ジョーンズは、イギリスの歌手・ラジオ/テレビプレゼンターのアレッド・ジョーンズの娘で、映画のほか英テレビドラマやウェスト・エンドの舞台などで子役から活躍してきた。

 ルビーの歌声パートばかりでなく、バックで使われる曲も良い。ザ・クラッシュ「I Fough the Law」など、ストーリーともシンクロして印象的だ。

 クラブ活動も順調、マイルズとの距離も縮んでいき、言うことなしに思えるが、ルビーが上手すぎるのが問題になる。クラブの教師に音大への進学を勧められるも、ルビーの才能がわからない家族は、難しい局面に差し掛かっている家業を手伝うことを望む。

 この家族、聴こえはしないが、家族間のコミュニケーションはたっぷり、丁々発止、手話でやりあったりもする。機能不全に陥っている家庭が問題になる昨今、とても健やかに機能している家庭とも言える。それが明るさにつながり、フィール・グッド・ムービーになっている。

 家族ドラマをベースに、大ヒットした米テレビドラマ『glee』のような学園音楽ドラマ要素、甘酸っぱい恋と将来への夢を描く青春ドラマの要素もあり、飽きさせない。サンダンス映画祭ではドラマ部門グランプリなど4冠を達成した。

 Coda(コーダ)は、曲の締めくくりのための独立した部分を指す音楽用語でもある。この映画は、ルビーが子ども時代を締めくくり、大人になっていくカミング・オブ・エイジ・ドラマとして観ることもできる。ダブル・ミーニングがピタリとはまったタイトルだ。

© 2020 VENDOME PICTURES LLC, PATHE FILMS

文/山口ゆかり
ロンドン在住フリーランスライター。日本語が読める英在住者のための映画情報サイトを運営。http://eigauk.com

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